週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

時代が追い付いた授業支援システム:schoolTakt

タブレット1人1台授業に足りなかった答え コードタクトが示す未来の教室

教師の業務負担を軽減するさまざまな仕掛け

従来の教材を利用することもできるだけでなく、テンプレートから新たに課題を作ることも容易

 「タクト」は、英語で「指揮棒」という意味の言葉だが、まるで教師が授業を指揮するかのように、「schoolTakt」は授業をコントロールするためのさまざまな機能も持っている。課題を解く際のタイマー機能や、一時的に教師に注意を向けさせるための画面ロック機能など、細かな仕様は授業の進行をスムーズにする。そのほかにも、教師の業務負担の軽減に資する工夫が随所になされている。

 たとえば、事前に準備しなければいけない授業資料を作成する際、従来は紙の教材を切り貼りするなど煩雑な作業を伴っていたが、「schoolTakt」なら問題集の使いたい部分を写真に撮ってテンプレートに貼りつけるだけ。WordやPowerPointで作成した課題をこのようにして取り込めば、従来作ってきた授業の資料をムダにすることなく活用できる。デジタル化することによって、アナログ教材の資産を一から作りなおすのではなく、デジタル化によってこれまでと同じ作業をより便利にするという「schoolTakt」の考え方は、現場に過度の負担を強いることなく導入できるという点で他社に差をつけているという。

 また後藤氏には、「学習にはメタ認知が大事。『なぜ分からなかったんだろう』と考える事自体が学び」という考えがあり、”授業のログ”を教員に還元できるものにしたいという。それを実現する機能の1つが「分かった・分からない」ボタンだ。Facebookの「いいね!」のように、授業中いつでも生徒は「わかった、わからない」ボタンを押すことができるが、どこでこのリアクションが発生したかを、教師は時系列のグラフビジュアルで確認できる。さらに「分からない」を押した生徒の解答のスクリーンショットはログとして残るため、その生徒が何を理解できていなかったのかが分析できるため、その先の授業への反映も容易になるという。

横軸に授業の進行があり、その途中途中での理解度を視認し、データとして蓄積

まだまだ低い教育業界のICT関心度

 現在、「schoolTakt」のユーザーは、現在国内に約1万3000人を数え、茨城県の古河市など実際にソフトを導入している学校では非常に活用率が高い。後藤氏によると、高評価のポイントは「schoolTakt」がブラウザで動くという点にある。

 ネイティブアプリにはオフラインでも使えるといった利点があるが、学校の授業で使用する場合は、100台、200台というタブレットにソフトへインストールを行い、定期的にアップデートする必要がある。しかし、ブラウザであればそうした手間もなく、PCやスマートフォンを介してデバイスの種類を気にせずどこでもアクセスすることができるメリットもある。教員と生徒が「schoolTakt」上で送受信するのはテキストデータほどのごく小さなものであるため、ADSLのような細いネットワーク回線でも十分に対応可能だ。

 しかし一方で、「schoolTakt」はさまざまな課題を抱えている。その1つが日本の公教育の現場におけるICTへの理解度の低さだ。一般企業に比べて普段ITに触れる機会の少ない教員はITスキルが低い傾向にあるため、システムの導入に関心が低いこともしばしばだ。クラウドサーバの使用についても二の足を踏む自治体や学校が多いため、対象となる先生ユーザーの意識を変えなければICT市場規模の拡大は見込めない。

 また、従来のいわゆる暗記型から問題解決能力を養う学問へと変革が進む中で、それを測る査定内容(アセスメント)を策定することの必要性、そしてタブレット1人1台時代に移行するまでに訪れるであろう3~4人でのグループ学習に対応したシステム開発も意識しなければならないと後藤氏はにらむ。

 課題は山積しているが、後藤氏は日本デジタル教科書学会の役員としても、ICTを用いた新しい教材を体験するイベントを開催したり、学校へおもむいて講演するなど啓蒙活動を続けている。一方で、「教育現場にICTは結局はまらないのではないか」という指摘もあるというが、自らが教鞭を執った経験のあるプログラマーとしてそのアドバンテージをもとに推進するという志を見せる。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事