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過去最低にパソコンが売れなかった2023年度、しかし底は打ったか──JEITAの国内PC出荷実績を読み解く

2024年04月23日 11時00分更新

Windows 10サポート終了に伴うリプレース需要に期待

 しかし、2024年度以降は、需要が回復基調に転じるとの見方が大勢を占めている。

 2023年度下期に、前年同期実績を上回った理由としてJEITAでは、コロナ禍のテレワーク需要によって整備されたノートPCが、リプレースのフェーズに動き出したことほか、2025年10月に予定されているWindows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が、法人市場を中心に徐々に顕在化していることをあげている。

 さらに、今後は、GIGA スクール構想第2期による小中学校におけるPCの入れ替えが見込まれており、2025年度および2026年度の2年間で、約1000万台規模の買い替え需要が想定されている。

 また、AI PCの登場による新たな需要喚起にも期待が集まる。

 こうした旺盛な需要が今後見込まれているだけに、今回の2023年度の過去最低の実績に関しても、ネガティブな見方はなく、業界全体で楽観的な姿勢で捉えている。むしろ、今後の需要に対して、安定的な調達体制、供給体制を確立できるかどうかといった前向きな課題に向き合うPCメーカーや販売パートナーが多いのが実態だ。

オフィスに据え置くパソコンは完全に終わるのか

 一方で興味深い動向もいくつか見られる。

 ひとつめは、デスクトップPCの出荷台数が大幅に減少している点だ。

 2023年度の出荷実績を見ると、ノートPCの出荷台数は前年比1.1%減の567万台となっているのに対して、デスクトップPCは2桁減となる前年比13.3%減の101万2000台と、大きく落ち込んでいる。なかでも、オールインワン型デスクトップは、28.6%減の16万台となり、この1年で3割近い減少となっている。

 コロナ禍以降、国内におけるノートPCの出荷比率は上昇傾向にあり、とくに、ノートPCが導入されたGIGAスクール構想が本格化したときには、ノートPCの構成比は90%を超えていたほどだ。その後、オフィスへの回帰とともに、一時的にデスクトップPCの需要が回復し、2021年度第3四半期にはノートPCの構成比は79.8%まで下がっていた。だが、ここにきて、ハイブリッドワークの浸透などによって、持ち運びが可能なノートPCの需要が回復。2023年度実績で84.9%にまで拡大している。

 さらに、2023年度の推移を、より詳細に見てみると、2023年12月にはノートPCの比率は88.1%にまで上昇。2023年度第4四半期も86.1%という高い水準を維持している。

 ここにきて、デスクトップPC離れが進んでいることが浮き彫りになっている。

平均単価の上昇も気にすべき要因

 もうひとつの視点は、平均単価が上昇しているという点だ。

 2023年度の平均単価は、11万4741円となっており、2007年度以来、過去2番目に高い水準となっている。2020年度には、7万3343円と過去2番目に低い水準であったことに比べると、この3年で平均単価が大きく上昇していることがわかる。2020年度と2023年度を比較すると4万1398円も上昇している計算だ。実に1.5倍以上も上昇している。

 その背景には、2020年度は、GIGAスクール構想によるPCの出荷が増加し、補助金の上限に設定された4万5000円以内で購入できるデバイスに需要が集中し、平均単価が下がっていた一方で、2021年度以降は、コロナ禍での部材価格の高騰や、円安を理由にした販売価格の見直しが進み、PCの販売価格が約10~15%上昇したことなどが理由にあげられる。

 2025年度本格化するGIGAスクール構想第2期では、補助金額の上限が5万5000円に引き上げられているが、市場全体の平均単価の押し下げ要因につながるのは確かだ。少なくとも、2024年度までは高い水準の平均単価となりそうだが、2025年度は、再び平均単価が大きく下がることになりそうだ。

 なお、JEITAの国内PC出荷統計は、PCメーカー各社による自主統計となっており、市場全体の約7割をカバーしていると見られる。統計に参加しているのは、アップルジャパン、NECパーソナルコンピュータ、セイコーエプソン、Dynabook、パナソニック コネクト、富士通クライアントコンピューティング、ユニットコム、レノボ・ジャパンの8社であり、日本HPやデル・テクノロジーズなどは統計に参加していない。

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