2012年01月07日17時00分

アスキー総研 遠藤諭が語る! 9年間の“パソコン甲子園”で何が変わったか

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 毎年秋、福島県の会津若松では、高校生向けのITコンテスト“パソコン甲子園”の全国大会が開かれている(予選は夏休みころ)。昨年の大会で第9回目を数え、過去最高となる551チーム、1694名が応募。予選を突破した精鋭が集まって、その才能をぶつけ合った。

 9年という歴史の間に、パソコンを使って何かを表現することが好きな高校生はどう変わってきたのだろうか? 月刊アスキー編集長としてパソコン業界を長く見つめてきて、第1回よりこのコンテストの審査員も務めるアスキー総合研究所所長の遠藤諭に話を聞いた。新年、気持ちも新たに「プログラミングなんかに目覚めちゃったりしたら、ちょっとカッコイイかも!?」なんて考えてる中高生諸君! 必見ですよ。

パソコン甲子園2011

■プログラミングの才能は若くして花開くもの

── 9年もの月日が経つと、高校生も大きく変わってそうな印象ですが、実際のところはどうでしょう?

遠藤 多分、高校生自身は昔から変わってないんだけど、彼ら、彼女らを取り巻く環境が激変したから、自ずと刺激を受けてモチベーションも作品のグレードも上がりますよね。パソコン甲子園でも9年前と比べると、作品の水準がはっきりと上がっている。

 プログラミング部門は特にそうですね。パソコン甲子園が始まった当初、“ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト”とか、
大学生向けの大会は日本でもある程度知られていたわけだけど、高校生向けのはなかったといっていい。

 9年前といえば、2003年なわけです。そのころはネットもあったけど、家庭のネット普及率もそこまで高くなかった。ヤフーがADSLのYahoo!BBを始めたのが2001年ですし。そのころ、月刊アスキーに載せたインタビューで、ヤフーの井上社長が「ブロードバンドとナローバンドは逆転しますか?」という質問に対して、「逆転するかもしれない」と答えていた。

── 「かもしれない」!

遠藤 そういう会話がヤフーの社長と交わされるぐらいの普及率だったんです。その時期に始まったコンテストだから、そもそもリテラシーの高い学校しか来てなかったんですよ。もちろんコンピューターやクリエイティブの分野に力を入れていた学校もあったけど、冒頭でいったように今とは取り巻く環境が全然違う。

── プログラミング部門でいうと、出場者はどう変わっています?


遠藤 いいか悪いかは別として、今のパソコン甲子園に来てる子は、優等生が増えてますよね。もっと昔の80年代ころは、パソコンをもってない子供がショップに通ってプログラムを組んだりとか、そういう草の根的な感じだった。ある種、悪ガキの世界です。そういうことが、ここ2、30年ぐらいのパソコンの世界で大きく変わってきたわけです。

 で、今は“デジタルデバイド”ということが言われるけど、これはデジタルを使える人と使えない人の間に断絶が起こるという意味ではないんですよね。結果的に、経済格差が生ずるという意味なんです。プログラムを書ける、あるいはわかる奴にはチャンスがめぐってくる。

 アメリカを見ると、コンピューター好きが金持ちになる状況も当たり前にある。たとえば、少し前ですが、テレビのプライムタイムで『NUMBERS 天才数学者の事件ファイル』というドラマをやって、視聴率もベスト3に入るぐらいに人気を集めた。それは当然で、やっぱりグーグルとかで働くのはスター性を帯びているから。ITがカッコいい、プログラムを組める者がスゴいというのがキてると。

 日本は残念ながらそこまでいってなくて、プログラマーの社会的地位がだいぶ違うんだけど、それでも技術の裏付けがないと最終的には勝てない。1+1を電卓で計算できるより、a+bのaとbの値を入れ替えればいくらでもプログラムが再利用できるということを理解するのが重要。で、音楽でも何でもそうなんですが、プログラミングの能力もやっぱり若くして花開くものなので、そういう意味でもパソコン甲子園はいいイベントですよね。貴重だし、もっと発展してほしいと思う。

パソコン甲子園2011

↑プログラミング部門決勝の様子。

── 今回(2011年大会)のプログラミング部門では、
問題の一部に誤りがあったなどのトラブルがあったと聞きましたが……。

遠藤 プログラミングの審査を担当していないんだけど、これの問題作成というのは非常にたいへんな仕事だと思っています。ある程度は、この種の問題としての一般性が必要であると同時に、オリジナル性も求められるわけでしょう。審査員のひとりだから弁護するわけではないんですが、こうしたことは大学受験でも、(数理科学系の)オリンピックでも起こりえることで、今後そのようなことのないようにしていくしかないんですね。

 パソコン甲子園で一生の付き合いになる友達をつくれるかもしれないし、出場したことが自分の内面的なプライドを支える“心の勲章”にもなると思う。その場に居合わせた体験が、誰にも言わないけれど心のよりどころになるんじゃないでしょうか。

パソコン甲子園2011

■本当に審査が難航したコンテンツ部門

── コンテンツ部門は何か変わりましたか?

