個人向け・企業向けのデータ保護ソリューションを幅広く手がけるアクロニス。そのCEOであるセルゲイ・ベロウソフ氏が来日した。ロシア生まれで、現在の拠点はシンガポール。その異色の経歴については過去の記事などで確認してほしい。
ランサムウェアの危機に備えるためにもバックアップは重要だ
── アクロニスの事業について改めて教えてほしい。
システムとデータを守るための技術を提供している。データをどう扱い、ローカルやクラウド上のストレージに格納していくかがキーとなる。暗号化したり、セキュリティーや利便性を上げていくという点ではローカルもクラウドも変わらない。
ただしどちらか一方だけを選ぶというのであれば、よりよいのはクラウドだ。セキュリティーや安全性が圧倒的に高い。一方でデメリットはアップロードに時間がかかることやバックアップ間隔に一定のラグが生じることだ。メリット・デメリットを踏まえつつ選択肢を用意している。
──クラウド利用が増加する傾向だというが。
アクロニスは昨年で約25%の成長を遂げたが、クラウドは800%とそれよりもはるかに大きく伸びた。日本に限って言うと、災害対策の意味合いを含めて東日本大震災以降、急速にクラウドの利用が伸びている。
── 急速について具体的な数字はあるか。
ここでは、急速(Quickly)としか言えない。
── 日本のコンシューマーマーケットについてどう考えているか?
コンシューマー市場の売上のうち、約10%が日本からのもの。小さくはない。しかし日本人はもっとプロテクションに関心を払うべきだと思っている。例えばランサムウェアが問題になっているが、北朝鮮や中国のクラッカーが世界各国を狙っている。市場としても大きく、250億ドルの規模という試算もあるようだ。
── ネットワーク製品のOEMなどでアクロニスのブランドをよく見るが。
日本ではOEMによる収益はそれほど多くはない。ただし、グローバルの話をすると、OEMビジネスはアクロニスの事業の15%を占めており、まだ増やせるはずだと思っている。
── Windows 10のリリースによりいい影響はあったか。
売上は上がった。マイクロソフトは素晴らしい会社だが、OSのアップグレードには常に危険が伴うから当然の結果と言える。
── 現在アクロニスが預かっているデータの総容量はどのぐらいか?
約50ペタバイトある。クラウド事業の売り上げ規模が800%増えたと話したが、容量は6倍に向上している。
── アクロニスの他社に対する優位性はなんだと思っているか?
すべてのポイントについて、競合を圧倒していると思う。
── もう少し具体的に知りたい。例えばパッケージソフトではどうか。
(Acronis True Image Cloudでは)イメージ単位でのバックアップ、ファイル単位でのバックアップの両方に対応でき、iOS、Android、Windowsといったプラットフォームを網羅している。クラウド、アプリ、ローカル、様々な方法に対応できる。
バックアップソフトを比較しようと思ったとき、ポイントは大きく5つだ。第一に技術的な特徴、2つ目にプライバシー、3つ目にコントロール性となる。これらは、何かのデータが失われたとき、どれだけの期間なくなるのか、1分前の状態に戻せるのか、それとも10分前になるのかというリストアの時間が問われるという意味だ。さらに4つ目としてバックアップを作るのに要する時間、5つ目にバックアップそのものの信頼性だ。バックアップはセーフティーネットなので100%の信頼性が求められる。
(すべてのポイントといったのは)高速で、使いやすく、信頼性があり、データを入れやすいという点だ。クラウドだけでもローカルだけでも、連携させても使え、暗号化してセキュリティーも保てるという意味だ。
── イメージバックアップでありながら、ファイル単位での復旧もできる点はアクロニスの特徴だと思うが。
その通りだ。バックアップから復旧する際、壊れている場所だけをリストアできるならそれが一番だ。バックアップからの転送速度がいかに高速でも、イメージ全体ではなく、壊れている部分だけを戻したほうが速いのは言うまでもない。そのためには壊れた部分を的確に見つけられることが重要だ。
── 個人ユーザーがバックアップする際に心がけたほうがいいポイントは?
個人の場合、基本的には全部をバックアップし、プロテクトしたほうがいい。そうすれば必ずリストアできるし、どれが壊れたかわからない場合でも安心だ。
われわれはその啓蒙のために「World Backup Day」というものに参画している。毎年3月31日をバックアップの日として、バックアップの大切さを世界中に向けて啓蒙していく取り組みだ。
── 最後に日本のユーザーに対してコメントを
データというのは非常に大切なものです。記憶であり、ビジネスであり、健康状態であり、個人の生活であり、自分自身を表現したものでもあります。これがなくならないようすべてをバックアップしておくべきでしょう。デジタルの世界では、すべてのものを保護することができます。2つコピーを作っておけば安心ですし、3つあればより完璧でしょう。
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