社外を活用し、開発難易度の壁を突破

「起業を思いついたときは、2014年の冬までに出そうと思っていた。自分も使うので、(スノーボードの)シーズンまでに間に合わせたかった」(宮坂代表)が、実際に物事が進んだのはお金の面が解決してからだった。
ソフトウェアとハードウェア両面での開発が始まったのは、2015年1月。開発や量産のための資本は、アクセラレーター支援、シードラウンドでの投資、さらにはクラウドファンディングも含めてまかなっている。
BONXの特徴の一つは、音声通信とアプリの遠隔操作を実現するBluetoothデュアルモードでの通信処理技術だが、このような部分は社外とのつながりで乗り越えている。
「BLEは開発難易度が高い。国内の大企業も苦戦している」と相談した宮坂代表に語ったのは、半導体商社マクニカでMakerのものづくりを支援している岡田裕二氏。
希望する仕様に沿ったBLEデュアルモードを実現できるところを日本国内で見つけられず困っていた宮坂代表を救ったのは、開発チームの一人・百崎氏が紹介してくれたあるODM企業。彼らのネットワークを通じて、Bluetooth関連技術に強みを持つ半導体メーカーCSR plcとつながりのある工場を中国・深圳に見つける。
こうした背景により特許申請中の独自開発の音声データ通信システムが出来上がり、これまであり得なかった状況でのグループ通話が可能となった。中国でのブルートゥースのデュアルモード開発など、できるところにうまく任せて進めた形だ。
「勝手知ったる面々がいるので、よくできているが、それでも大変だった。狙ったものは簡単には出てこない」
活動量計など、いくらでもやろうと思えば追加はできる
開発スタートに至る前まで、当初はスマホをトランシーバー代わりにするアプリをベンチマークにして、ボタンを押したら、声を発信するようにしていた。風切音を解消できるアイデアなど 、さまざまなアプローチがあったという。だが、実際にスポーツシーンでの利用のため、「手元を使わずに操作を行える」ように方向性が変わった。
当初から使うシーンが明確だったため、BONXの核となる部分を決めることで形がそれに追い付いてきた。Bluetoothデュアルモード同様に、ハンズフリーを解決させた音声認識技術についても、外部に技術を頼ってつなぎこんでいる。
そもそもグローブをつけている状態で人は小さなボタンを押せない。また耳につけている見えないボタンの場所、ましてや操作なんて人は覚えないだろうという考えだ。
「ボタンが2つしかない部分はこだわり。そうしないと複雑になるんだと作ってみて思った。活動量計など、いくらでもやろうと思えば追加できるが、必要なのは『これをつけていれば、いつでもどこでもしゃべれる』だけでいい。だが、それだけでも十分に大変だった(笑)」
売るフェーズまではステルスで進めたのも、必要となる機能やあり方に向けて、徹底的にしぼったからだ。「やらないことを決めている。ユーザーに喜ばれるもの以外に加えるものはない。喜ばれたいので、そこにつながらないことはやらない」
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