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【後編】新潟国際アニメーション映画祭プログラムディレクター数土直志氏インタビュー

新潟で「日本基準」のアニメ映画祭が始まった!

2024年03月14日 18時00分更新

「新潟」は枠に収まらない作品を評価する場所

―― では、その評価軸として新潟国際アニメーション映画祭にはどのような部門を作りましたか?

数土 まずは「映画祭の華」と言われる《コンペティション部門》があります。これは世界各国から応募された作品から、選考委員が優秀作を選んでノミネート作品として発表して、映画祭で上映もします。

 ノミネート作品から審査員の審査を経て、監督賞やグランプリなどの各賞が決まり、映画祭で発表するという段取りになります。

―― 選考でノミネート作品を絞り、そこから各賞が発表されるというのは、ほかの映画祭とも共通している段取りなんですね。

数土 はい。でも新潟では、第1回からユニークなことが起こりました。

 審査するうちに、当初想定していた各部門の賞には「収まらない」として、賞の部門を「傾奇賞(かぶく)賞」「境界賞」「奨励賞」に変更したんです。審査委員長の押井守監督が総評で「多様な表現、多様な制作方法で作られていて、同じ審査基準で評価していくことは不可能」と語ってくださいました。

―― いきなり、従来の映画祭と違う基準が出てきましたね。

数土 新潟はこの第1回で「多様な地域が持つ背景と価値観を認めていく」という軸が決まった気がします。2回目の今年は国内外から前回の2倍の応募がありました。ヨーロッパの作品が多いですが、イラン、トルコ、カメルーン、ブラジル、マレーシア、タイ……さまざまな国から49本の長編アニメーション作品が集まったんです。

 49本から12本までノミネート作品を絞り込んだのは選考委員です。多様性と地域性も重視された選考で、選考委員の個性が出たところかもしれません。ほとんどの作品がジャパンプレミアかアジアプレミア以上で、ほかの国際映画祭にも出品されていない作品をお届けできます。

《コンペティション部門》には国内外の12作品がノミネートされた

―― 映画をノミネート作まで絞るのが「選考委員」、そこから賞を選ぶのが「審査員」ということでしたね。

数土 選考委員を審査員クラスの方にお願いしているというのは、なかなか頑張っていると自負しています。審査員も豪華で、今年の審査委員長は世界的に有名なアニメーション監督、ノラ・トゥーミーさんにお願いしています。監督した『ブレットウィナー』と『ブレンダンとケルズの秘密』がアカデミー賞にノミネートされている方です。

コラム:新潟国際アニメーション映画祭の審査員と選考委員

審査員……ノラ・トゥーミー氏(アニメーション作家)、マイケル・フクシマ氏(カナダ国立映画製作庁アニメーション部門担当)、齋藤優一郎氏(『スタジオ地図』代表取締役プロデューサー)
選考委員……藤津亮太氏(アニメ評論家)、須川亜紀子氏(日本アニメーション学会会長)、矢野ほなみ氏(アニメーション作家)、矢田部吉彦氏(東京国際映画祭ディレクター)

富野監督や虚淵玄氏も来る! 玄人向けに閉じないイベント盛り沢山

数土 そしていくつかの特集があります。《世界の潮流》は近年の見るべき作品集・企画・制作中作品のプレゼンテーションです。今年はアジア、女性スタッフ、コマ撮り、新しい制作方法、新潟から世界へ、ワークインプログレスを企画しました。

 そのほか、日本の商業作品をとりあげる特集上映があります。こちらは映画祭ならではのテーマと切り口になります。

 《蕗谷虹児賞、大川博賞》は、近年の作品について技術的貢献に対する賞を設けたものです。《イベント上映》では、「湯浅政明とアニメーションの動き 短編特集」で湯浅政明監督の短編上映とトークショー、それに『犬王』の応援上映も。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の上映では富野由悠季監督と同作のモビルスーツデザインを手掛けた出渕裕さんのトークショーがあります。

 《オールナイト新潟》の今年のテーマは“時代劇アニメ”です。會川昇さんと虚淵玄さんのトークショーもあります。

―― 玄人向けだけでなく、日本のアニメファン人気が高い作品も多く上映されるのですね。

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