「PCMark10」でも強さは見えず
CG系で良いところが見えなかったので総合ベンチマーク「PCMark10」で検証してみたい。さまざまな実アプリを動かすので、もしかしたらL3が活きるシチュエーションが見つかるかもしれない。テストはゲーミング以外の処理で比較する“Standard”テストを実施した。
総合スコアー(青)ではRyzen 7 5800X3DはRyzen 7 5800Xの微妙に下。このパターンはここまで何回も目撃したものだ。ただテストグループ別のスコアーに注目すると、DCC(Digital Content Creation)ではRyzen 7 5800X3DがRyzen 7 5800Xを上回っている。ただそれでもRyzen 9 5900Xを上回るほどではない。
それではそれぞれのテストグループ別にスコアーの根拠となったテスト別スコアーも見ていこう。
EssentialテストグループではRyzen 7 5800X3DとRyzen 7 5800Xに大差がついているシチュエーションはほぼない。強いていえばFireFoxを使うWeb Browsingテスト(黄)においてRyzen 7 5800X3Dがやや低い値を示しているが、Ryzen 9 5900XのスコアーもRyzen 7 5800Xに負けている点から、ほぼ誤差といってよいだろう。
LibreOfficeを実際に動かすProductivityテストグループでは、Ryzen 7 5800X3Dの方が明らかにスコアーが出ていない。L3キャッシュの量が効いてないことはもちろんだが、クロックの設定も強く影響しているようだ。
Ryzen 7 5800X3Dの強みが見えたのはDCCテストグループだが、DCCの総合スコアーはCGレンダリング(Rendering and Visualization)が引き上げていると考えてよいだろう。それ以外のテストではRyzen 7 5800X3DはRyzen 7 5800Xより低いか、ほぼ並んでいるかのどちらかである。
Photoshop系で強いことが示唆された「UL Procyon」
続いては著名な実務系アプリを実際に動す「UL Procyon」を使う。ここでは「Lightroom Classic」と「Photoshop 2022」を動かす“Photo Editing Benchmark”を実施する。
ここでも総合スコアーではRyzen 9 5900XとRyzen 7 5800Xの中間に位置しているが、ポイントになるのはPhotoshopとLightroom Classicを連携させるImage Retouchingテスト(オレンジ)のスコアーだ。
Lightroom Classicだけで構成されるBatch Processing(グレー)では今ひとつなことから考えると、Photoshopのパフォーマンス、もしくは複数のアプリを連携させるような使い方でキャッシュが効いている可能性が考えられる。
続いてはWord/Excel/Powerpointを動かす“Office Productivity Benchmark”だ。ここではOffice 365を実機にセットアップして検証している。
Ryzen 9 5900X〜5800までほぼダンゴ状態だが、PowerPointではRyzen 7 5800X3Dがトップ、ExcelでもRyzen 7 5800X3Dがよりコア数の多いRyzen 9 5900Xに肉迫している。ただ全体としては凡庸というか、第12世代Coreを大きく下回っている。コアのアーキテクチャーがZen 3のままなので当然だが、一般的な利用においてRyzen 7 5800X3Dが特に強いとは言えないようだ。
大容量L3が明確に効いた「Lightroom Classic」の現像作業
UL ProcyonでLightroom Classicメインのテスト結果が芳しくなかったが、「Lightroom Classic」で別の角度からの性能を検証してみよう。61メガピクセルのDNG画像(調整付き)を100枚準備し、それを最高画質のJPEGに書き出す時間を比較した。書き出し時にシャープネス処理(スクリーン用、適用量は標準)も付与している。
第12世代CoreプロセッサーとDDR5メモリーとの組み合わせが特に強く、現行のRyzenは処理性能において大きく引きはされてしまう。この傾向は変わっていないが、今回Ryzen 7 5800X3DのRyzen 7 5800Xに対する明確なパフォーマンス向上を確認できた。さすがにコア数の壁は越えることができなかったが、L3キャッシュの大容量化がはっきりと確認できた一例といえる。しかし、価格的ライバルであるCore i9-12900Kには遠く及ばない。
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