2014年11月29日15時00分

「つくり手側に答えはない」白猫プロジェクト開発秘話(中編):召喚★アプリ神

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 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第6回目のゲストはこの人、コロプラ『白猫プロジェクト』のプロデューサー浅井大樹さんと、プロジェクトマネージャー角田亮二さん。(前編中編後編

 なお、第6回のゲストはマーベラス『剣と魔法のログレス いにしえの女神』のプロデューサー板倉基之さんと、開発を担当しているAiming ディレクター下川昌平さん。このインタビューを読んで気になっていただけた方は、11月25日発売の週刊アスキーをチェックしてみてくださいね。

『白猫プロジェクト』:召喚★アプリ神
↑プロデューサー浅井大樹氏(左)、プロジェクトマネージャー角田亮二氏(右)。

■ 白猫ヒットの秘密は“サービス目線”

安藤:RTSで始まったものがアクションRPGになったり、あるいはタウンの育成を追加したり、そこまでの変更があると、普通はプロジェクトが中止になったり伸びることが多いと思うんです。でも白猫はスピードも落ちていないし、見事につくり切っている。以前、スタッフのみなさんがUnityの手練であるという話をうかがいましたが、それがやっぱり大きいんですか?

角田:大きいですね。弊社は2年ほど前からUnityを活用しているのでノウハウが詰め込まれていまして、さまざまな変更に対応できるようにアプリをつくるんです。大規模な変更の場合は大きくつくり変えますけど、基本的には柔軟に対応できるシステムを組みます。

安藤:Unityの採用以降、仕様書や企画提案書を書かなくなったという会社も多いですよね。書類を書くよりつくったほうが早いからなんですけど、やはりスピード感はありますか?

角田:まさにその通りです。早いエンジニアですと、2~3日でライトアプリクラスのモックができてしまいます。仕様書を書く必要もなく、触って気持ちいいかどうかという、ゲームにとって大切な感覚も実際に確かめられますからね。

安藤:ほかに全社で統一していることや、いいものをつくるためにやっていることはありますか?

角田:社内レビューでしょうか。白猫でもβ版の段階で社内に配布して遊んでもらって、フィードバックを受けていろいろ手を加えました。

安藤:それは全社員が遊ぶんですか? クリエイター以外の方も遊んで意見を出してもらうと。

角田:そうです。開発チームは常にゲームを触っているので、面白いかどうかわからなくなってしまうことがあるんです。そういうときはバックオフィスの方々にも遊んでもらって意見をいただきます。目からウロコな意見もたくさんありますよ。

安藤:それはすべてのゲームでやっているんですか? それとも白猫の時だけですか?

角田:すべてです。完全に弊社の社風になっていますね。

安藤:いいですねー。昔はつくっている途中であれこれ言われたくないというクリエイターもいましたけど、逆なんですね。

浅井:たぶん、つくり手側に正解はないんですよね。発信するのは我々クリエイターなんですけど、正解を見定めるのはお客様のほうなので、お客様の目線で社内のみんなにレビューしてもらうということはすごく大事だなと思います。

安藤:なるほど……浅井さんはコロプラさんにこられる前からゲームをつくられていましたが、昔からそうお考えでしたか? パッケージゲームだと構造的にクリエーターのエゴを押しつけることも多いんですけど、今おっしゃったことは完璧にサービスの目線ですよね。浅井さんのマインドが変わったタイミングや出来事はあったんですか?

浅井:遊んでもらった人が面白いと言わなければ意味がないという意識は昔からあったんですけど、黒猫でお客様と触れ合うようになってから、どんどんその意識が強くなっていきました。よかれと思ってやったことが受け入れられなかったこともありますし、逆にちょっとしたことがすごくいい反応を生んだこともあります。そういうことを繰り返す中で、答えがこちら側にないと思うようになったのかもしれません。

安藤:じゃあコロプラさんにきてからなんですね。「つくり手側に答えはない」というのは、すごい言葉ですよ。哲学的であり衝撃的な、まさに金言ですよ、これ。開発者の中には、開発にしか答えはないと思っている人も多い。でもパッケージと違ってスマートフォンのアプリは無料で気軽に始められるから、最初からお客さんのことを考えていないといつでも離脱してしまう。そういう今時の事情に対して、つくり手に答えはないと明快に言える。白猫と黒猫の両方がヒットした秘訣を見た気がします。本当に価値ある一言ですね。

『白猫プロジェクト』:召喚★アプリ神
↑対談中のUnityとはゲーム開発ツールのこと。多くの開発会社が採用している。

■ 子どもをターゲットにしたゲームづくりの秘訣とは

安藤:ユーザー目線を大切にしてつくられたこともあって、登録をする人のペースも過去にないぐらい飛び抜けていますよね。そのあたりはいかがですか?

