地方スタートアップ企業と首都圏の大企業を結び付けるマッチングイベント“Startup Japan Tour 2015”が、2015年11月14日に福岡で開催された。九州で活躍するスタートアップ企業による、地方から活躍するためのパネルディスカッション。シード、アーリーステージのスタートアップ企業によるピッチ、さくらインターネットによるスタートアップ企業が陥りやすい状況にアドバイスを与える問題解決メンターセッションが行なわれた。
新しいアイデア、サービスは次々と生まれるが大きくスケールさせることが難しいスタートアップ企業。一方、大企業は蓄積された知識や資金力はあるものの組織は硬直化し新しいアイデアが生まれづらくなっている。またスタートアップと大企業の両者が結びつき、お互いのリソースを生かし、シナジーが生まれている事例は多くなってきたものの、まだまだ東京の一極集中いうのが現実だ。
スマートデバイスの普及によって地方でも起業がしやすくなり、各地でおもしろいサービスが生まれている中、結びつきの恩恵を地方でもつくりだす必要がある。同イベントは、地方スタートアップ、大企業、投資家の結びつけ、より伸びるサービス、各地域のコミュニティー構築などを目的としている。
パネルディスカッションでは、スタートアップカフェの設立、福岡市の国家戦略特区への認定などスタートアップ支援で精力的に活動することでも有名な、福岡市の高島宗一郎市長がスペシャルゲストとして急きょ登壇。
選挙に行くだけでない、政治運動の必要性
そんな福岡をうらやましいという、鹿児島のスタートアップ企業ユニマルの永田司COOは、「どうしたら行政のサポートを受けられるのか」と尋ねたところ、高島市長はスタートアップのアントレプレナーシップは素晴らしいが、選挙に行くだけでなく、政治運動をする必要性を説く。既存企業は政治家と対話をしている。たとえ新しいアイデアが素晴らしくても、いまのマーケットを脅かす場合、政治家はどうしても既得権益をもつ既存企業を大事にしてしまう。行政への働きかけなしに規制をダメと批判するのでは、批判する人の声は届かない。政治が変わっていくときは賛成が必要、行政との対話、働きかけによる政治参加で、状況は変わっていくと答えた。
さらに行政は何かを初めてするのはハードルが高いが、別の自治体で成功したモデルのコピペはしやすい。スタートアップが成功するモデルは、福岡が先行してつくる。「どうして福岡はスタートアップが成功するのか」と、各自治体が思い、真似するような状況をつくっていきたいと参加者の熱量を上げていた。
謎解きなど要素があるプラットフォームアプリ『Unlocks』に注目
スタートアップのピッチコンテストの参加企業は6社。新日本監査法人賞、京都リサーチパーク賞、グランプリと賞を総なめにしたのは、農業のデータ分析サービスを提供する“テラスマイル”だ。農家向けのITのよる農業統計、農業経営実務データの活用マネジメント支援を行なっている。加えて今後は作農のデータ分析により、出荷予測を行ない、流通、小売りと連携し無駄の少ないサプライチェーンをつくっていきたいとした。IBM BlueHub(ブルーハブ)のインキュベーションプログラムへの参加、各ピッチコンテストでも好成績を残している企業で、ほかの参加企業よりもビジネスモデルやプレゼンレベルで一歩も二歩も抜けていた印象もあり、納得の受賞だ。
審査員特別賞には“thee moment”が選ばれた。謎解きなど新しい遊びを作成できるプラットフォームアプリ『Unlocks』を作成しており、近日ローンチ予定だ。企業や個人がロックカードを作成、受け取った人はカードに書かれた謎を解く遊びができるというもの。謎を解くカギはすべて“リアル”にしかなく、「●●の場所へ行く」、「●時に行なう」など、現実世界と連携したものとなるのが特徴。
個人間のコミュニケーションに加えて、企業や自治体を巻き込んでリアル宝探しやウォークラリーを行なえるなど、新しい遊びのプラットフォームになれる可能性をもつアプリサービスだ。流行りの謎解きやリアル脱出ゲームを誰もが手軽に行なえるようになるかもしれないローンチが楽しみだ。
さくらインターネットとサムライインキュベートの主催で8月に京都で第1回が行なわれ、今回の福岡が第2回目となったStartup Japan Tour 2015。今後は岐阜、愛媛、北海道、宮城、長野と地方全7都市をまわり、地方スタートアップを大企業と結び付けとコミュニティーの創出に努める。
■関連サイト
Startup Japan Tour 2015
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