目指すは日本発の技術イノベーションベンチャー
基礎技術開発こそが生き残る道 SFの世界を現実にするLiquid
エンドユーザーの声を取り入れた生体認証
現在、Liquidのスタッフは23名。ほとんどが技術スタッフだ。
久田氏自身も技術畑出身で、金融取引の会社を起ち上げ取り引きをスムーズに行うマッチング技術の開発を行っていたものの、「Liquidでは開発業務は他のスタッフに任せ、パートナー企業を見つけ、連携するための交渉を行っていくことが仕事」だとして、パートナー企業との連携など、外部との交渉が重要な業務だと説明する。
画像解析技術の中で、目下ビジネスが進行しているのが生体認証となる。2015年から複数の企業と提携。トレイダーズホールディングスとは、生体認証技術の金融取引システムなどへの応用に関する調査や研究などを行う業務提携、フィリピンのマプア工科大学との指紋認証システム導入、電通国際情報サービスとの共同実験、ハウステンボスでのテスト導入、イオン銀行と銀行業務での実証実験など、急速に提携を進めている。
「僕ら単独では何もできない。提携企業のみなさまあってこそ。有り難いことに引き合いがとても多い」と久田氏。とはいえ、現段階では実証実験が中心で、実ビジネスとして実を結ぶのはまだ先になるという。
「あらゆる人が、意識せず、自由に生体認証を利用するまでには5年、10年といった時間がかかると思っている。ここ1、2年で世界が変わるわけではない。ただし、目の前で取り組むべきことはあるので、きちんとそれに取り組んでいく」
同様の生体認証技術を開発する競合企業と比較した場合、優位性はどこにあるのか。「日本企業の場合、エンドユーザーよりもサービスを提供するクライアントありきで開発を行う傾向がある。僕たちの強みはユーザー目線に立って要素技術を開発しているところ。エンドユーザーの声を聞いて、即反映させることができる」
実際に実証実験を行うと、予想を超えたユーザーの反応があるという。「ハウステンボスではLiquid Payを用いて、独自の地域通貨(テンボス通貨)を提供している。サービス開始前は、新しい試みのためギークな層が利用者の中心になると予想していたが、開始してみるとお子さんを連れた親御さんから好評となった。小さいお子さんを連れていると、財布を出して支払いをしている間にどこかに行ってしまうといったトラブルが多いそうで、そういった手間がなくなるのでテンボス通貨を使いたいという声が多い」
現在実施中の実証実験は、提携企業が前面に出るビジネスモデルと、Liquid Payが前面に出るビジネスモデルの両方があるが、エンジンが生体認証のデファクトスタンダードになるのであれば、あとはこだわらない。「提携相手の要望に応じて、どちらにも対応している。本当はインテルのようにバックエンドにいながら『実はLiquidのエンジンを使っていたんですよ』というような、どこでもLiquid Payを使っているという状況が望ましい」
社名のLiquidが意味する“液体や水”は、なくてはならないものだが、人間はあらためてその存在を意識せずに使っている。自社で開発した生体認証技術が水と同様、意識せずに広く利用されるものとなることを目指し名付けたものだ。
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