北九州市の小倉駅近くにある「秘密基地」というコワーキングスペースでは、夜な夜な地元の人が集い、さまざまな地元課題の解決や新規事業創出などを語り合っているという。今までのコワーキングスペースの概念を覆す型破りな「秘密基地」の秘密を運営の岡秀樹・浩平兄弟に聞いた。
交流自体が目的の秘密基地で起こっていること
北九州市の中心であるJR小倉駅から、歩いて10分程度。飲み屋やパチンコ屋が固まるエリアを抜けた一角にコワーキングスペース「秘密基地」はある。階段を上がり、まさに秘密基地というイメージの巨大な扉を開けると、心地よいスペースが拡がる。元ビリヤード場を改装したフロアには、ワーキングスペースのほか、本棚やソファーが並び、ジャズの軽快なスイングが響く。
シェアオフィスにはコンサルティングやソフトウェア会社、果物屋、整体師、リンパマッサージ、プロのファシリテーター、グラフィックデザイナー、建築家、3Dプリンタの専門家、アロマの先生、船長まで幅広い業種業態の人が入居しており、日中は仕事をしている。入居者が多少変わっているかなとは思うが、ここまでであれば一般的に語られる「シェアオフィス」だ。
しかし、秘密基地の真価は夜に発揮される。夕方18時以降はパブタイムになり、入場が無料になる。120名にのぼる秘密基地の登録者が会社帰りに集まり、ワイワイが始まるのだ。食べ物や飲み物を作れる厨房や、昼間はオブジェだったピアノや黒板がここで威力を発揮する。「厨房があって、昔はシェフがいたんです。でも、人気が出ちゃって鉄板焼き屋として独立しちゃったんです」と秘密基地代表の岡秀樹さんは笑う。
また、週に2~3回くらいはSNSやブログ、アフィリエイト、Google Analystic、ファシリテーション、自己ブランディングなどさまざまなセミナーが行なわれる。参加費も2000円程度ときわめて安価。「能力をみんなでシェアしよう、ニュービジネスを立ち上げるための土台を作ろうという考え方です。スキルを教えることで儲けるのではなく、得たスキルを元に、みんなで儲けようというコンセプト」(秀樹さん)。
「集めて 混ぜて 繋げて 尖らせる」という秘密基地の社是。呑んで食べて、見知らぬ人とわいわい語れるネットワーキングタイムこそ、秘密基地の真骨頂と言える。「会議室は会議のためにあるし、居酒屋行くとなにか頼まなければならないし、プロジェクターもない。交流するためのスペースって意外とないんですよ。その点、秘密基地はそもそも交流を目的としていて、その媒体として食べものがある」と秀樹さんは語る。
千葉から北九州に移り住んだ経験を持つオルターブース(JAWS-UG北九州)の藤崎優さんも、かつて秘密基地のユーザー。秘密基地に通うことで、地元になじむことができたという。「コワーキングスペースはいくつか行ってるんですが、どうしても静かに仕事するハコというイメージが強くて、秘密基地みたいなところはない。でも、ここだと身構えないで済むし、秘密基地に来ること自体が目的になるんです」と感想を語る。
これに対して、岡さんは参加者が秘密基地という場所の価値を上げたという。「僕らが作ったのはハコというより、最初の理念。参加する人で秘密基地の未来が変わったんですよ」(秀樹さん)。
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