角田:そうですね、ちょっとびっくりしています。

浅井:弊社内でも過去に例を見ないですね。

安藤:あっと言う間に1800万ダウンロードですものね。このぐらいの数になると、お子さんや女性、ライトな人などユーザー層もさまざまだと思うんですが。

角田:実際にお客様とお会いする機会はありませんが、ツイッターなどを見ると、たとえばしょこたんさんなど女性にも楽しんでいただけているようですね。

安藤:ディズニーシーで列をつくっている女の子がみんなスマホで黒猫のウィズを遊んでいたのを目撃したときに、「これはキテるな」と思ったことがあったんです。クイズってゲーム業界ではマニアックなジャンルのひとつですけど、以前浅井さんは「日本人はライトな人ほどクイズが好きだから」という話をされていた。確かにテレビをつければ毎日クイズ番組やっているし、お母さんや子どもがご飯を食べながら普通に見ますよね。
 それが目からウロコだったんですけど、今回はアクションRPGでもライトな人がどんどん入ってきている。つまりクイズと同じ現象が起こっている。そのあたりは狙いってやったのか、それとも予想以上にいろんな人が遊んでくださっているんでしょうか。

角田:予想以上です。アクションゲームなので当初は黒猫ほどの勢いやユーザー数は望めないだろうとの予測がありました。だからこそできるだけ間口を広くしようと、絵づくりの部分やUIといった見た目も含めて、ちょっと子どもっぽいように感じられる部分もあると思います。

安藤:そうですね、ありますね。

角田:カッコよさというよりは少々バタくさいというか、そのあたりをすごく意識してキャラクターの頭身も低くしたりしました。

安藤:ターゲットが広がれば広がるほど焦点がぼやけて定めにくくなりますが、白猫の場合はターゲットをイメージしていたんですか?

角田:最初はマスを取りたいと思っていたんですが、そうするとおっしゃるとおり焦点はぼやけますよね。いろいろ考えてみて、子どもが楽しんでくれて子どもの口コミで広がるゲームが本当に面白いゲームではないかという結論に行き着いたんです。そのためデザインの見た目や説明文の読みやすさといった部分で、子どもが理解できるように調整しました。

安藤:それはすごい。子どもにターゲッティングしてヒットさせるこのは、すごく難しいことだと僕は思っているんです。子ども向けにゲームをつくってもなかなか当たらない場合は、どこかで子供目線を忘れた大人のつくり方をしていて、無意識に大人しかわからないような笑いや泣きの要素とか、カッコよさみたいなものを入れてしまう。だから子どもに理解されずに終わってしまうと思うんですが、今回はどうして子どもにターゲッテングができたんでしょうか。

角田:弊社に『ほしの島のにゃんこ』というタイトルがあるんですが、まさに大人から子どもまで幅広い年齢層の方々に楽しんでいただいているんです。子どもに理解できて楽しめるものであれば、大人も簡単に理解できるんですね。白猫も子どもに向けてつくったというよりは、子どもでもわかるつくりを念頭に置いたんです。

安藤:なるほど。インターフェイスはすごく納得がいくんです。子どもが触って直感的に理解して遊べるものならば、大人もすごく快適に遊べますよね。でもお話やキャラクターの造形はどうやって定めていったんですか? 浅井さんはもともとコアなRPGをつくられていましたし、ある意味真逆ですよね。子ども向けにつくりすぎると幼稚になってしまうし、かといってコア向けにすると子どもが置いてきぼりなってしまう。子どもにターゲッティングしたつくり方や、手法にすごく興味があるんですけど。

浅井:目指したのは”少年ジャンプ”でしたね。自分でもコアにつくってしまうとわかっていたので、どうしようかと思っていたときに、少年ジャンプのような、いわゆる王道を活かしてやっていきたいという話になりまして。それがよかったんじゃないかと思います。
 とはいっても、子どもって大人が思っている以上に意外と理解する力があるんですよね。僕にとってはむしろ、そちらの方が新鮮でした。子ども向けというと幼稚にしなければいけないと思いがちなんですが、白猫では漢字をちょっとひらがなにして、文字数をできるだけ減らして調整したぐらいで、それ以外のところは特に問題なく遊んでいただけているという実感があります。

安藤:そこを見抜いていたんですね。子どもの理解力の話は、僕も常々思っていたんです。子どもをなめるな、と。子ども向けだからといって3歳児が読むような絵本のようなものにしてしまうと、子どもたちは退屈してしまう。じゃあどうすればいいかといえば、大人も子どもも熱狂できる少年ジャンプにしてみる。そこで手を抜かずにつくることがすごい大切だと思いますし、実践したのは見事だなと思います。

『白猫プロジェクト』:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックスプロデューサー、安藤武博氏。

※記事の内容は10月19日現在のものです。

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