データを吟味して日本市場への理解を深めるデジタルスカイ
3人目の登壇者は、株式会社デジタルスカイジャパンでCOO(最高執行責任者)兼エグゼクティブプロデューサーを務める久田幸司氏。
デジタルスカイジャパンは2014年に設立された新しい会社ですが、デジタルスカイ自体の本社は香港でゲームの開発経験は10年。そのほか、北京、台湾、韓国、成都に支社を構えるアジアを拠点にしたゲームメーカーです。また、開発拠点は成都支社が担っているとのこと。
日本国内でリリースしているゲームとしては、戦略シミュレーションRPGの「三國クロスサーガ ~蒼天の絆~」やファンタジーMMORPGの「ドラゴンベイン」、戦略シミュレーションの「雄覇天地」など。「雄覇天地」は、明らかに中国メーカーが付けそうなゲームタイトルですが、同社としては日本市場でリリース際に完全日本語化はもちろん、中華色を控えめにして日本のテイストに合わせるといった国ごとのカルチャライズ調整に気を使っているそうです。
同社では日本市場を調査・定義するにあたり、App Annieのデータと自社の資産や経験などを加味してPDCAを進め、リリースするゲームの検討などに活用しています。
2014年から2015年にかけて日本の動きは、App Store、Google Playとも過去1年からほぼ横ばいで推移しているとのこと。同社では今後、楽天やAmazon、DMM、ドコモなどが独自で構築しているアプリマーケットへの参入も視野に入れて注目しているとのこと。
具体的なゲーム名や企業名は明らかにされていないものの、やはりIP(既存キャラクターなどの知的財産)を利用したゲームの伸びが顕著だそうです。とはいえ、すべてがうまく売上を伸ばしているわけではなく、IPによっては苦戦しているものもあります。Non IPのゲームについては、2014年と2015年で違いはほぼありません。IPを使えば日本市場への新規参入→ヒット作の可能性は高まるものの、リリースされたタイトルのランキング推移を時系列に詳しく見ていけば、そう簡単ではないことがわかりますね。
今回の発表は分析手法やマーケッター向けの内容が多いものの、同社が分析した日本市場への参入余地をジャンル別にみると、やはり女性向けアプリに注目せざるを得ないことがわかります。ほかのデータと同様に、RPGの売上シェアが伸びているのは明らかですが、2015年に特徴的な傾向として女性をターゲットにしたアプリのシェアが急速に高まっています。
日本ではほかの国と比べ、それぞれのジャンルは一定の推移で成長してそのあとは横ばいとなっています。人気ジャンルであるRPGに注目してサブジャンルまで詳しく見てみると、参入余地があることがわかりますね。こういった調査を定期的に実施することで多くのことがわかるそうです。また、現在のホワイトベースとなっているのは、VR(バーチャルリアリティー)、ツクール系、MODサポート系など。売上シェアの最も高いRPGのサブジャンルでもVR系は空白地帯となっているので、これから付け入る隙があるようです。
そのほか、各カテゴリーのランキングなどを独自の計算式でスコア化して分析する手法など、特にApp Annieのデータと独自のノウハウを組み合わせた分析手法についての解説がありました。
まとめとして久田氏は、「精度の高い、信頼のおけるマーケティングを実践するには、ユーザー体験や経験値が最も重要な要素であり、これらを踏まえてPDCAを繰り返している」とのこと。日本のアプリ市場は、上位にランクインするアプリの顔ぶれを見ても世界的にはかなり特殊。中国でヒットしたゲームを単純にローカライズしてもヒットすることは少ないでしょう。また、今後も日本のユーザーの嗜好やゲーム体験を取り入れたカルチャライズの調整が必須になると思われます。
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