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気軽に本格的なオーディオを楽しむセット

オーディオを本当の意味で自分のモノにする体験、自腹購入した「B&W 607」と「ELAC DS-A101G」を使う

2020年06月26日 17時00分更新

エージングを続けるほどに、音が変化していくのがわかる

 まずは初日、この日はエージング用のノイズ信号を鳴らしたのだが、最初の数時間は音の感じを把握するために音楽も聴いている。主に聴いたのは、YMOの「TECHNODON」。現在、リマスタード2020のバージョンが、CDやSACD、アナログ盤、ハイレゾ音源(96kHz/24ビット)が発売されている。シンセサイザーを使った浮遊感たっぷりの音がスピーカーの外にまで広がる曲が多く、しかもボーカルや生音の楽器も位相をいじったような細かな効果が加えられており、さまざな音の仕掛けや演出がいっぱい。楽曲としても昔から大好きなのだが、本格的なオーディオ機器で聴くとさらに楽しい。

[試聴曲1]YMO/TECHNODON(96kHz/24bit FLAC)

※e-onkyo music、moraなどで配信中

 新品の607とDS-A101Gで聴くと、わかりやすいほど音が硬いのがわかる。

 空間に浮かぶ感じで広がるはずのシンセの音がまるで広がらず、音場も狭苦しい。「BE A SUPERMAN」は女性の声が左右のスピーカーの間を行ったり来たりするのだが、スピーカーの間の音がなく、右と左のスピーカーからだけ出ている感じだ。「ポケットが虹でいっぱい」も、高橋幸宏の色っぽい声がちょっと粗く感じる。何より低音が出ず、音が痩せた感じになる。

 予想通りの音だ。このあたりがよくわかったところで、音源をノイズ信号に切り替えて鳴らしっぱなしにして試聴室を出た。エージング中は音さえ出しておけばいいので、12時間同じ部屋に居てひどい音を我慢して聴き続ける必要はない。家人に迷惑がかからないならば、音を鳴らしたまま外出してしまってもかまわない。後は夜になったら再生を止めて終了。

 2日目になると、音場が一気に広くなったように感じる。ウーファーよりも口径が小さく素材も軽いツィーターの方がすぐに動きがよくなるので、高域の成分がかなりスムーズになる。おかげで、シンセサイザーのフワっとした感触の音もスムーズに広がるし、ボーカルやリズムセクションのようなセンターにきちんと定位する音もしっかりと音が立つ。このあたりの音の変化は比較的すぐに感じるはず。音の硬さもとれて、ずいぶんと聴きやすい音になっている。

 今度は、ボーカル曲のヨルシカの「花に亡霊」を聴いた。これは、Netflixで配信中の「泣きたい私は猫をかぶる」というアニメ作品の主題歌。作品も中学生の少年少女の多感な心をみずみずしく、時に生々しく描いた秀作だが、主題歌もよく弾む女声ボーカルが可愛らしく、叙情的なメロディーと相まってなかなか魅力的。声の再現はかなり良好だが、サビの部分で声を張るところなどがまだしっかり鳴っていない感じもある。まだウーファーの動きがよくないのだろう。

[試聴曲2]ヨルシカ/花に亡霊(96kHz/24bit FLAC)

※e-onkyo music、moraなどで配信中

 3日目、4日目は大きな変化は感じなかった。より滑らかな音になり、細かな音の余韻やたくさんの音が重なったときの音が混濁してしまう感じが減ってきたようには感じるが、体調による聴こえ方の違いとあまり変わらないレベルだ。

 明らかに変わったと気付いたのが5日目。同じ音量で鳴らしているのに間違いなく大きな音量になっていると感じた。ようやくウーファーが本来の動きをするようになったようだ。YMOのドラムやシンセベースの低音が力強く鳴るし、最低音域の伸びもよくなったことがわかる。そのため、ボーカルも音に芯が通ったような力強さが出るし、定位がより明瞭になって実体感のある鳴り方になる。

 ヨルシカでは、ドラムやギター、ベースが加わる中盤での音の厚みが増すし、ボーカルも力強く歌うときの声の張りが出て、歌声の表情が豊かになったとわかる。ついついじっくりと聴き込んでしまったが、間奏でのギターソロもきめ細やかで情報量が豊かなぶん、ややキツい感じだったが、キツさがとれて細かな音色の変化まで気持ち良く聴き取れるようになっている。

 もうほとんど本調子だと感じるレベルの音だ。このほかに聴いたクラシック曲も、ヴァイオリンの弦のこする感じが耳障りにならず、艶やかな音色になっているし、オーケストラが一斉に音を出してときも、個々の楽器の音色をクリアにならし、楽器の定位とコンサートホール全体のスケール感もしっかりと出る。

 6日目、7日目はそれまでに鳴らしていた曲だけでなく、そのほかの曲もいろいろと聴いてみた。アニメソングは曲によては高域のキツさを感じたり、音をぎっしりと詰め込むゆえに騒々しく感じてしまう曲もあるが、そんな曲もキツさが気になることもなく、たくさんの音をきれいに解きほぐして鳴らしてくれる感じだ。

 スピーカーの607とプリメイアンプのDS-A101Gを一緒にエージングしたこともあり、DS-A101Gの方の音の変化はほとんど気付かなかったが、ウーファーがしっかり鳴るようになってくると、十分な駆動力を発揮していること、情報量の豊かさや明瞭な音の再現を含めて、きちんと本来の実力が出て来ていると感じた。

 7日目には、映画も見てみた。アクション映画のような爆発音をはじめとした重低音がたっぷりの音はさすがにパワー感も音域の伸びも足りないとわかるが、そういう音域は本来サブウーファーで補うもの。DS-A101Gならサブウーファー出力もあり、音場を最適化する機能もあるので、サブウーファーを追加すれば映画も十分大迫力で楽しめる。セリフなども明瞭で滑舌がよく、表情の変化をきちんと描き分けるし、音楽も十分にスケール豊かな鳴り方だ。

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