「お酒を飲んでベロベロになっていいか?」もきいてみた
「坊主バー」のお坊さんにきいた恋愛論が深かった
8月13日から16日までの期間を一般的にお盆という。恋愛に悩む業が深いアラサーの記者であるが、この期間を心清く過ごすために坊主バーに足を運んできた。そもそも坊主バーとはなんであるかを知らなかったが、目から鱗が落ちる話をいくつかきいたので紹介する。
坊主バーとは、仏教の僧侶がスタッフをするバー。都内にもいくつか“坊主バー”がある中で、歴史が長い四谷の坊主バー店主である藤岡善信さんにお話をきくことができた。
寺にお勤めするお坊さんと話せるバー
――四谷「坊主バー」はどんなところですか?
藤岡さん:お酒を提供するバーですが“坊主”がやっています。仏教の僧侶が2、3人カウンターに入って接客をします。1日2度、お仏壇に向かってお経を唱える法要もしています。立ち上げは2000年の8月でした。最近“坊主バー”というものが増えてきましたが、東京でははじめてお店でしょう。
――スタッフさんはみなさんお坊さんなのですね。
藤岡さん:はい、昼はお寺の仕事をして夜はバーで、という人がほとんどです。宗派はみな様々です。
――宗派が違うお坊さんが集まってケンカにはならないのですか?
藤岡さん:お経が違ったり考え方が少し違ったりと異なるところはありますが、教えに向き合う方法が少し違うだけなので、そこで仲が悪いということはないですよ。
――お坊さんがお酒を提供するのは、仏教としては問題ないのですか?
藤岡さん:問題ありません。日本の仏教はお酒に対して寛容です。他にもよく「結婚してはだめ?」ときかれることがありますが、結婚もできます。仏教でも様々な宗派や考え方がある中で、日本の仏教は大乗仏教です。煩悩を肯定し、日常生活の中で仏になっていく道を説くというもの。ですので、閉じこもった特殊な場所にいるわけではない。仏教のことをあまり知らなくて難しいと思っている方は多いので、敷居を低くしてもっとを知ってもらいたい、というのが坊主バーの立上げからの目的です。
――お酒を飲んでベロベロになっても仏教としてはありですか?
藤岡さん:お酒は薬にもなるし毒にもなる。良くなる飲み方をするべきですね。
――大変失礼なのですが、お酒を販売していることで「金儲け」とか「生臭い(生臭坊主)」とか言われたりしないのですか?
藤岡さん:そういうふうに言う人もいます。何をしても悪いように言う人はいるので仕方がありません。お金を儲けようとしたら、わざわざ飲食店の運営なんてしないですよ。こんなに大変なことを。
「好き」という感情は妄想にすぎない
――お客さんはどういう方が多いですか?
藤岡さん:女性が多いですね。テレビやネットで見たという一見の方も多いですし、その中から常連になってくれる方もいます。
――女性のお客さんから恋愛の相談を受けることもあると思うのですが。
藤岡さん:そうですね。「失恋した、どうしよう」という悩みはやはり多いですが、時が解決していきますから。過去を反省して前を向いていくこと。出会いというものは絶えないですからね。
――相手のことを好きで仕方ないけど振り向いてもらえない、という悩みに対してはどういうアドバイスをしますか?
藤岡さん:“好き”という感情は妄想ですから。そこを徹底的に知った方がいいです。好きの反対は“嫌い”。なにかの拍子に真逆のものになってしまう怖ろしいもの。現代は好きという感情が良いものと刷り込まれていますが、仏教ではそうは言わないです。好きという自分に酔っているだけなので、正しくないものと認識をしながら人を愛さなくてはいけない。
――好きと愛は違うのでしょうか?
藤岡さん:違うでしょう。好きだから愛しているわけではないですよね。
――どうしたら、人を愛せますか?
藤岡さん:自分を知ることです。自分を愛さなくては人のことも愛せない。自分を知るというのは、自分の醜いことも含めて全部。卑下することもなく、ありのままの自分を知る。そのうちに自分というものがないということを知り、自分を支えてくれている人を愛せるようになるのです。
――深いですね。こういう話って日常生活でなかなかしないです。
藤岡さん:そうでしょう。お客さんで、普段はできない話だけど坊主バーだから話せる、という方は多いですね。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります