スマートフォンなどで身近になった「モバイル・テクノロジー」。この連載では、モバイル関連の技術を、できるだけ元になる文書に当たりながら解説していく。
スマホのスペック表で
見ることが多くなってきた対応周波数
携帯電話やスマートフォンの対応周波数は、SIMフリー端末の普及とともに記載されることが多くなってきた項目で、バンド番号で表記されることが多い。
このバンド番号は、3GPPという団体が発行している文書に定義がある。3GPPは3G方式のベースとなったIMT-2000の策定時に日本やEU圏などW-CDMA方式(EU圏ではUMTSと呼ぶのが一般的)を推進するために作られた団体で、W-CDMAやLTEの仕様定義を行ない、文書などを発行している。
またEU圏では、2G方式としてGSMを推進していた関係から、GSM関連の文書も発行しており、これにあたることでGSM/W-CDMA/LTEの3世代にわたる技術仕様を入手することができる(3GPPホームページ、http://www.3gpp.org/)
3GPPやその規格書のシステムなどについては今回は解説しないが、この連載で随時紹介していく予定である。
さて、3GPPにある周波数の定義は、GSM/UMTS/LTEの各規格文書のうち、端末側(UE、User Equipmentという)や基地局(BSまたはNode-Bなどと呼ぶ)の無線関連の定義にある具体的な文書としては、
●GSM:
TS 45.005 Radio transmission and reception
(http://www.3gpp.org/DynaReport/45005.htm)
●UMTS:
TS 25.101 User Equipment (UE) radio transmission and reception (FDD)
(http://www.3gpp.org/DynaReport/25101.htm)
TS 25.102 User Equipment (UE) radio transmission and reception (TDD)
(http://www.3gpp.org/DynaReport/25102.htm)
●LTE:
TS 36.101 Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); User Equipment (UE) radio transmission and reception
(http://www.3gpp.org/DynaReport/36101.htm)
となっている。たとえば、GSM方式のTS 45.005という文書では、下の画面のようにバンドの定義を行なっている。GSM方式では、3Gや4Gと違い、各バンドに名称がある。また、EU圏では鉄道用などに利用されているため、それらの定義も入っている。さらにスマートフォンのカタログなどでは、周波数そのもので表記することが多い。
これに対して3Gのバンド定義は、上り/下りに別々の周波数を割り当てるFDDと、同一の周波数を時間で区切って、上り、下りで共有するTDD方式では、別の文書となっていて、FDDはローマ数字によるバンド番号表記、TDDは、アルファベットによるバンド番号表記となっている。そのこともあって、メーカーのカタログなどでは3Gの表記にローマ数字を使うものもあるが、一般向けのメディアではわかりやすくアラビア数字を使うケースも少なくない。
LTEのバンド番号は、FDD、TDDが同一の文書で定義されていて、こちらはバンド番号にアラビア数字を使っている。
なお、これらの文書には、バージョンがある。基本的に3GPPのほとんどの文書は、機能の追加や拡張などに対応して改訂されていく。基本的には最新のもの(各ページで上にあるもの)を選べばいい(このページの見方なども別途解説予定)。
ただ残念ながら、全体をまとめた文書がないため、ドキュメントを元に筆者が作成したものが下の表だ。
基本的に3Gのバンドは、すべて4G側でも定義されているが、4Gのバンドの中には3Gで定義されていないバンドがある。
また、各バンドに通称が付けられることがある。たとえば米国の1900MHz帯(バンドⅡ/2)は、PCS(Personal Communication System)バンドと呼ばれる領域にあったため、PCSバンド、PCS1900などと呼ばれていた。各国の電波管理機関などの文書では、このように通称を使うことも多い。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります