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話題のPalworldもフルHDで90fpsに迫る性能!

環境によってはGTX 1650に匹敵!?Ryzen 7 8700G&Ryzen 5 8600Gの実力は脅威

2024年01月29日 23時00分更新

メモリークロックを変えてグラフィックパフォーマンスを検証する

 ここからがテスト後半だ。今回検証用にDDR5-6400モジュールをお借りしたので、メモリークロックによる描画性能への影響も検証する。具体的には定格であるDDR5-5200、Ryzen 7000シリーズのスイートスポットであるDDR5-6000、さらに内蔵GPUへの帯域を重視したDDR5-6400の3通り。さらにDDR5-6400に関してはfclkを手動で2400MHzに設定した際の性能もチェックした。

 ただし、全テストに対してこの条件を通すのは時間的に厳しいため、その他のCPUについては以下の通りの設定とした。Ryzen 7000シリーズに関しては目一杯頑張らせてもこの位だった、程度の感覚でご覧いただきたい。ちなみにRyzen 7000シリーズはfclk2400MHz設定が通らない(特に電圧などの設定はしていない)ため、DDR5-6400のfclkは2000MHzのみとなる。

 さらに、エントリークラスのディスクリートGPUとしてGeForce GTX 1650も準備。これはRyzen 5 7600と組み合わせてRyzen 8000Gシリーズと対決させる。安めのRyzen+安めのGPUの組み合わせをRyzen 8000Gシリーズのパワーが打ち破ることができるのだろうか? という観点でご覧頂きたい。この組み合わせに関してはメモリークロックはDDR5-5200としている。

ここから先の検証では、メモリークロック設定がシリーズにより異なる。Core i7-14700KはDDR5-6400では安定しなかったため、後半はDDR5-6000で運用している

DDR5-6000以上がRyzenを輝かせる

 ゲーム検証の前に「3DMark」を利用して描画性能を評価してみよう。今回はディスクリートのGPUに比べ非力な内蔵GPUであるため、テストは“Night Raid”“Fire Strike”“Time Spy”“Solar Bay”の4本とした。

3DMark:スコアー

 Ryzen 7000シリーズのスコアーを基準にすると、Ryzen 7 8700Gは7700の約2.9倍、Ryzen 5 8600Gは7600の約2.4倍(メモリークロックはどちらもDDR5-6400)。そしてRyzen 8000GシリーズはDDR5-5200運用時よりもDDR5-6000以上で大幅にスコアーが伸びていることが分かる。

 DDR5-6400&fclk 2000MHzよりもDDR5-6400&fclk 2400MHzの方がスコアーは伸びるが、今回の検証環境ではRyzen 5 8600Gの方がfclk 2400MHzの恩恵が高いようだ。ただこの後の検証で明らかになるが、ゲームによってはflck 2400MHzが逆効果になる場合もあるなど、常に強いという訳ではない。

 また、旧世代のRyzen 7 5700GやCore i7-14700Kの内蔵GPUに対してもRyzen 8000Gシリーズは大差をつけた。しかし、スコアーのトップを獲ったのはGTX 1650+Ryzen 7 7700の組み合わせ。GTX 1650クラスを葬り去ると噂されていたRyzen 8000Gシリーズだが、ディスクリートGPUは簡単に倒れそうにない。ただしVulkan RTを利用するSolar Bayだけはレイトレーシング用の回路を持たないGTX 1650は大きくスコアーを落としている。

 ここでシステム全体の消費電力をチェックしておこう。電力の計測にはHWBusters「Powenetics v2」を利用した。アイドル時は3分の平均値を、高負荷時は3DMarkのNight RaidのGraphics Test 2実行中の消費電力を取得している。

システム全体の消費電力。グラフィック描画時の消費電力である点に注意されたい

 Ryzen 8000GシリーズはGPUが強力になったぶん、同じTDP 65WのRyzen 7000シリーズよりもグラフィック描画中の消費電力は大きくなる。そしてメモリークロックが高くなるほどに消費電力が上昇するのではなく、DDR5-6400よりも6000の方がやや高い値を示した。これはuclk:fclkのレートが1:1から1:2に切り替わることに関係していると推察される。

