2016年のMWCのキーワードの1つが「5G」だった。日本では東京五輪が開催される2020年に商用化といわれており、あと4年後ということになるが、ネットワークインフラベンダーはMWCの各ブースで5Gの世界を見せていた。本記事ではファーウェイとNokiaの様子を紹介する。
ファーウェイは4Gと5Gの繋ぎとなる4.5Gを前面に
後述するNokiaやEricssonが5Gの世界を見せる一方で、ファーウェイがプッシュするのは“4.5G”だった。ただし、4.5Gという言葉を使っているネットワークベンダーはファーウェイぐらいだ。
これは2015年10月に標準化グループの3GPPが「LTE Advanced Pro」として、現在作業中のRelease 13から盛り込んでいくことを発表している技術で、ファーウェイは「速度は(下りが)1Gbps以上で、遅延は10ms程度まで縮小できる」としている。
通信規格の標準の名称はこれまでスイスに本部を置く国際電気通信連合(ITU)でしっかり管理されてきたが、米国企業らが3.9GといわれていたLTEを「4G」とマーケティングしたことで、欧州側が折れて「4G」になったという経緯があり、最近は業界全体の足並みがそろわない。ちなみにファーウェイは2015年のMWCでも「4.5G」とマーケティングしていた。
ファーウェイによると、4.5Gでは「Massive(大規模) MIMO」と呼ばれる非常に多数のアンテナを用意する技術を用いる。これらにより現行のLTEでは通信速度は下り450Mbps~600Mbpsが最大だが、4.5GではGbps級に達するという。また遅延は現在のLTEが40ms程度であるのに対し10msまで縮小を目指す。事業者はすでにMIMO、キャリアアグリゲーション、変調方式(QAM)の強化を進めており、今年中には1Gbpsの技術が出てくるだろうとのこと。
では、4.5Gでどう変わるのかというち、「VRやホログラムなどが可能になってくる」と説明員は語る。遅延も低下するので、ドローンや遠隔医療などにも利用できるという。コネクテッドカーなども挙げていた。
ブースでは、4.5Gの例として英国の通信事業者EEがラボでファーウェイ、クアルコムと行なっている実験を見せていた。クアルコムの最新のSnapdragon X16 LTEモデムを利用、3本の搬送波を束ねるキャリアアグリゲーション、4×4MIMO、256QAMを利用して1Gbpsに到達している様子がライブ画像として映し出されていた。X16 LTEが2016年末から登場することから、商用サービスは2017年開始を見込む。
4.5Gはすでにノルウェーの携帯事業者であるTeliaSoneraが2015年末に提供を開始している。ファーウェイでは「2016年はローンチが加速する」と見ている。
5Gについても、中国で行なっている実験を画面で見せていた(写真撮影は禁止)。このほか、レゴブロックでスマートポートを作ったり、ロボットがエアーホッケーをプレイして低遅延ぶりを見せていた。どれも実際に5Gネットワークを使ったものではなく、あくまでイメージ的なものだった。
Nokiaは5Gbpsを叩き出す5G基地局のデモを展示
5Gについては、Nokiaが面白い展示をしていた。5Gの技術はBell Labs(ベル研究所)としてパネルで説明、これはNokiaのアルカテル・ルーセントの買収により、Nokiaの子会社となったため。説明していたのは、Massive MIMO、Network Slicingなど、他とだいたい同じようなもの。なお、Bell Labsはノーベル賞受賞者を8人も輩出している。
5Gで大きく改善されるという遅延について、ユーザーにとってわかりやすいメリットを見せていた。スタジアムでのボールの動きをカメラから5G端末と4G端末にストリームするとどのぐらい違うのかを見せる。
ブースの奥では、実際に標準化以前の5Gネットワークを使ってVRのデモをやっていた。Nokiaは会期中に5G対応の無線基地局「AirScale」を発表しており、これを利用して構築している。周波数帯は15GHz帯を利用、スループットは5Gpbs程度が出ていた。システムの半分のみを利用しているので、フルだと10Gbps程度まで行くとのこと。遅延は1msを切っていた。
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