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VRギアHTC Viveでブラック企業に体験入社してみた

2016年08月05日 18時00分更新

【VR特捜最前線 前回までのあらすじ】
 VRを勉強することにした人気美人YouTuber(肩書き)のせきぐちあいみ。
 ちょっとエッチなR博士と担当編集のイトーとともに、思いもよらないVRの可能性に出会うのだった。

イトー「いやー、今日も暑いなあ、いよいよ夏本番だなあ」

あいみ「ほんとですよー」

イトー「あれ、あいみちゃん、どうしたのその格好」

あいみ「え、これですか?」

イトー「YouTuberじゃ厳しくなってきたから就活でもするの?」

あいみ「違いますよー、博士がちゃんとした格好して来いっていうので……」

イトー「ちゃんとした格好?」

あいみ「私、そういうのってこういうスーツしか持ってないんで……」

R博士「おお、揃ったようじゃな」

イトー「あ、博士。また人の会社を勝手に待ち合わせ場所にして……」

あいみ「博士の言いつけ通り、ちゃんとスーツ着てきましたよ」

R博士「おお、まったく関心じゃな」

イトー「ところで今日はなにをやるんですか?」

R博士「うむ。今日はあいみちゃんにちょっと社会人の厳しさを経験してもらおうと思ってのう」

あいみ「えー、社会の厳しさですか?でも私、けっこう社会の厳しさに触れてきた気がするんですけど……」

R博士「まぁ、人気美人YouTuberというか、タレントにもいろいろあるじゃろう。枕営業とかものぅ」

あいみ「しませんよ!」

R博士「気を取り直してと。今日は普段は自宅に引きこもってYouTubeばかりやってるあいみちゃんに傑作VRゲームをプレイしてもらって社会の厳しさを学んでもらおうと思っての。さっそくVR開始じゃよ」

イトー「強引な展開だなぁ」

あいみ「そんなに引きこもってませんけど……」

R博士「今回のゲームはジョブ・シミュレータ。まさしくVRのなかで仕事体験ができるゲームなんじゃよ」

あいみ「わ、すごい。ほんとに会社に居るみたい」

ジョブシミュレーターの「オフィスのお仕事」モードのシーン。VRゴーグルを装着した瞬間、プレーヤーはいかにもアメリカのオフィス風の、絶妙に小汚いオフィスに放り込まれる。

イトー「まあ、実際ここは会社なんだけど……」

R博士「このジョブ・シミュレータは、オフィスでの仕事、コンビニでの仕事、ファーストフード店での仕事などが体験できるVR空間を活かしたアクションパズルゲームなんじゃ」

イトー「ポリゴンはヘボいけど、臨場感はありそうですね」

R博士「左様。実はVRコンテンツはあんまりリアルに作ったものが得意ではないんじゃ」

イトー「へー、なぜですか?」

R博士「理由はふたつある。ひとつは、VRを実現するにはものすごいGPUパワーが必要なこと。なにしろ、今のVRは2つの画面を生成しなければならないし、しかも生成した画面はレンズにあわせて適切に歪めなければならない。従って、VRをやるためには、これまでの4倍くらいの負荷がGPUにかかるといわれてるんじゃ」

イトー「へー、だからグラボ系の会社が躍起になってVRをPRしてるのかぁ。VRデバイスが売れるとNVIDIAが儲かる的な」

あいみ「もうひとつの理由はなんですか?」

R博士「もうひとつの理由は、VRはあまりにも没入感が高い。高いがゆえに、現実との差異がむしろこれまでよりも気になるようになるんじゃ」

イトー「そうか。リアルであるがゆえに細かい差が目につくようになるのか。いわゆる"不気味の谷"というやつですね」

R博士「左様。だから、開発者がリアルに作ろうとするほど、ポリゴン数の制約と不気味の谷の制約の狭間で悩むことになるんじゃよ。この傾向はしばらく続くじゃろうなあ」

イトー「画面で見ていたらもうほとんど実写と変わらないなあと思えても、まだまだ進化の余地はあるということなんですねえ。うーむ」

あいみ「博士ー、パソコンの電源を入れろって言われてるんですが、パソコンってどこにあるんですか?」

R博士「おお、パソコンじゃな。パソコンは机の下じゃよ」

あいみ「えー、どこですかー?」

R博士「だから机の下じゃって、そう、しゃがんで!机の下に潜り込んでじゃな……」

実際にしゃがむと、机の下に古めかしいデスクトップPCが。HTC Viveのモーションコントローラーでボタンに触れてスイッチを入れる。

イトー「ところで博士、もはや愚問かもしれませんが、今回あいみちゃんにスーツを着てもらったのって……」

R博士「ワシの趣味じゃよ……いいじゃろ?スーツも」

イトー「……否定はしません」

あいみ「あ、あった!すごし、ほんとにそこにパソコンがあるみたい!操作もVR空間上のマウスでできるんですね!」

イトー「マウスとかもあるんだ!なんとバカバカしい」

設定されるタスクの中には、PCへのログイン操作が必要なものも。「パスワードを入力せよ」というタスクでも大丈夫。このオフィスではコンプライアンスは二の次だ。パスワードはもちろんCRT(←何年前!?)にポストイットで貼り付けてある。

