ネットワークは五輪に合わせ、さらに高速化
──次に、ネットワークについてはお話ください。今年度500Mbpsまで高速化するというお話ですが、その先のロードマップも改めてお話いただけますか。
吉澤氏:LTE Advancedのすべての周波数を駆使すれば、1Gbpsが出せます。できれば5Gの標準化が終わり、平昌(ピョンチャン)の冬季五輪もある2018年には……256QAMの変調方式や、4×4 MIMOを使い、1Gbpsへの挑戦もできるのではないかと考えています。韓国のキャリアとお話していても、ピョンチャンの冬季五輪はかなり意識していて、プレという形で1Gbpsぐらい出せるものをやりたいとおっしゃっていました。
標準化のちょっと前の段階(のLTE Advanced)で1Gbpsを出せれば、その後につなげやすい。そういうものをつくって、2020年には、2018年に標準化された5Gで、1Gbpsや10Gbpsが出せるようにしたいと考えています。
──場所や利用しているサービスにもよりますが、いまでも光より速いときもありますが、今後はさらにそれが進みそうですね。その光ですが、「ドコモ光」の状況はいかがでしょう。
吉澤氏:ドコモ光は6月に200万契約を突破し、今年度は165から170万契約を追加したい。そうすれば、300万契約を超えることになります。収支についても、今年度は無理ですが、来年度の黒字化が見えてきます。光は、モバイルとセットになることで、モバイル側にもメリットがあります。解約率が下がるだけでなく、世帯で入っていただくときに、モバイルを新規で持つという動きもあります。
最近では、フレッツ光からの転用以上に、新規も増えています。この新規の比率を上げていきたい。かつ、NTTぷららがやっている「ひかりTV」のようなものに入っていただく形で、固定ブロードバンド側も拡大していけます。
サービス面での改善は人工知能とも組み合わせたい
──固定とモバイルの連携に関しては、料金が先行していて、サービス面が弱い印象も受けます。
吉澤氏:いま、dマーケットの中では、dTVを連動させるような仕組みをつくろうとしています。そういうものは考えています。
──dマーケットのサービスですが、今好調なものを、さらにブラッシュアップしていくようなお考えはありますか。サービスによっては、UIがイマイチなこともあります。
吉澤氏:実際にサービスをやっている各組織が、お客様の声を聞きながらブラッシュアップしてはいますが、使い勝手のようなところには、まだ改善の余地があると思います。たとえば、dマガジンであれば、もう少し見やすくしたり、いつも読んでいる記事内容を解析して、AIでレコメンドできるようなこともあるでしょう。そういうものを入れて、お客様に見やすくする、検索しやすくする動きは、ぜひやっていきたいですね。
──AIは、就任会見のときにも挙げたキーワードです。
吉澤氏:これは、入れていかなければいけない。それは、自分たちの仕事にもです。たとえば、位置情報のようなものはGPSがなくても基地局でわかりますし、ネットワークにいるお客様の電界強度もわかります。わざわざ電波を測定しに行かなくても、どの時点でどういった電界強度だったかはわかるわけです。
ここは悪そうだねということを、AIで判断してネットワークを改善する。あるいは、装置の故障予知のようなところでも、どうやってアラームを上げればいいのかの経験値はあります。
ほかにも、お客様対応だと、解約の予兆もたくさんあります。2年契約しているとき、23ヵ月目や24ヵ月目でどういう行動をしたら解約しやすくなるのかを解析して、解約しやすそうなときにはメールを送って抑制するなど、そういうところも充実させることができます。
ドコモと他社の協創──「+d」はさらに拡大へ
──始まったばかりの取り組みを受け継ぐ形になった、「+d」についてはいかがでしょうか。
吉澤氏:これには、いくつかの方向性があります。パートナーとなる企業、団体、学校などを広げることはひとつですが、dポイントも大きなものになっていて、加盟店をいかに広げていくかというのもあります。
また、「+d」でつくったノウハウのいいところは、拡大しないと意味がありません。いま、農業のIoTを新潟市とやらせていただいていますが、これもほかの水田地帯に広げたり、農水省などに話をしたりして、もっと全国的にしなければなりません。
──dポイントも、ユーザーメリットを上げるためには、加盟店がもっと必要だと感じています。
吉澤氏:ここは、もっと存在感を示さないといけないですね。ポインコなどの宣伝はしていますが、そのためにはかなりの露出をする必要があります。さらにドライブをかけ、加盟店を増やし、利用も増やさなければなりません。そのためには、大きな店舗ももっと必要です。
ポイントについては、(他社にも)色々な動きもあります。お互いに連携できるものか、できないものかといったところは、注視しなければなりません。
「+d」については、ドコモの持つアセットや、それを使っていただけるビジネスが何なのかをとらまえた上で、協業していきます。幸い、相手からの問い合わせも増えていて、認知度が上がっていることは実感します。B2BやB2B2Cで、社会課題や自治体が抱えている課題を解決するためのソリューション、それをドコモがやる意義は当然あります。
海外展開も継続。フィリピンキャリアへの協業は好調
──海外展開については、どのようなお考えでしょうか。
吉澤氏:いくつかの視点があります。日本の市場は、停滞しているわけではありませんが、少し成熟してきているところはあります。その中で、足場を海外に求める動きはあります。
NTTグループにも海外の会社がたくさんあるので、そういったところでのICTソリューションにドコモが参加していくことは、当然あります。ソリューションを提供する上で、モバイルの環境も必要なってきますからね。そこに参画することはやっていきます。
また、ドコモ自身としても、欧州に認証や課金のプラットフォームを提供する、ネットモバイルやボンジョルノという会社を持っています。これらの会社も、さらに拡大していきます。
それと同時に、国際ローミングはすでにやっていますが、まだLTEローミングをやっていないところがあり、VoLTEの相互接続もこれからのところがあります。
アジアに関しては、アライアンスを強化していきたい。その連携の中で、メリットがあることはやっていきますし、提携だけでなく、ジョイントベンチャーのようなものができればとも考えています。ただし、キャリアへの出資に関しては慎重です。新興国にカントリーリスクがあることは、インドへの投資でわかりました。出資するとしても、大型になってしまいますから、それは難しい。
ただ、バングラディッシュのRobiや、フィリピンのPLDT、台湾のFar Eastone、香港のHutchison、韓国のKTには、いまでも出資しています。中でもフィリピンのPLDTは非常に優秀で、フィリピン内では協業もしています。ここでは、ドコモがネットワークのコンサルティングをしていて、エリアのつくり方や新方式の導入支援で、お金もいただいています。KTとも、常にコミュニケーションを取り、一緒に動いています。
スピード感と高い情報アンテナを持った企業が勝ち残る
──最後に、吉澤さんはドコモの社長としてどのようなカラーを出していきたいのか。この点を教えてください。
吉澤氏:加藤は常に「スピード&チャレンジ」と言っていましたが、その部分全然変わっていません。僕自身がいつも言っていることですが、大きな会社が小さな会社に必ず勝つとは限らない。いまは、それよりも、判断が速い会社、変化に対応する会社が、遅い会社を負かすことができます。そのスピード感は大切にしていきたい。極力、そう判断しようとはしています。
スピード感は重要視していて、最優先もしています。そういったカラーを持ちたい。こういう時代なので、どんな情報でも敏感にキャッチする、高いアンテナを持てと言っています。そういうカラーにしていきたいですね。
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