2017年06月08日16時00分

バルミューダなぜかカレー発売「辛さの時間差」にこだわった味

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 高級扇風機「The GreenFan」、高級トースター「BALMUDA The Toaster」のバルミューダが8日、カレーソースを発表した。老舗カレー店デリーとのコラボレーション。さらさら系でかなりの辛口、同社の炊飯器「BALMUDA The Gohan」で炊いたごはんに合う大人のカレーだ。

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BALMUDA The Curry
実売価格 810円(税込、2皿分)
バルミューダ

https://www.balmuda.com/jp/curry/

 寺尾さんがまた変なことをやっている。

 寺尾さんというのはバルミューダ寺尾玄社長のことだ。バンドマン出身の社長という変わり者だ。最近初めて本を書いている。『行こう、どこにもなかった方法で』というロックバンドのCDのオビに書いてありそうなタイトルだ。寺尾さんもついに起業本を書くようになったのか~~と読みはじめたらいきなり「私の父親は満州で生まれた」と人生の話をはじめてしまい6~7割方寺尾さんの私小説というすごい本だった。昼は進学校に通いながら夜は暴走族仲間とバイクに乗っていたという少年時代のことなども赤裸々に書いてあり、カンブリア宮殿的な内容を想像して読みはじめた人は目が点になったのではないかと思う。ともかく寺尾さんは変わった人で、ピンと来たことをグワーとやってしまうところがあり、カレーについてもなんかこうピンときてしまったようだった。バルミューダを知るものとしても意味がわからないし、バルミューダ社員のみなさんにはなおさらというところがあったようで、社内で企画会議に出したときはさんざん反対にあったそうだ。それでも結局は企画を通したわけで「今までの商品企画で一番達成感がある」と寺尾さんはうれしそうにしていた。

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BALMUDA The Curryカレーソースで作ったカレー
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さらさら系のカレーソース。製品に肉やじゃがいもは入っていない
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BALMUDA The Gohanで炊いたごはんに合う

 2年前、寺尾さんは友人に誘われて初めて銀座の名店デリーに行った。

 デリーは創業60年、日本のお米に合うカレーを出す店として愛される老舗だ。もともとカレー好きだった寺尾さん、名前こそ知っていたが、辛いものが苦手ということもあり足を運んだことがなかったそうだ。そのため同店名物「カシミールカレー」を一口食べたときは「辛くて食えねーわ」という印象だったのだが、食べ進めていくうち「辛いんだけどなんだかわかんないがうまい、もう食えないと思いながら次のスプーンが行ってしまった」というトリップ状態に入っていった。食後は「サッカーかバスケットボールをひと試合終えたくらいの達成感と脱力感」に襲われて、「すごかったけど、もう二度と来ることはないだろうな」と思ってデリーを後にしたという。が、翌日ふとした瞬間にデリーの味を思い出してしまい矢も盾もたまらず高速道路を飛ばしてデリーを再訪、ふたたびカシミールカレーを食べて昇天しそうだ。そこから3日に1度はデリーに通うようになり、デリーでカレーソースが買えることを知ってからは家でも週3回のペースでデリーのカレーを作って食べていたらしい。「家の台所はデリーの厨房と似たような匂いがしていたと思います」と寺尾さんは笑っていた。カレーでどうかなってしまった人の発言であり、奥さんがどう思っていたのか若干心配になるが、ともかく寺尾さんはデリーにとりつかれ、日夜カレーの研究を重ねていった。その中で寺尾さんは、

 「ここにあれを足せば、デリーのカレーがもっとすばらしいことになる」

 と、思いついた。

 バルミューダの製品は「モノより体験」をテーマに開発している。よくモノよりコトと言われるがコトは時間を伴わない。時間をかけて味わう体験こそが人生の真価ではないかと寺尾さんは考えている。そこで寺尾さんは、カレーもすばらしい体験の1つだろ、ならバルミューダでカレー作ってもいいじゃないかと考えた。冷静に考えたら本当に意味がわからないのだが社長がそう考えたんだから仕方ないのであって、寺尾さんはデリーの田中源吾社長にアポイントをとってダメ元で会いに行った。デリーのカレー工場にできたばかりの炊飯器BALMUDA The Gohanを抱えて行き、ごはんも食べてもらいながら「デリーのカレーベースでこういうことをしたいんです」と伝えると、田中社長はあっさり「いいよ」とうなずいた。そこから急きょ制作が始まった。

