開放感を感じさせる音だが緻密で細かな再現も得意
音の傾向についてはどうだろうか。個人的に持った感想としては、低域が豊かに広がる点、中域が聴きやすく開放的である点に魅力があるように思えた。この点はアメリカの製品らしいおおらかさだ。一方で高域も良く伸びるので、音の輪郭がなまらず、ハッキリしている。
比較用に1~2万円安い価格帯で有名メーカーのサウンドバーを聴いてみた。中低域に厚みはあって迫力はあるが、Signa S4だけでなくテレビと比べても、高域の抜け感が悪くもっさりとした感じがあった。Signa S4は音色の明るさや朗らかさがあると同時にワイドレンジで解像感の高いサウンドであり、音の位置関係や音色感、硬いものと柔らかいものの差などがよく伝わってくると思った。
再生中のフォーマットは放送のAACならオレンジ、アトモスなら水色など色で区別する。音量については点灯するLEDの数で分かるが8~10畳程度の広さなら20%とか30%でも十分すぎる音圧が得られそうだ。低域の量も調整できるが、筆者の自宅では最も抑えた状態でも満足いくものだった。
ドルビーアトモス対応のコンテンツとして、Netflixの「ドント・ルック・アップ」やUHD BDの「透明人間(The Invisible Man)」などを見てみたが、爆発や衝撃など迫力あるアクションシーンだけでなく、心理的な描写に関係する音(周囲に広がるノイズ音や通奏的に流れる低域など)がより明瞭となり、緊張感がより高まる印象を持った。これは細かい音の表現力はもちろんだが、上方を含めて広がる音の包囲感の要素も大きいと思う。
また、サラウンドコンテンツではなく、テレビアニメ「平家物語」のように2chのコンテンツでも効果音が与える影響の強さを感じた。音の演出として、普通のテレビでは聞き取りにくいような低い音や小さな音が多くちりばめられている作品であり、これが聞こえるかどうかで作品の感じ方や作品に対するのめり込み感に結構な差が出るのである。
サラウンドと言うと、音の方向感や動きの部分に注目が集まりがちだが、やはり大事なのは音の効果によって映像の世界により強く没頭できる点にあると思う。これはゲームやYouTubeなどで流れる音楽コンテンツなどでも同様だ。Signa S4はふだん何気なく見ているコンテンツに新しい発見をもたらしてくれる。
シンプルだし、リーズナブルな価格なのに、すごい。使えば使うほど、そういう感想をいただかせてくれる製品だった。
(提供:Polk Audio)
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