遠藤 コンテンツ部門も水準が上がってきていますね。最初は“ウェブブラウザーで再生できる”って条件で募集しているせいもあって、インタラクティブな作品が多かった。それが2005年にYouTube、2006年にニコニコ動画が出てきて、たとえば高校生でもいきなり有名になる、“スーザン・ボイル”みたいな現象が起こりえるようになっているわけですよ。

 ネットから刺激を受けて、つくる側もモチベーションが上がり、それが作品に反映されていると思います。実際、今回出てきた作品を普通にYouTubeに乗っけて、再生数を伸ばすものもあると思いますよ。日本人は、マンガやアニメという圧倒的なコンテンツカルチャーに囲まれているから、そういう高校生が出てきてもいいと世界中は見ているかもしれません。

── 実際、今回は審査が難航されてそうでしたね。

遠藤 今回はいつになく、本当に意見が割れたんですよ。グランプリをとった広島県立福山工業高等学校の“人騒がせなやつ(宇宙人)”は、こんなふうに見せたいという挑戦をかなり盛り込んできた作品だと思う。実際に、仕上がった作品として100パーセントできているかは別としてね。

 僕が印象に残った作品をいうと、審査員特別賞だった女子美術大学付属高等学校の“Reverse Universe”は、達者ですごくセンスがよかった。兵庫県立姫路工業高等学校の“cosmos”は、絵のうまい子が描いたモノクロの線画がデジタルの中でうまく生かされている。沖縄工業高等専門学校の“ミミンガの地球侵略計画(笑)”はCGとしての完成度が高かった。こういった違った要素を評価しなければならないのは、正直、とても難しい部分があるのは事実ですよね。相手が悪かった、審査員のせいだ、プレゼンに失敗した、その日の天候のせいだという話もあるかもしれません。しかし、それでも泣いても笑ってもコンテストでは優勝を決めることにまた価値があるわけです。

パソコン甲子園2011

↑広島県立福山工業高等学校、チーム名・WMの“人騒がせなやつ(宇宙人)”。

パソコン甲子園2011

↑女子美術大学付属高等学校、Double Meaningの“Reverse Universe”。

パソコン甲子園2011

↑兵庫県立姫路工業高等学校、ヒコーキ雲の“cosmos”。

パソコン甲子園2011

↑沖縄工業高等専門学校、big castleの“ミミンガの地球侵略計画(笑)”。

── 選び方が違うという?

遠藤 コンテストだから、人材を見つけるのが目標なんです。これが“どこかのCMに映像を使います”というコンペだったら、グランプリには別の作品を選んだかもしれない。そういう意味で、根性があって、やりたいこともはっきりしていて、それを部分部分で結構やり遂げたという“人騒がせなやつ(宇宙人)”がグランプリに選ばれた
んですね

 
いろいろな部分でチャレンジしていることが見えて、それが、モノを表現していくときには大切だということに結びついた。そういう根性のある人材でないと一歩踏み出した表現までたどりつけないでしょう。最終的には、審査員たちの間で合意の上で決まったのです。全体的には、コンテンツ部門はとてもよい結果となりました。

■モバイル部門は「まだまだこれから」

── 新設されたモバイル部門はどういう印象でしたか?

遠藤 
僕はまだまだだこれからだと思います。クラウドコンピューティングを意識した作品があるとおもしろいかなって思ってたけど、まだほとんどなかったですね。もちろん受賞した学校には秀でた部分があったんですが、まだまだスマホ向けのプログラミングを勉強している人が少ない印象でした。

 逆に言うと、次回はまだ大きなチャンスがあるわけです。アイデアと見せ方、それとプログラミング能力も必要というハードルの高い部門ですよね。でも、スマートフォンは、いまいちばん世界中で注目されているジャンルですからね。本当にいいアプリがつくれたら、自分で売りに出したほうがいいんじゃないかって(笑)。ぜひ2012年に応募していただいて、会津若松で会いましょう。

パソコン甲子園2011

↑モバイル部門決勝の様子。

 ……というわけで、今年2012年は“第10回”という記念すべき年。盛り上がること間違いなしなので、高校生のみなさんは、ぜひパソコン甲子園に応募してみてください!

パソコン甲子園2011

↑昨年は優勝者には30万円の賞金などが贈呈された。今年、この舞台に立つのはアナタかもしれない!?

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