VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!
どもども!! VRおじさんことPANORAの広田です。今週、海外では、Galaxyシリーズ専用のVRヘッドマウントディスプレー「Gear VR」の新型の黒いモデルが発表されたり、HTC Viveで位置トラッキングシステムの「Lighthonse」がサードパーティーに解放されたりといったニュースが目立っておりました。
国内では、東京ゲームショウの出展者に向けてHTC Viveが無料貸し出しされるプログラムが登場したり、リゾートウェディングの様子が360度で見られるコラボカフェ「リゾ婚 Cafe」が渋谷にオープンしたりといったニュースが出ております。
そんなニュースに触れている筆者的には、月を追うごとにVR業界の盛り上がりを実感していますが、客観的に数字で見た場合にはどうなのでしょうか? 近年の歴史を振り返りつつ、Google検索ユーザーの検索動向がわかるGoogle トレンドを使って語っていきましょう。
日本とワールドワイドで異なるトレンド
まず「VR」というキーワードについて、ワールドワイドで調べてみると、2015年10月あたりから急激に検索ボリュームが増えています。ゲーム開発者向けカンファレンス「GDC 2016」があった今年3月には、昨年10月の約2.5倍、6月のゲームの祭典「E3 2016」では約3倍と、今年に入ってからかなりVRについて関心を持つ人が増えてきた感じです。
さらに調べる範囲を日本に限定してみると、2016年の2月あたりを契機に3月には2倍、6月には4倍とここ数ヵ月で急激に関心が高まっていることがわかります。筆者としても、4、5月あたりから急激に国内でもVR関連のニュースが増えているのを実感していて、このトレンドに同調しているのが納得できます。
もともと昨今のVRムーブメントを作ったのは米国のOculus VRで、そのルーツはもう少し遡ります。2012年にクラウドファンディングサービスの「KickStarter」にて目標の10倍の金額を集めてプロジェクトを成功させ、2013年春頃に実際に初代開発キット(DK1)を300ドルという低価格でリリースして、多くの技術者から支持を集めました。
2014年には、3月のGDCでOculus VRは第2世代の開発キット(DK2)を、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がPlayStation VRのプロトタイプとなる「Project Morpheus」を発表してます。そしてFacebookがOculus VRを買収したり、グーグルがスマートフォン向け簡易VRヘッドマウントディスプレー「Google Cardboard」を発表したりと、大手の参入が相次ぎました。
明けて2015年には、台湾HTCと米国Valveが共同開発した「HTC Vive」が開発キットとして登場し、サムスン電子とOculus VRが共同開発した「Gear VR」も年末に製品版がリリースされたりと着実に地固してきたわけです。日本で「VR」のトレンドグラフをみると、2015年9月に大きな山ができているのは、東京ゲームショウで話題になったからですね。
そして2016年、3月末にOculus Rift、4月頭にHTC Vive、10月にPlayStation VRという、ハイエンド向けVRの「御三家」が登場する年を迎えて、トレンドがぎゅーっと伸びている状況があります。興味深いのは、関連キーワードのところを見ると、ワールドワイドでは「samsung gear」や「oculus」、「cardbord」が上位に来ているのに、日本では「playstation vr」や「vr ps4」などが目立っているという点です。
これを機種別に比べてみると、さらに面白いデータが出てきます。以下はワールドワイドで、Oculus Rift(青)、HTC Vive(赤)、PlayStation VR(黄)、Gear VR(緑)という4製品を比較してみたところです。
前半はOculus Riftの一人勝ち状態です。特にDK2が発表された2014年3月と、製品版のプレオーダーが始まった2016年1月の突出具合が非常に大きい。今年頭までVRヘッドマウントディスプレーといえばOculus Riftのことだったというぐらいにインパクトを残していたことがわかると思います。
そこから直近の数字を見てみると、Oculus Riftが14、HTC Viveが17、PlayStation VRが8、Gear VRが21と、Gear VRが善戦していることがわかります。
Gear VRは、昨年末に先行して製品版をリリースしてから検索ボリュームが増えて、今年2月には、モバイル専門の展示会「MWC 2016」で集まった記者全員にGear VRをかぶらせるパフォーマンスがあったり、Galaxy S7シリーズの購入者に無料で配布するキャンペーンをうったりと努力があったせいか、そのタイミングで大きくグラフを伸ばしております。
もう一つ注目したいのが、HTC Viveでしょう。Oculus Riftのライバルとして以前より存在していたにも関わらず、開発キットが容易に入手できなかったせいか2016年に入ってもほとんど動いていませんでした。それが2月のプレオーダーが始まって急激に関心を高め、4月の出荷を迎えてさらにグラフを伸ばし、ほぼ横ばいをキープしております。CGに触れるハンドコントローラー、空間を歩ける「ルームスケール」といった特徴が評判を呼んでいるせいか、継続して関心を引くことに成功しています。
まだ製品が出ていないPlayStation VRですが、一番の山は2016年3月のGDCで価格が発表されたタイミングで、次いで、ローンチタイトルが明らかになった2016年6月のE3も山ができています。さらにPlayStation VRで面白いのは、同じ4機種を日本国内に限定して調べたときです。
2016年3月と、6月の山が、ワールドワイドのトレンドに比べて圧倒的に高くなっています。直近の数字を見ても、Oculus Riftが9、HTC Viveが11、PlayStation VRが17、Gear VRが14と、PlayStation VRに軍配が上がっています。この理由は、ソニーという圧倒的な知名度や、体験会に非常に力を入れていることなどが挙げられるでしょう。以前にも語ったように、「ファイナルファンタジー」や「バイオハザード」、「鉄拳」、「アイドルマスター」、「初音ミク」といった、国内向けの独占タイトルが多いのも関心を高めるのに後押ししています。
わずか半年でOculus Riftを抜き去ったGaer VRやHTC Viveの例があるように、10月13日にPlayStation VRが発売されてこの勢力図がまた大きく変わるでしょう。まだまだ黎明期のVR業界。引き続き目が離せません。
広田 稔(VRおじさん)
フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。
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