「APMプログラム」という発明
メイヤーの目には、ローゼンバーグは本業のほうでも成果を上げられずにいた。ローゼンバーグにはグーグルが計画しているすべてのプロジェクトを統率するプロダクトマネジャーを雇用することが求められていた。
ローゼンバーグは外に目を向け、ハーバード大学やスタンフォード大学のMBA課程を卒業した優秀な人材を連れてくる。彼らをペイジに披露するが、ペイジが首を縦にふらない。そうしたことが繰り返された。
写真:Stanford University, Kazuhisa OTSUBO
しびれを切らしたメイヤーはローゼンバーグに助け船を出した。
MBAをプロダクトマネジャーにするのをやめ、ビジネスに強い関心をもつコンピュータサイエンスの卒業生を見つけたほうがいい、と彼女は助言した。そして付け加えた。私のような人間がグーグルでうまくやっていけるの。ラリーも、同じようなタイプの人間よ。
彼女はローゼンバーグに、スタンフォード大学のコンピュータサイエンス授業のことを話し、そこではそのコースを終えたばかりの学生がアシスタント教師として次学期からの授業を受け持つことを説明した。同じくグーグルも、学校を出たばかりの人々を雇用するキャンペーンを始めたほうがいい。そうすることで、インターネットやテクノロジー、あるいはビジネスに対する会社の上級管理者たちの考えを、もっと〝グーグルっぽく〟することができる。
そうして雇い入れた人々を「アシスタント・プロダクトマネジャー」とでも呼べばいいと彼女は考えた。
メイヤーがペイジと親しい関係にあることを、ローゼンバーグは知っていた。ペイジのことを彼女ほど理解している人物はほかにいない。彼女のアイデアなら、ボスも納得するだろう。
ローゼンバーグは言った。わかった、そうしよう。君がそのキャンペーンを担当してくれ。
彼女は自分の考えを実行に移した。
数カ月後、メイヤーは最初のアシスタント・プロダクトマネジャー、通称APMを雇用した。スタンフォード大学を卒業したブライアン・ラコフスキだ。メイヤーは彼をグーグルの極秘プロジェクトに投入した。ウェブベースの電子メール製品、〝Gメール〟の開発だ。このプロジェクトにはすでにたくさんのエンジニアがかかわっていた。そこに突然二二歳の若造が〝上司みたいなもの〟としてやってくるのだ。開発メンバーが腹を立てても不思議ではない。
そこで、メイヤーはラコフスキに言った。偉そうにしてはだめ。あなたは彼らのボスじゃないの。彼らはみんな経験が豊か。あなたが望むことを彼らにしてもらうには、十分なデータを見せて、なぜそうする必要があるのか納得してもらうしかないわ。結果、ラコフスキとエンジニアチームは打ち解けた。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります