サービスに注力、そしてブラジル発のアイデアも
ここで特徴的なのは、デジタルサイネージを制御するデジタルメディアセンター(DMC)システムを、ブラジル現地において、AVCネットワーク社と共同開発。こうした取り組みは、初めてブラジル発のシステム開発を実現するといったことにもつながっている。
DMCは、大型LED映像装置との連携も可能であるほか、ライブ映像の配信機能、サイネージ配信機能、一括制御機能を持ち、これらをコントロールルームから操作できる。
たとえば、スタジアム内に設置されたすべてのディスプレイの電源のオン、オフの操作を、コントロールルームから一括で行えるほか、廊下やVIPルームに配置されたデジタルサイネージには、試合開始前やハータフイムに、広告などのコンテンツをDMSサーバーから配信。試合中は試合の経過を表示し、選手交代情報などを表示することで、トイレや物品の購入のために席を離れた人にもリアルタイムの情報を提供する。
そして、ユニークなのは、デジタルサイネージに、コンシューマ向けテレビの「VIERA」をそのまま利用しているという点だ。
「耐久性や輝度、制御能力などにおいては、明らかにデジタルサイネージ用ディスプレイの方が優れている。だが、アレーナ ダ バイシャーダでは、投資費用を抑えながら、多くのディスプレイを導入したいという意向があった。また、同スタジアムの要求にあわせると、制御部分などにおいて、デジタルサイネージ用ディスプレイがオーバースペックになるという背景もあった。
ディスプレイの設置場所が、VIPルームや廊下部分など、雨や風、光が直接当たる部分ではなかったこと、また、耐久性は半分となるが、ディスプレイが壊れた場合には、本体を取り替えるという考え方を前提としたことも、コンシューマ向けテレビを採用した理由のひとつ。
コンシューマ用のテレビを利用することで、一般的なデジタルサイネージシステムに比べて、システム全体を低価格で提供することができ、新たなインドアサイネージソリューションを実現した」(パナソニックブラジル P&Dコンサルタントの竹村将志氏)
ライブ配信機能は日本で開発したものの、制御部分やGUIは、パナソニックが、ブラジルにおいて自ら開発。ローカルでカスタマイズできる基本設計により、柔軟性を維持しながら、低価格で導入することにつながった。
また、ブラジルの場合、海外から輸入製品に対する関税が高く、デジタルサイネージ用ディスプレイは全量が輸入品となるため、さらに価格が上昇するという要素があった。だが、コンシューマ向けの液晶テレビの場合には、パナソニックが持つブラジルのマナウス工場で生産しており、関税の影響を最小化できる。ここにも価格を引き下げて導入できる理由がある。
同等規模のデジタルサイネージシステムと比べて、3~4割も低価格化できるという。パナソニックにとって、ブラジルで通用するスペックの提案、ブラジルで求められる価格で導入できる仕組みが整ったともいえよう。
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