ソフトバンクグループは11月4日、2016年3月期第2四半期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比10%増の4兆4238億200万円、営業利益は同21.4%増の6857億6600万円で増収増益。純利益は純減となったが、これは前年の一時益があったためで、業績は「順調に伸びている」と孫正義社長は強調する。好調な業績の中で「唯一残っている課題はSprint」(孫社長)だが、これも解決の道筋が見えたとして業績反転に自信を見せている。
主な指標では、純利益が同23.9%減の4266億8300万円、EBITDAは同22%増の1兆3160億4800万円だった。前年には中国のアリババが米国で上場したことで一時益が生じており、そのぶん純利益はマイナス成長となったが、全体では順調な業績をアピールする。
主力の国内通信事業は、売上高が同5.6%増の1兆5039億6400万円、営業利益は同5.9%増の4246億8400万円だった。スマートフォンの増加による端末売上の増加に加え、「SoftBank 光」サービスの開始でブロードバンドサービスの売上が増加したことが寄与した。同サービスは契約数を毎月積み重ね、累計では71万契約に達した。PHS契約数は減少したが、コンテンツサービスの拡大などがそれをカバーした。
携帯電話契約数は5万9000増の3160万4000件。これまで「純増ナンバー1という数にこだわってきた」(同)ため、「みまもりケータイ」やデジタルフォトフレームなどを多く販売して契約数を積み重ねていたが、「利益としての貢献は少なかった」(同)。現在は純増数ではなく各回線からの利益にこだわる方針で、純増数が少ないことは問題ないという認識だ。
音声とデータを合わせたARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は4190円で、前年同期比40円のマイナスとなった。新料金プラン「スマ放題」の契約増で通信料収入が減少し、SoftBank光との割引「スマート値引き」の契約増加も収入減少に繋がった。スマ放題の減収傾向は縮小しており、さらにコンテンツなどのサービスARPUが同60円増の540円となったことで、全体では10円増の4720円となった。
端末販売数は前年同期比19万3000台減の466万5000台。スマートフォン販売数は増加したものの、従来型の携帯電話販売数の減少などが影響した。解約率は0.02ポイント改善したが、1.28%で高止まりしている。MNPによる顧客獲得競争の激化でスマートフォンの解約率は悪化しているという。
設備投資は、ネットワークが「日本全国、接続率ナンバー1」(同)になって一巡したとの考えで順次削減する。それに伴ってフリーキャッシュフローが増加しており、今上期では1804億円に達した。「経営が日に日に良くなっていく」と孫社長は自信を見せる。
ヤフー事業は、売上高が同23.1%増の2487億6800万円、営業利益は同62.6%増の1508億9500万円。アスクルを子会社化したことによる一時益で大幅に増益となったが、特にスマートフォン向けのディスプレイ広告の単価が増加したことで広告収入自体も増加しており、順調な成長としている。
懸案の米Sprint事業は、売上高は同9.1%増の1兆9461億7800万円、営業利益は同26%増の813億8500万円だった。売上高は米ドルベースで同7.4%減だったが、円ベースではプラス成長となり、営業費用の減少などで利益のプラス幅が拡大した。
Sprintではこれまで収益性の低いプリペイド契約が多かったが、新体制になって以降は「収益の9割」(同)となるポストペイド契約を拡大。特に「優良顧客の新規獲得」を重視したことで、純増数以上に「(業績の)中身はもっと良くなっている」と孫社長は胸を張る。
全体の純増数は173万1000件増で累計5786万8000件。プリペイド契約が72万9000件減少したが、主に通信モジュールとなるホールセール契約で159万7000件増、ポストペイド契約で86万3000件増となった。ポストペイドでは第2四半期だけで55万3000件の増加となり、対前年比でプラスとなったのは米携帯4社の中では唯一だとしている。ポストペイドのうち、スマートフォンを含む携帯電話の契約数は23万7000件の純増で、9四半期ぶりに純増に転じた。
そのほかの指標も改善傾向にあり、さらに「反転攻勢させる設計図が見えた」と孫社長。その3つの戦略として、OPEX削減、ネットワーク改善、資金調達の多様化を上げる。
OPEX削減では、すでに15億ドル規模のコスト削減が実現できる見込みで、来年以降はさらに20億ドル規模の削減を図る。こうした削減は恒常的に継続できる見込みで、そのための費用として10~12億ドルを計上して一気にコストを削減する。
ネットワーク改善では、「繋がらない、遅い。最悪だった」(同)というSprintのネットワークのために「毎晩のようにネットワークの会議をやっている」という孫社長。その結果、「全米でナンバー1のネットワークが作れる自信が出てきた」(同)。「必ずSprintのネットワークは著しく良くなる」と強調する孫社長は、「全米で一番にならなかったら孫正義のせいだと思っていただいて構わない」とまで語り、2年後にはユーザーから「相当良くなった」と思ってもらえるようにしたい、という。
資金調達の多様化では、端末のリース会社を設立。メーカーから一括で納入した端末を割賦販売で代金回収しているため、リース会社を経由することで手元資金を確保。こうした取り組みによって「解決の道筋は見えた」(同)としている。
そのほか、ゲーム事業、海外の投資案件は順調に進捗。特に元Google幹部のニケシュ・アローラ氏を次期後継者として招き入れたことで海外投資が加速。今後もさらに拡大していく考えだ。
国内では、安倍晋三首相の一声で総務省による携帯料金に関する会合が実施されているが、孫社長は自ら「携帯料金が高すぎるという一部の指摘がある」と言及。日米で携帯事業に取り組んでいることから、「日本のネットワークは遙かに進んでいる」と指摘。世界でも「日本が最も進んだ通信環境にある」(同)にも関わらず、米国よりも安く、欧州と比べても「何倍もいいネットワーク」(同)で同程度の価格と強調する。
携帯料金自体は「一人あたりの料金は安くなっている」(同)が、利用者が増えたことで家計費に占める割合については「もしかしたら別の見方があるかもしれない」と孫社長。また、「iPhoneが世界で一番安く売られている」のが日本であり、そうしたメリットも考慮する必要があると話す。
自由競争を重視し、これまでは総務省との対決姿勢を鮮明にしていた孫社長だが、今回は「オトナになった孫正義と言うことで、真摯に受け止める」と冷静な発言。「もっと安い方がいいという声があるのも認識しているので、より安いメニューも用意していきたい」としており、高度なサービスを求めるユーザー、サービスを求めるユーザーといったように、ニーズに応じたメニューを検討していく考え。
また、契約数が減りさらなる縮小が予想されるPHS事業に関して、「時代がPHSからスマートフォンに移っているのは事実」(同)としつつ、PHSを好むユーザーがいるほか、M2MでPHSが使われていることから、「需要があるところはしっかりとサービスを続けなければならない」(同)。ただし、「何ごとも終わりはあるので、検討は続けている」(同)とのことだ。
訂正とお詫び:初出時、人名に一部誤りがございましたので、訂正いたします。(2015年11月06日)
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