週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

VAIO のレジェンド開発者たちに訊く

ブレイクスルーを目指した4面カーボンボディが生まれるまでのぶっちゃけ秘話

2021年05月28日 11時00分更新

 VAIO Zの象徴とも言えるのが4面カーボンボディだ。VAIOといえば、ソニー時代から薄軽で高性能なPCを目指してきており、新素材にも取り組んできた。4面マグネシウム合金やいちはやくカーボンファイバーを採用するなど、時代の最先端を駆け抜けてきた。VAIO Zという名に恥じないブレイクスルーを起こすべく、4面カーボンボディへの挑戦は、さまざまな壁との戦いだったという。VAIOの歴代製品を手掛けてきたレジェンド級の開発者が集い、ぶっちゃけ話も飛び出した開発秘話をお届けする。

VAIO NOTE 505のマグネシウム合金での意外な秘話

――皆さんのVAIOへの関わりからお伺いします。

写真左がPC事業本部エンジニアリング統括部デバイスエンジニアリンググループ メカ設計課 課長の浅輪 勉氏。右が同 メカニカル プロジェクトリーダーの武井 孝徳氏

浅輪勉氏(以下浅輪) 「1997年に発売された『VAIO NOTE 505』で4面マグネシウム合金を担当し、そこからずっとVAIO一筋でやっています。2004年にカーボンを最初に採用した機種(VAIO type 505 EXTREME)は、横目でお手伝いした程度でしたが、その後ラインアップに加わった2代目『VAIO typeT (VGN-TXシリーズ) 』は私が担当した機種となります」

武井孝徳氏(以下武井) 「入社してからしばらくバッテリーの設計をやっていました。VAIO株式会社以後、『VAIO S13』や『VAIO S11』あたりから、本格的にセット設計に携わるようになり、今回、初めてメカPL(メカニカル プロジェクトリーダー)を担当することになりました」

――VAIOの歴史の中で、軽量化に向けて最初に使用したのがマグネシウム合金でした。

浅輪 「当時の私は505をやるためにソニーの湘南事業所へ出向したのです。いわば途中から参加した立場でしたが、その際には4面マグネシウム合金でやることはすでに決まっていました。筐体でマグネシウム合金を使ったPCが世の中にはあるということは知っていたのですが、マグネシウム合金を薄肉化して大量に製造するのは、世の中で初めてだったと思います。正直、右も左もわからない状態で、マグネシウム合金のPCを作る世界に放り込まれた状態でした」

――画期的な薄さと、あのカラーリングに鮮烈な印象を受けたPCファンも多かったと思いますよ。

浅輪 「はい。505ができる前に同じチームで試作したモバイルノートがあるのですが、全然薄くなくて1度企画が没になりました。その半分ぐらいの厚さを狙おうとすると、当時はマグネシウム合金ぐらいしか選択肢がありませんでした。そのために『マグネシウム合金の筐体はどうやって作ればいいのですか?』と、他社に聞きに行ったことがあるのです。まだ、VAIOのノートはなかったし、当時は私も若かったので、いろいろと教えていただけたのです(笑)。いま考えれば驚きですし、ホント、感謝しなければなりませんね……。形状は難しいものはできないとか、制約もありましたが、助言を忠実に守って、できるだけシンプルに設計しようと考えました」

――特に苦労した点はどこでしょうか?

浅輪 「マグネシウム合金は鋳造なので、成型不良(湯ジワ)が発生して、線ができたりするので、それを直す必要があります。肉厚が厚ければ金属も流れやすいのですが、肉厚が薄いところに一瞬でキレイに流し込むのは難しく苦労しました。その欠点を消すために削ったりパテしたりして修正して塗装することになりますが、それが大変でした」

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう