「きゅんくん」をご存じだろうか。
突如ネット上に現れたかのような印象を抱いているのだが、その姿は一度見たら忘れることができない。鮮烈だ。まだ知らない人はまずはこちらをご覧いただきたい。
ロボティクス・ファッション・クリエイターという肩書きで活動する彼女は「ウェアラブルロボット」を制作している。見ての通り、着ることができるロボットだ。動画の作品は「METCALF clione(メカフ クリオネ)」といい、2016年3月に発表されたもの。
このclioneは最新バージョンで、1年前の2015年3月に「METCALF」が発表されている。METCALFというネーミングはきゅんくんがウェアラブルロボットをメカフク(メカ服)と呼んでいたことに起因する。
ウェアラブルというものに慣れ親しんだ人ならわかると思うが、いままで見てきたウェアラブルとはまったく違う。肩に乗ったうにょうにょと動くロボットに目を奪われる。かっこいい。そして驚くことにMETCALFには動く以上の機能はない。METCALF clioneもスマホアプリで操作できるが、それ以上の機能はない。ここも既存のウェアラブルとは違う。
いったいきゅんくんとはどんな人なんだろうか、なぜウェアラブルロボットを作っているのか。SUPER GUZZILLAを見学したときに、きゅんくんとお会いすることができたので聞いてみた。
きゅんくんがタグチ工業の見学動画を撮影中にタイミングよく居合わせることができたので今回話を聞けた |
機能排除はガッカリ感をなくすため
―― なんで着られるロボットを作ろうと思ったんですか?
きゅんくん 小学生の頃からロボットが好きで、高校生になってから服を作り始めたときに、自分の中の軸であるところを表現しようと思ってウェアラブルロボットを作ろうと考えはじめました。
―― 僕もウェアラブルガジェットがとても好きで身に着けたりしているんですが、機能ありきだと考えています。もっというとコンピューターとかメカって人の利便性を高めるために作って活用してきた側面があると思います。METCALFを初めて見たとき「おー、すごい!」と思ったのですが、一切機能がないですよね。
きゅんくん 機能が悪いと思っているわけではなくて、むしろ際立たせるために機能を排除している面が強くて。ウェアラブルガジェットって人々が求めているクオリティーと現在ある技術の差が激しいと思うんですよ。ロボットに関しても同じだと思います。
―― ガジェットがオーバースペック、ということですか?
きゅんくん SFなどに出てくるファンタジーなデバイスに人が慣れ過ぎていて、「こんなこともできるんじゃないか、あんなこともできるんじゃないか」と思っているんだけど、実際は基礎技術ができあがっていない状態だと感じます。
―― 人側の理想が大きいということですね。
きゅんくん そうです。どうしても機能の面でガッカリしてしまうんですね。だったらそのガッカリ感をなくさないと普及はしないだろうと思っていて。ガッカリ感をなくすために、初めから機能がないと言いきってしまうという選択をしました。
―― 機能性はいったん置いといて、メカとして、ウェアラブルとしてカッコいいものを作ったわけですね。
きゅんくん そうですね。ウェアラブルデバイスってバッテリーの問題が大きくて、バッテリーが大きくなってしまうせいでデバイスが当初の設計より大きくなってしまう例があります。それなら小さくしようとするのではなくて、大きいデバイスでもいいからカッコいいから身に着けたいと思うようになればバッテリーを大きくすることもできるし、トルクの大きいモーターを積んだりもできる。やれることが広がると思います。
―― センサーやバッテリーが小さく収まっているところにウェアラブルの良さがあると思っていましたが逆の発想ですね。
きゅんくん 大きくした方ができることも増えるから、それなら大きくても身に着けたいと思えるデザインやコンセプトを立ち上げようと。
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