2012年03月10日08時00分

災害対策、復興支援、雇用対策も――1年を振り返り、ドコモ東北の復旧への取り組みを説明

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 震災発生から1年が経とうとしている3月9日に、NTTドコモは宮城県・仙台にある同社の東北支社で記者会見を開催した。ドコモは2月23日に東京で災害対策を発表しているが、今回はあらためてその取り組みを説明するとともに、東北地域に特化した状況を解説。

 また、昨年12月1日には東北復興新生支援室を立ち上げており、その活動内容も報告した。会見にはドコモの代表取締役社長、山田隆持氏のほか、東北支社長の荒木裕二氏、復興支援室長の眞藤務氏が登壇している。

ドコモ災害対策会見 ドコモ災害対策会見
↑NTTドコモ東北支社。屋上には大ゾーン用の基地局も設置されている。 ↑NTTドコモ、代表取締役社長、山田隆持氏。
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↑東北支社長、荒木裕二氏。 ↑復興支援室長、眞藤務氏。

 会見では、まず荒木氏が「あの瞬間から世界が変わった」と述べ、当時の厳しい状況を振り返った。

 ドコモの東北支社管内には約1万1000の基地局が設置されているが、翌日までには約4900が通信不能になってしまったという。基地局そのものが倒壊してしまったところがあったほか、伝送路の切断や、バッテリー切れが不通の主な要因だ。この状況から、ドコモは復旧に全力をあげ「4月30日の時点で、99パーセント以上のエリアを回復できた」(荒木氏)という。

 福島原発のエリアについても、5月31日時点で51局を回復できた。昨年9月末には復旧はほぼ完全に完了しており、基地局が水没や倒壊してしまった場所に関しては「今後の復興計画に合わせて作業を実施していく」(同氏)という方針だ。

ドコモ災害対策会見 ドコモ災害対策会見
↑東日本大震災によるサービスエリアの被害状況と復旧状況。 ↑設備の復旧状況。

 山田氏が「安心、安全というのが通信がきちんとできること、携帯電話つながっていることだと強く思った」と熱を込めて語るように、ドコモは震災を教訓にして、1年間で数々の対応策を講じていく。

 ひとつ目の対策が、大ゾーン基地局の導入だ。通常より広いエリアをカバーできる基地局を山上やビルの屋上に設置し、災害発生時に最低限の通信を確保できるようにした。基地局は全国で104ヵ所、東北地方に関しては12ヵ所となり、ドコモ東北支社の屋上にも置かれている。

 震災時に電源が切断され地震や津波の直接的な被害を受けなかった基地局が止まってしまった反省を生かし、バッテリーの24時間化も推進。24時間の基準は「災害が起こってから24時間以内の情報伝達がいちばん重要。24時間もてば、バッテリーの給電にもいける」(山田氏)という理由があるからだ。エンジンによる無停電化基地局も含めると、東北では240局の対策が完了しているという。

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↑大ゾーン基地局を導入し、緊急時の通信経路確保に努める。 ↑東北地方に設置された12の大ゾーン基地局。 ↑基地局のバッテリー延長施策も実施した。

 さらに、衛星携帯電話を3000台そろえ、避難所にもっていく方針だ。

「ひとつの避難所に4台から5台を無条件で設置したい」(同氏)といい、こちらについては現時点で1000台を備蓄している。目標を大きく下回っているのは「各自治体から導入の引き合いが多く、そこを優先しているため」(同氏)。自治体ユーザーの需要が落ち着いたのちに、残り2000台を完備していく。

 設備面では、このほかにも衛星エントランスやマイクロエントランスという電波を中継する仕組みを充実させている。

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↑貸し出し用の衛星携帯電話も充実させていく。 ↑電波を中継する衛星エントランスやマクロエントランスという仕組みも拡充した。

 また、ドコモは災害時に必要となるサービスを拡充した。3月1日には『災害用音声お届けサービス』の提供を開始。音声通話が輻輳している際に声をデータ回線で送るためのサービスで、スマートフォン用のアプリは「昨日時点までに60万程度ダウンロードしてもらえた」(同氏)という。提供から8日ほどだが、「興味をもっていただけた」(同氏)と手ごたえは十分だ。