 3DMarkのスコアーで考えるとメモリークロックが高い方がスコアーが伸びていることから、ワットパフォーマンスはわずかではあるが上昇していることになる。とはいえDDR5-6400動作は必ず成功するとも限らないため、安定動作と性能のバランスを考えるなら、DDR5-6000を狙った方が良いだろう。

ゲームでもDDR5-6000が良い働きをする

 ここから先は実ゲームでの検証だ。テスト条件は内蔵GPUの性能に合わせ、解像度はフルHDのみ、画質は最低画質設定とした。そしてRyzen 8000Gシリーズに関してはAFMFを有効化した際のフレームレートも検証する。そのためフレームレート計測はRadeon Softwareの計測機能を使用するが、GTX 1650環境では「CapFrameX」を使用した。

 Radeon Softwareで計測した結果はフレームタイムのログを解析し、そこから平均や最低フレームレート(下位1パーセンタイル点以下の平均値)を算出している。なお、アップスケーラー(FSR)に関してはゲーム側でFSRに 対応している場合はそれを利用するが、RSRはテスト用ドライバーの挙動に怪しい部分があったため使用していない。

 超軽量ゲームの代名詞といえば「VALORANT」を避けて通る訳にはいかない。画質は最低画質とし、マップ“サンライズ”で一定のコースを移動する際のフレームレートを計測した。移動中はジェットのスキル“テイルウインド”を可能な限り使用し続けている(スキル無制限モードも利用)。

VALORANT:1920×1080ドット時のフレームレート

 軽いゲームなので画質を絞ればRyzen 7 5700Gでも高フレームレートが出せる。しかし、Ryzen 8000Gシリーズならさらにフレームレートに余裕が生まれる。ここでもメモリークロックはDDR5-5200より6000の方が好適だが、DDR4-6400にすることで最低fpsがさらに上がる。

 そして興味深いのはVALORANTとAFMFの相性が非常に悪く、AFMFを有効化するとかえってフレームレートが出なくなる。無償で使える技術だが、こうした落とし穴もあるのだ。

 ただ最速を獲ったのはGTX 1650+Ryzen 5 7600の組み合わせ。実際の戦闘ではここまでは出ないだろうが、フレームレートに余裕があるということは、それだけカク付きが防ぎやすいという事になる。ここではGTX 1650に軍配をあげるしかない。

 続いては同じFPS系だが、FSR 3に対応した「Call of Duty」で試してみよう。画質は“最低”とし、FSR 3“バランス”とフレーム生成をオンに設定。「Modern Warfare III」についてくるゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Call of Duty:1920x1080ドット時のフレームレート

 VALORANTではGTX 1650に完敗していたRyzen 8000Gシリーズだが、ここでは同等以上のパフォーマンスを発揮。特にRyzen 7 8700G+DDR5-6000以上組み合わせ時のフレームレートの伸びが非常によい。Ryzen 7000シリーズやCore i7-14700Kの内蔵GPUでは辛うじて動く程度だが、ここまで来れば十分プレイできると言える。

 Ryzen 7 8700GはDDR5-5200→DDR5-6000でフレームレートが激増しているのに対し、Ryzen 5 8600Gでは微増にとどまるのは素の内蔵GPUの力量の差が影響しているのだろうか? どちらにせよDDR5-6000以上は誤差程度の差しか出ていない。

 続いては「Palworld」で試してみよう。画質は最低とし、モーションブラーなども全てオフにした。拠点から一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Palworld:1920×1080ドット時のフレームレート

 計測のたびに画面内に登場するモンスターの状況が異なるためブレは大きいが、Ryzen 7 8700GではDDR5-6000の効果が大きく、Ryzen 5 8600GではDDR5-6400にしてもあまりフレームレートが上がったように思えない。AFMFを使用するとフレームレートも激増するが、ここでもRyzen 7 8700G+高クロックメモリーの効果が非常に良いことが分かる。

