「駅中心」だったまちの価値に変化を
── 一方で、LUUPさんの抱えている課題はどんなものがあるんでしょう。
十河 ポートが増えているようでまだまだ少ないというのが一番の課題です。2020年のサービス開始時は50ヵ所くらいだったのが、今年の始めに1800ヵ所程(都内)に増えてはいるんですが。
── おお、めちゃくちゃ増えてるじゃないですか。
十河 ただ、それでも「家から徒歩1分以内にポートがありません」となるわけです。電動マイクロモビリティは乗るのがせいぜい10分程度なので、「5分歩いて10分乗る」という人はいないんですよ。徒歩1〜2分にないと乗るという選択肢にならない。至るところにポートがある状態を作る、密度を濃くしていくというのが一番の課題ですね。
── なら今後は郵便局並みにしようとか?
十河 展開エリア全体で1万ポートをまず目指したいですね。渋谷エリアはすでにコンビニ店舗数をすべて足した数より多く、一定程度は便利な密度に近づいてきているんですが、他のエリアもそこに近づかなければいけない。たとえば豊洲だけにポートが集中していても行き先にポートがないと便利じゃないですよね。2つのエリアにポートがあって、初めて移動が成立する。目的地の近くにもポートがあるし、自分の近くにポートがあるという風にしていきたいと思っています。
── ポートを増やした後は?
十河 同時並行で進めていきたいですが、そこで何ができるかを、まちの人と一緒に考えていくのが大事だなと。マンションにポートを置いたことで、住みたい人が増えるとか、マンションに住んでいる人向けのプランを作れるようになるとか。ホテルにポートを置いたら、宿泊者限定のプランを作れるようになるとか、そんなことができたらいいなと思っています。
── なるほど。
十河 ぼくらは街じゅうを「駅前化」するインフラをつくるということをミッションとして掲げているので、まち全体の価値を上げるということを一緒にできていけたらいいなと。日本の都市開発自体が鉄道をメインに発達してきましたが、駅周辺以外もまちの価値を上げられるんじゃないかと。駅と駅の中間地点は家賃や不動産価値が相対的に低くなりがちですが、そこにLUUPのポートがあり、駅まで3分で行けるということなら価値が上がりますよね。
── 不動産業者と組んだらいいじゃないですか。
十河 いま一緒にやらせていただいてるまちづくり協議会の会員さんの中には不動産業者さんもいるのでそのあたりを一緒にやっています。
── 今は借りたり返したりが手動じゃないですか。駅から駅に移動するとき、行き先のポートを含めてすべてが自動的につながってくれたらいいですよね。
森 行き先を決めれば最適な交通手段が自動的に決まると。私たちは「スマートパス」と呼んでいますが、行き先を決めたら自動で決まるというのがひとつの将来形ですよね。
── 「何のために人は移動するのか」というところまで行くんじゃないですか。これはずっとある議論だとも思いますが、どうですか。
森 やっぱり便利というところを考えるとひとつずつ積み上げていくところですよね。改善していく中では気がついたら当たり前の交通インフラになっているという世界になるのはそう遠くない未来だと思います。今はまだ思いも寄らないことが起きていると思う。
── とりあえず会話できるようにしてくださいよ。
十河 キックボードとですか?(笑)
── 「今日はどこ行ったらいい?」とか。めちゃくちゃ儲かるかもしれないですよ。
森 たくさんのポートがあれば、混雑を避けるとか時短するだけでなく、景色を楽しんでもらえるルートのレコメンドもできるようになりそうですよね。まずは足元でしっかり新しい交通インフラの位置づけを整えて、そうした展開を考えていければと思います。
(提供:清水建設株式会社)
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