みなさん、こんにちは。アスキー編集部(週刊アスキー+ASCII.jp)の吉田ヒロでございます。さて、ワタクシは11月10日に、モバイルアプリの調査会社であるApp Annieが主催するイベント「DECODE TOKYO」に参加してきましたよ。
App Annieは、世界最大規模のモバイルアプリの調査会社で、世界各国のアプリランキングや収益などの情報を提供しています。
台湾市場に注目、世界戦略を考えるには多角化も検討すべき
まず、App Annieの日本代表である滝澤琢人氏が登壇し、最近のゲームアプリの動向やアプリの世界戦略についてのレポートを公開してくれました。
スマホアプリ市場は拡大を続けており、端末は20億台、収益は240億ドルという状態で、App Annieでは760万本以上のアプリを追跡調査しているとのこと。
2014年9月からの1年間でアプリ市場が拡大している地域としてはラテンアメリカの勢いが増しており、2015年9月では東南アジアとほぼ同じ市場規模になっているそうです。
世界全体で見ると、App Store、Google Playとも日本がトップ、米国が2位という状態は変わらず、中国、韓国の市場の成長も拡大しています。App Annieとしていま最も注目しているのが1年前と比べて3ランクアップしている台湾市場とのこと。
また、国や地域によっては季節要因によってアプリの売上が変化するそうです。インドでは12月に、カジノカテゴリーに分類されるアプリがGoogle Playのゲーム収益で70%を超えるとのこと。これはインド国内で○○が開催されることによる影響とのこと。
滝澤氏は次に、アプリのセッション数とセッション時間による、ダウンロード数の分布についてのデータを公開。セッション数(起動回数)が多いアプリは、リリースからなだらかな上昇カーブを描き、なだらかに下降していくことがわかります。一方、セッション時間(1回のプレイ時間)が長いアプリは、リリース後に急激な上昇カーブを描きますが、短期間がダウンロード数が下降することがわかります。セッション数が少ない、セッション時間が短いアプリは、上昇、下降のカーブがより顕著です。
ゲームのジャンル別のダウンロード推移では、RPG、カジュアル、ストラテジー、レース、カジノの順で上昇カーブが急激です。カジノジャンルは、リリース後も息が長いことがわかります。
また、ゲームの世界展開を考えるうえで重要なのが「ソフトローンチ」であると滝澤氏。ソフトローンチとは、全世界でリリースする前に、特定の国や地域で先行リリースしてユーザーの反応を見ること、いわゆるテストマーケティングです。
第1フェーズとしては、世界で普及しているAndroid端末向けのアプリを、フィリピン、ルーマニア、マレーシア、ブルガリアなどのCPI(Cost Per Install、アプリをインストールするまでのコスト)が非常に低い国でローンチして、稼働テストを実施します。第2フェーズでは、iOS用アプリも加えてオーストラリア、シンガポール、カナダ、香港などのLTV(Lifetime Value、顧客生涯価値)が比較対象となり得る国や地域でリリースするのがお勧めとのこと。
ソフトローンチにかかる費用は、第1フェースで最大5000ドル、第2フェーズで1万〜5万ドルとのこと。このとき、ユーザーを獲得するチャンネルも考慮する必要があり、第1フェーズではAppiaなどのゲームプラットフォームが中心、第2フェーズではFacebookなどのSNSの活用などが重要になってきます。
モバイルアプリの収益については、広告とフリーミアムが同程度の規模で成長しているとのこと。一方で、有料アプリや有料アプリ+アドオンを採用するアプリの規模は縮小傾向にあるようです。
とはいえ、マネタイズ戦略は国別に考慮する必要があります。App Annieが示したデータによると、日本やロシアなどはアプリストアでの売上、つまり、App StoreやGoogle Playでの有料アプリもしくはアプリ内課金の収益比率が高くなっています。一方、インドや英国、米国では真逆で、収益の多くを占めるのがアプリ内広告です。
ダウンロードあたりの収益を見ると、ジャンルに特化したほうが圧倒的な強さがありますが、多角化によって収益を上げる例もあります。
例えばGAMEVILという会社は、スポーツのジャンルに強いCom2Usを買収したことで、自社が得意としていたRPGを加えたジャンルの多角化に成功し、韓国のアプリ市場で成功を収めたそうです。米国では、Com2Us開発のサマナーズウォーとゴルフスターという2つのアプリが成功しており、GAMEVIL全体の収益で無視できない収益になっているそうです。日本では市場が巨大なだけに海外展開が進んでいないアプリが多いですが、同じ会社の大ヒット作の次がなかなか育たないという現状もあります。GAMEVILのように買収による多角化によって収益基盤を強化するという手法は今後は増えてくるかもしれませんね。
滝澤氏によると、「ゲームアプリ成功のための5つのポイント」としては、成長市場の見極め、トレンド把握、段階的ローンチ、マネタイズの多角化、持続的成長へのポートフォリオ選択が重要であるとのこと。
日本市場については成熟した市場であるため、今後はメディアミックスやパートナーシップの促進やブランディングなどが重要になってくるそうです。
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