 Ryzen 7000シリーズやCore i7-14700Kでは歩くのも厳しいが、AFMFの利用できるRyzen 8000Gシリーズはかなり良い感じだ。今回の検証の範囲ではGTX 1650のパフォーマンスもそこそこ良い感じだが、AFMFを併用したRyzen 7 8700Gの前には負ける。

 「F1 23」では画質“超低”とし、異方性フィルタリングもオフ、FSR 2は“バランス”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

F1 23:1920x1080ドット時のフレームレート

 F1 23ではRyzen 5 8600GでもDDR5-5200ではなくDDR5-6000を選択すべきだいうデータが示された。AFMFを併用することで、さらにフレームレートがブーストされるが、高クロックメモリー設定+AFMF有効時のフレームレートの出方にバラツキが大きく、このゲームだけは確信をもってこうだ! と断言できる結果は得られなかった(もう数日時間があれば……)。β版ドライバーだからというせいも考えられる。このあたりは後進の方に再検証を委ねたい。

 「BIOHAZARD RE:4」は全設定を最低に設定するとともにFSR 2“バランス”に設定。ゲーム序盤で訪れる教会のある村~次の集落へ続く道を移動した際のレームレートを計測した。

BIOHAZARD RE:4:1920x1080ドット時のフレームレート。Core i7-14700Kは画面が暗転してしまうため値なしとなる

 最高画質設定だとVRAM搭載量が多くないと話にならないゲームだが、画質を絞ることでRyzen 8000Gシリーズでも十分プレイできるようになる。ここでもDDR5-5200よりDDR5-6000を選ぶべきだと分かる結果になったが、DDR5-6400だとAFMF有効時にフレームレートを、さらにもう一押しできるようだ。

 ただどの環境でも不意にカクッともたつく場合があるので、いつもこのグラフのようなフレームレートが出るかと問われると厳しい。ただ内蔵GPUでGTX 1650を越えるフレームレートが出たことは素直に驚きたい。

 最後に「Starfield」で締め括ろう。画質“低”に設定しFSR 2は有効。レンダースケール(RS)は“バランス”相当の58%とした。都市マップ“ニューアトランティス”のMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。

Starfield:1920x1080ドット時のフレームレート。Core i7-14700Kの内蔵GPUは起動すらさせてもらえないため値なしとなる

 Ryzen 8000Gシリーズでは平均フレームレートがAFMFによって倍程度に伸びている。最低フレームレートは伸び悩むが、この検証ではCPUが律速になっている可能性がある。そしてここでもDDR5-5200と6000の間に明確な差が出ている一方で、DDR5-6000~6400&fclk 2400MHzまでの3つに違いらしい違いは観測できなかった。

GTX 1650に匹敵する性能は素晴らしい
導入するならDDR5-6000メモリーの併用を

 ごく簡単ではあるが、Ryzen 8000Gシリーズファーストレビューを終了としたい。今回の検証はβ版ドライバーとBIOSの組み合わせが原因なのかフレームレートが安定しなかったり、3DMarkが時折固まったりすることが多かった。そのため今回の検証は“発売前の時点ではこうだった”的に眺めて頂けると幸いだ。

 言い訳はさておき、Ryzen 8000GシリーズのGPUパフォーマンスはRyzen 5000Gシリーズを軽く越え、期待以上の出来だった。特にRDNA 3世代のRadeonとAFMFによる描画性能は他の追随を許さない。

 性能的には画質や解像度に妥協する必要があるが、これまでの内蔵GPUでは“妥協してまあ動く”から“妥協すれば結構快適に遊べる”に進化したのだから、評価しない訳にはいかない。

 Ryzen 8000Gシリーズを使う際には、ぜひメモリーに少し予算を振り分け、高品質な高クロックメモリー(DDR5-6000がオススメ)を組み合わせて欲しい。GTX 1650に完全勝利とはいかないまでも、十分対抗できるパフォーマンスを得られるだろう。

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