発送から最速72時間で返却できる強みに迫る
今回、工場を見学して気になった点を埼玉サービスセンターQC グループリーダーの小野正貴さんに話をうかがった。(以降、敬称略)
編集部:いろいろと既にお聞きしているところもありますが、実際に最も多い修理案件というと、どういったものになりますでしょうか?
小野:電源が入らないといった表現で持ち込まれるものが一番多いです。電源が入らず基板に通電していないとか、バッテリー不良であるとかの電源系の故障。それから、OSが破損していて起動しないといった感じです。
編集部:電源が入らない原因が分からないということでしょうか。
小野:画面が映っていないだけでも、電源が入らないという表現になっているものもあります。
編集部:その故障の原因としては、どこかにぶつけたとか、落としてしまったとか、どういった理由が多いのでしょうか。
小野:突然のパターンが多いですね。昨日まで普通に使えていたのに、今日は電源が付かなかった。それと同じくらい、休み明けに付けようとしたら動作しない、といったパターンが多いですね。冬は特に多いですね。
編集部:昨今の猛暑の影響で、故障率が増えたといったようなことはありますか?
小野:夏の暑さで増えるといったことはないですね。ただ、落雷が落ちて停電した影響で動かなくなった、というのは夏であれば増えます。室温が下がった中で電源を入れたら動かないとか、そういった現象もちらほら見えますね。
編集部:雷サージフィルターなどを付けた方が良いのでしょうか?
小野:そうですね、特に一軒家の場合だと付けた方が良いかもしれませんね。マンションとかだと、1階に変電設備があったりして、一端そこで多少和らぐとは思います。しかし、そういった設備のない一軒家だと、絶対ではないですが、あった方が良いとは思います。
編集部:では、年間にどれぐらいの数の相談があるんでしょうか。
小野:コールセンターの問い合わせ数は、月間で1万件ほどでしょうか。コールセンターへの問い合わせは、使い方のご相談も含めますので、修理件数よりは多くなります。
編集部:判別の難しい案件というのは、何かあったりしますか?
小野:システム周りが多いですかね。最新のWindows Updateとアプリの相性問題が、後々分かったということもあります。修理の担当者が調べても出てこないし、開発部門に相談しても情報がなくて、皆で一生懸命検査したらアプリのドライバーが起因だった、と言ったパターンは、時間がかかる案件ですね。
小野:お客様が悩まれている症状が再現しないというのは難しいのは確かです。再現すれば、改善確認も早いのですが、再現しない、または再現頻度が極端に低い場合は、本当に修理できているのか、確認がしづらいですね。
編集部:そういった場合、極端な話まるまる新しくしてしまえば解決できると思いますが、そいうった対処をすることはあるのでしょうか?
小野:場合によっては、そういったこともあります。再現性がない時は、予測交換といった形で、デスクトップPCの電源であればマザーボードだったり、ノートPCであればACアダプターだったりを交換して返却させていただいています。それでもまだ症状が出るようであれば、前回と違うパーツのパターンなのか、それともお客様の環境の問題なのかを確認し、製品に問題があれば、再度お預かりといった形になります。
編集部:では、お客様との対応で、どんなことを常に心がけていらっしゃいますでしょうか。
小野:サービスセンターとしては、スピードと品質を重視しています。弊社はセンターに修理品が到着してから、お客様のもとに発送するまでを、最短で72時間を目標にしています。最速でお客様の手元から離れて3日目には返ってくるという早さは強みです。
編集部:その早さを実現できているキモはどこにあるのでしょうか。
小野:作業者のスキルや、過去の修理データを蓄積していますので、対応が難しいけれど早く返却しなくてはならない時も、迅速に対応策を検討し、修理を早く行なえるようになっています。パソコンの黎明期から好きでいじっている、20年以上勤めている社員もいます。最新の記事を見て、新しい不具合を把握し、その症状の対応案を提案できるスタッフもいます。
編集部:ベテランの方もいらっしゃるなか、割と若い世代の方もいらっしゃるんですね。先ほどは修理の早さをアピールされていましたが、他には何か御社ならではの強みは何かありますか?
小野:弊社は修理部門と開発部門の連携が強いのかなと思っています。修理の重要な情報を察知して、品質管理の方に議題としてあげ、開発と連携して生産段階で工夫する。市場からのフィードバックをこのサポートセンターが最も持っているので、開発が部品メーカーと協力して、どういった製品を作れば良いか、次の製品作りにも役立っています。
編集部:たとえば、新しい製品としてどんなものが考えられますか?
小野:たとえば、外装が壊れにくいものでしょうか。弊社は大学の生協さんに製品を卸させていただいているのですが、学生さんだと忙しいのもあって、やや雑に扱われることもあるので、そういった人向けに頑丈な製品があってもいいんじゃないでしょうか。
編集部:御社の方で、生協さんに協力するような施策があったりするのでしょうか?
小野:実際に、導入いただいている大学との取り組みで、修理スタッフがキャンパスに赴いて生徒さんが利用しているPCの点検を定期的にしている学校もあります。たとえば、軽微な破損やバッテリーの問題などを年1回点検して、部品を交換して、ユーザーの使用感を修理の担当者が見に行く機会を設けています。
編集部:最後にお客様の大事な製品をお預かりするにあたって、どういった意識で取り組んでいるかなどを教えてください。
小野:個人的には、修理に送るというのは、相当ネガティブなことだと思います。10万、20万した製品が故障したということで、かなりショックなことです。そのネガティブになってしまったお客様に製品をご返却する時に、できるだけポジティブに、信頼を回復できるようにと意識しています。出荷の人間が箱を閉じたら、次にその箱を開けるのはお客様です。そのお客様が、すぐに返って来たし、個装もしっかりしていて、綺麗に返って来て良かったな、と思って貰って信頼回復に繋げられれば、と思っています。
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