 しかしデリーのカレーに「あれを足す」は本来、禁じ手だ。

 発表会場にゲストとして登場した田中社長は、「ぼくらは作らない、絶対やっちゃいけないこと」だと話していた。「ぼくらのカレーは和食に近いっていうんですかね。足さない、引き算を原則として作っている。最低限どうやってやろうかということで、そのほうが飽きないと思っていたが、(寺尾社長は)『一口目をマスキングさせてくれ』と言ってきた、『一口目を感じずに二口目から感じるようにするには何をすればいいのか』というアイデアから入ってきた」(田中社長)。禁じ手を使ってでも寺尾さんが作りたかったのは「味の時間差」だったらしい。「最初に口に入れたときはスーッと素直に入ってくる。でも2秒待つとバリバリーっとすごい辛さが襲ってくる。そして何事もなかったかのように抜けていく」(寺尾さん)という辛さの時間差攻撃だ。その「マスキング」のために秘密の成分を入れているのだという(「あれ」が何かは教えてくれなかった)。自分たちは絶対作らない味を田中社長も面白いと思ったようで実現に至ったという話だ。

 ちなみに寺尾さん本人はカレーの味について、

 「すごい人に会ったんだけど後味よかったな、でも気づいたらその人はどこにもいない、もう一回会うためにスプーンを運ぶ、それをくりかえしているうちにひと皿がなくなる。喪失感を埋めるためにもう一回会いに行く、まるですばらしい恋のよう」

 と、表現していた。

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何の会社なのか

 カレーソースはデリーベース。少ない油で玉ねぎを炒めつづけて約90%脱水させるという“脱水玉ねぎ”のコクとうまみがデリーのカレーの特徴で、カレー1皿あたりおよそ1個分の玉ねぎが入っている計算になるそうだ。バルミューダおすすめのレシピは鶏もも肉を使ったチキンカレー。一口大に切った鶏もも肉をフライパンで焼き(寺尾さんが言うには「スキレットで皮目から焼き付けるのがオススメ、弾力がなくなるまで押しつけて焼いてほしい」)、じゃがいもをゆで、カレーソースを鍋にあけて沸騰しない程度にあたため、鶏肉とじゃがいもを入れてできあがり。「通常のレトルトより時間はかかるが、今まで体験したことがない恋のようなカレーを食べてもらえる」(寺尾さん)。

 また、BALMUDA The Gohanで炊いたごはんは粒感がよいのでサラサラ系のカレーによく合うのだと寺尾さんは言っていた。考えてみたらBALMUDA The Toasterのときも吉祥寺のパン屋ダンディゾンと手を組んでいたし、ハードとソフトをセットで売っているような話と考えれば一応納得はできる。ごはんとの相性については、デリー田中社長が「あの炊飯器(BALMUDA The Gohan)は保温機能がついてないんですね、炊飯だけなんだ~と思いました、子供のころ、冷たいごはんの上に直接熱いカレーをかけて食べていた、あのおいしさというのはありますね、冷たいごはんに熱いカレーをかけると、『これから学校だな』という気持ちになります」と言っていたのがよかった。

 わたしも食べさせてもらってみたが想像以上に辛くてびっくりした。汗が吹き出た。時間差はあまりわからない。最初から辛かった。味は良かったのでまた食べたい。and recipeさんが調理をやっていて、鶏もも肉がジューシーでびっくりした。コツが知りたい。わたしは高山なおみさんにならい、鶏もも肉をソテーするときは弱火にかけたフライパンに放ったらかしている。デリーのカレーはしばらく食べていないので、食べ比べて違いを知るのも楽しそうだ。週末行ってみたい。

 やたら長くなったがBALMUDA The Curryはようするに男のこだわりカレーだ。そこまで高くないし、父の日のプレゼントにいいのではないか。あとバルミューダが「ほぼ日刊イトイ新聞」に近づいてきた気もする。寺尾さんが糸井さんであるならこれは上場も近い。冗談です。


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