2019年05月07日06時00分

技術を守り、広めるため 大学発ベンチャーの知財対策

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 東北大学スタートアップガレージは3月7日、スタートアップや投資家向けの交流イベント『TUSG Gathering「スタートアップと知財戦略」』をT-Biz東北大学連携ビジネスインキュベータT-Bizで開催した。

 本イベントは、学生や起業家、大学関係者、投資家を対象に、知財に対する理解とネットワーキングを目的としたもの。セッションの第1部は、特許庁 総務部企画調査課 企画班長(スタートアップ支援チーム)菊地陽一氏による講演、第2部は、菊地氏、ボールウェーブ株式会社 取締役製造・技術部長 竹田宣生氏、株式会社JDSound 代表取締役 宮崎晃一郎氏、株式会社ZAICO 代表取締役 田村壽英氏の4名によるパネルディスカッションを実施した。モデレーターはASCII STARTUPの鈴木が務めた。

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特許庁 総務部企画調査課 企画班長(スタートアップ支援チーム)菊地陽一氏

 第1部の菊地氏による講演「スタートアップと知財戦略」では、スタートアップが抱えている知財に関する課題、スタートアップが最低限やっておくべき知財戦略を解説し、それらを支援する特許庁のスタートアップ施策を紹介した。

知財は、大企業との協業や資金調達にも必須のツール

 信用や資金、設備などのないスタートアップにとって、破壊的な技術やアイデア、行動力だけが強み。つまり技術系スタートアップにとって、企業価値≒知的財産といえる。これは米国ではすでに常識だが、日本のスタートアップは知財意識がまだまだ低いのが現状だ。

 新しい技術やプロダクトのブランドを自分のものだと証明するには、特許が必要だ。一般的に特許というと「独占」のイメージが強いが、「連携」や「信用」を生むツールにもなる。

 「独占」とは、自分のものだと証明すること。権利を侵害されたら訴訟を起こすことができるし、競合の参入障壁にもなる。新しい技術やアイデアでも、真似されてしまうと体力勝負になってしまう。資金力のないスタートアップにとって、知財が競合との差別化や参入障壁のためのツールになる。

 「連携」は、大企業との協業、同業種へのライセンス提供など、知財がアライアンスを組むためのツールになる。

 スタートアップにとって最も重要なのは「信用」だ。特許を取っていることで信用の裏付けになり、資金調達やM&Aの評価に威力を発揮する。ブランドの確立や宣伝効果も期待でき、スタートアップにとって知財は必須のツールであり、持っておくと何かと役に立つ。

スタートアップが最低限やっておきたい2つのこと

 とはいえ、やみくもに出願して特許を取ればいいわけではない。特許の取得や維持にはお金もかかるうえ、特許を取得することで技術情報が公開されるというデメリットもあるからだ。そこで、知財戦略が必要になる。

 知財戦略の例としては、1)参入障壁として使う、2)他社から侵害されたときに暴きやすいものはしっかり権利化し、暴くことが困難なものに関しては秘匿化する、3)戦略的なパテントマップをつくり、競合他社と自社の関係を把握する、といった使い方がある。

 スタートアップの知財に関するもうひとつの課題は、スタートアップに通じた知財専門家に出会えないことだ。スタートアップの多くは、相談する相手がおらず、知財に関心を持っても、何をすればいいのかわからないというのが実情ではなかろうか。そこで、スタートアップが最低限考えておきたいこととして、以下の2つを提案した。

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起業や事業を考え始めたときには、まず商標をチェック!

 1つは、会社名・商品名を決めるときには、「商標」を調べて、他社の権利を踏んでいないかどうかを確認して、商標権を登録しておくこと。

 2つ目は、技術系のコア技術をどうやって守るかの方針を決めておくこと。ブラックボックスにして隠すか、特許出願するか。出願する場合、その権利をどう使うのか、海外展開する場合はどの国で権利を取るか。大学の場合は、単独/共同出願か、などを考える必要があるだろう。

特許庁の5つのスタートアップ施策

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知財コンテンツ、IPAS、スーパー早期審査、特許料の減免、ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)の5つの支援策を提供

 特許庁では、スタートアップを支援するため、5つの施策を行なっている。1つは知財コンテンツの提供。国内10社、海外8社の事例を収録した「一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集」、大・中企業との協業する際の知財の取り扱いを紹介した「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集“IP Open Innovation”」、知財が必要になるケースをまとめた「知的財産デュー・デリジェンスの標準手順書 “SKIPDD”」「知的財産デュー・デリジェンス 標準手順書」の3つのコンテンツをセミナーやイベント等で配布している。

 2つ目は、知財アクセラレーションプログラム(IPAS)。知財とビジネスの専門家で構成する知財メンタリングチームをスタートアップへ3ヵ月派遣し、出口を見据えた知財戦略構築を支援している。2019年度は15社程度を採択する予定だ。4月に公募が始まるので、興味のあるスタートアップは要チェックだ。

 3つめは、スタートアップ向けの「スーパー早期審査」の実施。通常1次審査の結果が出るまで9.3ヵ月かかるところ、スーパー早期審査では、1ヵ月以内で結果がわかり、最短2.5ヵ月で権利化が可能だ。4つ目は、特許費用の減免。審査請求料や特許料のほか、調査などの手数料まで、すべての費用が3分の1に減免される。

 5つ目は、知財を活用した海外展開を支援する「ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)」。海外のアクセラレーターと連携し、国内のブートキャンプ、現地メンターによるメンタリング、現地イベントの出展を提供するものだ。2018年度は、シリコンバレー、深セン、ベルリン、ASEAN(インドネシア・タイ・マレーシア)で実施。

 特許庁では、スタートアップ向けの知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」を開設。知財戦略に関する基礎知識や支援策の最新情報を公開しているので、ぜひ参考にしてほしい。

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