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IT業界で稼げなかったら建設業界に行こう! 清水建設がベンチャー投資に本気

2023年02月28日 11時00分更新

清水建設が出資するゼネコンテック

── 投資先はどんなところがあるんですか?

田地 2020年7月に1号案件として出資したのがピコセラです。建設現場の通信ネットワーク、無線通信技術を持っているベンチャーで、たとえば建設中の高層ビルだと100メートルを越えると電波が届きにくくなるんですね。そうすると電話にも出られないし、管理ができない。そこでWi-Fiをメッシュのように構築する技術を持っているのがピコセラ。虎ノ門麻布台の建設現場に300台以上を入れて現場管理に使っています。

 それまでは2段階くらいホップすると電波強度が数%くらいに減ってしまっていたんですが、ピコセラの技術を使うと6段階くらいホップしても電波強度が20%くらい残るんです。おかげで高層ビルやトンネルなど有線でやっていた現場が無線化できるようになりました。工事現場で通信が使えることが当たり前になることで、リアルタイムで映像やメッセージを伝えたりというアクションがのってくるようになりました。

PicoCELA YouTube

── いまはもう他社も使うポピュラーな技術になっているんですか?

田地 そうですね、今はもうどこの建設現場でも使われてきています。

── 以前取材した「豊洲街びらき」イベントでキッチンカーが出展していましたが、あれも投資先ですかね?

田地 キッチンカーのプラットフォームを作っているMellowですね。これまでオフィスにはレストランが入っているのが当たり前でしたが、使いたいときだけキッチンカーが来るというのもアリなんじゃないか。そういうスマートシティの文脈で、都市にも地方にもMellowを取り入れて持っていこうということで出資をして事業連携しています。

── そのとき清水建設は「モノ言う投資家」なんですか?

村井 取締役会にオブザーバーとして出ていますが「どうしたら一緒に成長するのか」という支援を中心に動いています。Mellowなら弊社得意先に紹介して「こういうところに置いたらいいんじゃないか」と話しています。デジタル業界に売り込むよりは、建設業界に売り込んだほうが長いあいだ大きな金額を稼げるところもあると思うんですよね。たとえばVRでも不動産の内見なら無料で使えてしまいますが、建設業界でリフォームの見積もりに使って現地調査員を減らせるなら、有料課金にしてもうまくいきますよといったように。

── おお〜、「IT業界で稼げない人は建設業界へどうぞ」ということですね! 盛田くん!見出しになるだろこれ?(※編註:見出しにしました)

田地 次はLightblue Technologyという東大発のAIベンチャーです。画像解析に強いので技術を事故防止に活用できないかと。建設現場では重機と人の接触などの事故が課題としてずっとあるんです。重機に単眼カメラをつけて人を認識させ、どれくらい離れているか、どのような状態なのかを認識させ、それをオペレーターにつなぐ仕組みを開発しています。

── 画像解析ベンチャーはたくさんありますが、ここがすごいのは?

村井 土木は同じものを同じ場所で測るわけではありません。カスタマイズの話があったときライトブルーは馬力があって、そこも信頼できたところですね。

── 腰が軽いと。

村井 フットワークが軽いと(笑)。データの取り方から相談に乗ってくれたり、国内外の最先端の文献を読み解いて提案もしてくれたり、自分たちで汗をかいてくれまして。

── まさに人間がいいと。

村井 建設業は同じ場所で同じモノを作っているわけではないので、データをクレンジングすると実態からかけ離れてしまうところがありました。そのぶん定義が難しい部分があったので、これまではAIベンチャーとなかなかいいコラボレーションができていなかったんですが、ライトブルーはそこについてくるだけの親和性がありました。

── 以前のインタビューで「トイレのNetflix」として紹介したVACANも出資先でしたよね。OpenSpaceというのはどんな会社ですか?

田地 シリコンバレーのスタートアップです。ヘルメットにGoProのような全天球カメラをつけるとクラウドにアップされて、ある場所の画像がズラズラ並んできて施工管理に使えると。ゼネコンの中で使う話とともに、デベロッパーが持っている不動産を遠隔で管理する文脈もあるので、弊社の営業に話しながら連携を進めている状況です。

── なるほどなるほど。

田地 あとは兵庫のベンチャー、マプリィ。iPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーを使って、オフライン環境でも点群処理とCAD化ができるというアプリを作っています。通信環境によらないので、トンネルとか高層ビルの上とかでも点群処理ができるんですね。

 もうひとつ再エネPPA事業会社は、小さなところの太陽光パネル発電者を仲介して10〜20年契約するという、ソリューションのようなところに強みを持った事業会社です。当社にもスマートエコエナジーという関連会社がありますが、電力を抱えるほうをより強化したいということで出資しています。

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