 復旧マップの詳細化を図ったり、自治体がエリアメールを利用する際の料金を無料にしたりといった対応も、震災後に行なわれた。災害用伝言板は音声ガイダンスが実装され、グーグルのパーソンファインダーとも連携している。

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↑『災害用音声お届けサービス』を開始。ダウンロード数も順調に伸びている。 ↑グーグルのパーソンファインダーと災害用伝言板を連携。Twitterも活用していく。
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↑ひと目でわかる復旧エリアマップを作成、公開している。 ↑無料化後、エリアメールを活用する自治体は増えているという。なかでも東北の比率は高い。

 こうした災害対策を行なったうえで、復興新生支援室の取り組みが始まった。「単なる復旧ではなく、新しい街をつくるためのご支援をしたい」(眞藤氏)という思いを込め、コミュニティー支援、防災・街づくり、産業振興の3分野でさまざまな活動を行なっている。

 会見では、フォトパネルを活用した避難世帯に対する行政情報の配信事例を紹介。福島県双葉町から全国各地に避難した住民に対して自治体経由でフォトパネルを配布し、各種行政情報を“おたよりフォトサイト”という仕組みで端末上に流している。復興新生支援室の設置からまだそれほど時間は経っていないが、「既存のサービスがあったのでそれを応用することができ、2ヵ月で導入できた」(同氏)という。

 今後は「タブレットを活用した双方向のコミュニティー支援も考えている」(同氏)そうだ。タブレットは、子供たちへの教育にも生かされている。教育NPOとも協力し、子供たちにタブレットを貸与。防災・街づくりの授業を実施した。眞藤氏は「大船渡小学校は神奈川県の小学校とテレビ電話を通じてやり取りしたが、子供たちが喜んでいたのが印象的だった」といい、児童からの評判も上々だったようだ。

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↑フォトパネルを活用し、避難世帯に行政の情報を配信。コミュニティーのつながりをITで支援する。 ↑NPOと協力し、被災地の小学校でタブレットを活用した授業を行なった。

 ドコモ東北支社では、同日マスプロ電工から発表があった、エリアワンセグの実証実験も行なわれていた。自治体が送ったエリアメールとワンセグを連携させる取り組みで、災害関連の速報を受けたあと、詳細な情報を映像で見るといったことが可能になる。

 ここには、「メールだと文字だけだが、その気づきで映像を見れば、どんな状況になっているのかがひと目でわかる」(同氏)というメリットがある。エリアワンセグの電波を飛ばせる範囲は狭いが、避難勧告を出すべき地域に効率よく情報を配信すれば、防災効果を高めることができそうだ。

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↑エリアメールとエリアワンセグを連動させるソリューション。設定不要で地域を限定した防災情報などの映像を見られる。 ↑エリアワンセグの電波は、このアンテナから送信する。

 これらの復興支援に加え、被災地の雇用対策として山田社長は仙台市内に新たなコールセンターを設置すると発表。7月に開設、年内の運用開始を目指しており、スマートフォンの操作に対する問い合わせを受けることが主な業務内容で、約150名を受け入れる。既存の仙台コールセンターと合わせると430名体制になる。スマートフォンの増加に伴い、今後は「少なくとも現状の数の2倍、3倍になっていく」(山田氏)といい、仙台を東京、大阪と並ぶコールセンターの拠点にしていく構えだ。

「安心、安全の確保は非常に重要。新たな災害対策にもまい進していきたい。東北の1日も早い新生のお役にも立ちたい」と、自身の思いを語る山田氏。震災直後から被災地に通い、この会見の前後にも、陸前高田や釜石、福島などの状況をあらためて視察しているという。こうしたトップの姿勢からも、ドコモの災害対策、復興支援に対する“本気”が伝わってきた。

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↑会見後には、東北支社の“災害対策室”も公開された。 ↑荒木支社長らは震災発生直後、この部屋に集まり本社と連絡を取りつつエリアの復旧を指揮した。 ↑基地局や伝送路の状況を中央のモニターで監視。何か異常が発生すると即座に表示され、スタッフが対応にあたる。

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