R博士「このジョブ・シミュレータが凄いのは、ルームスケールVRの特徴をうまく使っているところじゃな」

イトー「……というと?」

R博士「ルームスケールとはいえ、歩き回れる範囲に制約があるわけじゃろ。この制約をいかに自然に感じさせるかというのがいわばゲームの肝なわけじゃ。そこで、このゲームでは、ステージごとに、オフィスならパーティションで囲まれたキュービクル、ファーストフード店なら厨房、コンビニならレジの内側と、うまく違和感なく狭い空間を設定して、その中は自由に歩き回れるようになっているんじゃな。そのことがVR体験にこれまでにない奥行きを与えているんじゃ」

イトー「なるほど。実はかなり考えられているんですね」

R博士「しかも、VR空間内での作業は現実の作業とほとんど同じように行われる。これがまた意外と楽しいんじゃよ。

あいみ「確かに!いままで体験したゲームの中では一番ゲーム性が高いと思います」

パーティションに区切られた自分のワークスペースには、コーヒーメーカーも。操作して、コーヒーを注ぐような単純作業もリアルでなかなか面白い。

イトー「しかしさっきから見てると、次から次へと履歴書に”FIRE(クビ)"ってスタンプしたり、売上を捏造して適当に業績を上げたり、かなりブラックジョーク満載というか、ブラック企業シミュレーターですね、このゲームは」

R博士「あいみちゃん、しゃがんで机の下をみてくれるかな」

あいみ「えー、またですか」

R博士「ゴミ箱の中にドーナツがあるじゃろ、それを取って見るんじゃ」

あいみ「えー、なんかカビ生えてますけど……」

R博士「食べてみて」

イトー「食べれるんですか!?」

あいみ「うげー、吐いてますよ私」

R博士「こういう、一見バカバカしいけど現実には決してやらない行動がとれるところが、このゲームの醍醐味じゃな。ある意味で、オープンワールドゲーム的な楽しみもあるわけじゃ」

イトー「おもいっきりクローズドだけどなんでもありのオープンワールド的ではありますね。なるほど、意外と奥が深いんですね」

あいみ「あー、疲れた。私やっぱり、オフィスワークに向いてないみたい。人気美人YouTuberで頑張ります」

イトー「VRとしてはどうだった? あいみちゃん」

あいみ「見た目はカクカクだけど、実際はすっごい臨場感で、かなり慌てちゃいました」

R博士「ホッホッホ。楽しかったじゃろう」

あいみ「楽しかった!実は今までで一番楽しかったかも」

イトー「へー、そうなんだ」

R博士「左様。VRはリアルならいいってもんじゃないんじゃよ」

あいみ「社会の厳しさはよくわからなかったけど、VRの楽しさはよくわかりました」

イトー「本格的にやり込めるゲームが登場すると、いよいよ自宅に置きたくなりますね」

R博士「そうじゃのー。しかし日本の住宅事情ではこれだけの広さのスペースを確保するのはホネじゃろう」

イトー「まあ確かになー」

R博士「6月に秋葉原で開催され、あまりにも人が殺到したためわずか15分で解散となった"アダルトVRフェスタ”も凄いが、実際にアダルトVRを考えるとすると、Viveを使ったものは、もう一人暮らしの独身男性の家にしか置けないからのう」

あいみ「アダルト……ちょっと、何の話してるんですか、花も恥じらう乙女の前で!」

イトー「あ、あいみちゃん居たんだった」

あいみ「いちおう、この連載私の冠連載なんですけど」

R博士「忘れてた」

あいみ「忘れないで下さいよ。うーん、とはいえ、私も自宅に欲しいとはまではまだ思いませんねえ。面白いのは確かですけど、やっぱりスペースが必要だし」

イトー「そうですよねえ」

R博士「ホッホッホ。それじゃあ次回は、あいみちゃんが毎日でもやりたくなる究極のVRを紹介するぞい」

あいみ「えーーっ!そんなのあるんですか?」

イトー「ちょっと博士ー、出し惜しみはナシですよー」

R博士「ホッホッホ。お楽しみにの」

(続く)

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