2012年07月04日12時30分

LINEがmixiを超えた日 次の標的は誰か

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LINE4500万ユーザーをベースに総合プラットフォーム、SNS化へ

 2012年7月3日、無料メール・通話アプリ『LINE(ライン)』のプラットフォーム化がNHN Japanより発表された。いや、「アプリ」ではなく、ここからは「SNS」と言おう。ローンチ時の利用デバイスがスマートフォンだったこと、無料でメッセージのやりとりをする機能があったこと、このふたつからこれまでLINEは『skype』の競合だと言われてきた。しかし、その本質はmixiやFacebookと同じ。すなわちソーシャルネットワークサービス『LINE』だ。今回発表された新機能“ホーム”と“タイムライン”により、それはさらに強固なものとなった。

 筆者は週刊アスキーのWebにおけるプレゼンスの拡大と事業化を担当している。オンラインメディア『週アスPLUS』の立ち上げから運営、最近ではコマース領域が中心だ。編集の現場からは遠ざかっているが、LINEカンファレンスでは直接会場に足を運び、取材に臨んだ。本稿では、Web事業に携わる立場の見解も交えたコラムとして、LINEカンファレンスを紐といてみようと思う。今何がおきているのか、これから何がおきるのか、読者諸氏が未来を考えるときに、材料のひとつとして加えていただければ幸いだ。

 なお、発表内容についてはこちらのニュース記事をご一読いただきたい。

LINE、4500万ユーザーをベースに総合プラットフォーム・SNS化へ

 

■「Facebookを超える」というコメントの意味

 LINEはこれまで“国産サービス”、“日本発”であることを強調してきた。韓国に本社をおくNHN Japanは、オンラインゲーム事業者としてハンゲームのブランドで国内展開を始め、2009年に韓国大手検索エンジンNAVERを再上陸させた(参考記事)。その後、2010年にはLivedoorを傘下に収めたのも記憶に新しい(参考記事)。こうした経緯のため、「LINEは国産か、否か」というテーマで議論の的になることがある。読者諸氏におかれては各論あるとは思うが、LINEの企画・開発はNHN Japanなので、ひとまずここでは国産ということで話をすすめたい。

 電話帳に紐づいた現実の人間関係を基本とし、インターネットを介して友達や家族とメッセージや通話ができる。文字だけでなく、「スタンプ」と呼ばれる感情表現用のイラストをメッセージに加えることができ、これによりテキストや従来の絵文字とは異なる独自性をもっている。これがLINEの主な特徴だ。では、『LINE』と競合するプロダクトが同じく無料コミュニケーションツールのskypeでないのなら何か。
 答えは簡単だ。“国産”で“インターネットを介して友達とつながる”、誰もが知っていて、誰もがIDくらいはもっているサービス。『mixi』だ。何より、mixiとLINEは得意とするユーザー層もかなりの部分で競合する。

 しかし、LINEの成長率を表すスライドで使われた比較対象にmixiはない。LINEのとなりに並んだアイコンと折れ線グラフはFacebookとTwitterだった。

LINEがmixiを2度殺した日 次の標的は誰か

 さらに、カンファレンス中で社長の森川氏は、「LINEはFacebookのスケールを超えたい」とコメントを残した。これはリップサービスではないだろう。彼らは、先行する国産SNSであるmixiについて一切触れることなく、LINEのターゲットをFacebookにロックオンしたのだ。

 ここで、カンファレンスのスクリーンから読み取ったことを読者諸氏と共有しておきたい。すでにお気づきの方も多数いるだろうが、プレゼンテーション中で使われた映像やインフォグラフ、各種数値データなど、スクリーンに投影された映像で使われていた文字についてだ。ひらがな、カタカナ、漢字といった2バイト文字はひとつもなく、使われていたのは英語のみ。日本で行われたカンファレンスではあるが、最初から日本ではなく世界を意識したイベント構成であることがよくわかる。(参考サイト:Ustreamアーカイブ)カンファレンス後、壇上から下りてきた登壇者を囲んでのメディアによるぶら下がり取材が実施された。メディアの人間にはいつもの光景だが、この最後に、海外メディア向けに別室でのフォトセッションと質疑応答も用意された。彼らのフィールドはすでに日本だけではなく世界なのだ。

 さて、もう一度確認しよう。LINEカンファレンスで、登壇者は一言も「mixi」という言葉を使わなかった。国産SNSでありながら、終始、海外を意識したカンファレンスだった。これは「mixiはすでに競合ではない」というメッセージと受け止めてよいだろう。

 本稿の執筆中にmixiプラットフォームにDeNAが提供していた同社の看板ブランド『怪盗ロワイアル』のソーシャルアプリを終了するとの情報が入った。LINEカンファレンスのニュース記事を担当した鈴木と「こういうことは重なって起きるなあ」などと話していたとき、ふと、カンファレンスの質疑応答のシーンを思い出した。「mixi」という言葉を口に出さなかったのは、登壇者だけではなかった。質問を投げかける記者たちからも「mixi」という言葉は聞かれなかった。国産SNSのカンファレンスだったにも関わらず、だ。LINEは、それほどまでに強烈な存在感を放つようになっていた。

 華々しい演出で世界ランカーとして名乗りをあげたLINE。登壇者も、記者も、一時代を築いたmixiをLINEと比較することはなかった。2012年7月3日、LINEはmixiを超えたのだ。

 

■LINEがもたらす創造と破壊

 LINEが年内1億ユーザーという目標を達成したとき、日本人の何人がLINEユーザーになっているかを考えてみたい。彼らは日本でのシェアは目標で4割、実際には3割程度ではないかと予測している。
 日本だけで3000万ユーザーだ。そして目標の4000万という目標も驚く数字ではない。LINEが握っている人間関係(彼らのいうリアルグラフ)は、ユーザーの電話帳でつながった友人や家族だ。身近な誰かがLINEを使い始めたとき、その誰かにすすめられたとき、そして、自分以外のみんなが使いはじめればユーザーは爆発的に増えていく。いずれ、LINEを使っていないと困ってしまうときがきたとき、LINEをインストールする人は増えていくだろう。現在メジャーなWebサービスが、かつてそうだったように。
 そうして、来年は何人の日本人がLINEを使っているだろうか? 2年後は? 3年後は?

 数日のあいだにミリオン単位でユーザーが拡大しているのがソーシャルネットワークサービス『LINE』の実態だ。そして、いつの日か、LINEがコミュニケーションの主流になる日がやってきたとしよう。CSMOの舛田氏はLINEのプラットフォーム化を「ユーザーが24時間365日使うスマートフォンのゲートウェイ、ポータルサイトのような」と表した。これは、読者諸氏がTwitterやFacebook、Google+を起動しているように、日本中の誰もがLINEを起動することを指し示している。

LINE4500万ユーザーをベースに総合プラットフォーム、SNS化へ

 LINEにはいわゆるポータルサイトのスマホ版的なホーム画面が追加される。彼らが億単位のユーザーを抱えるようになったとき、スマホのポータルの地位を得るだけで満足するだろうか。質疑応答で、「PC、タブレットはあくまでサブ的な役割。しかし、トレンドがそう(PC、タブレットのブラウザとの連携が主流)ならアジャストしていく」とした。まさしくそうなるだろう。サラリーマンの職場の昼休み、主婦のネットショッピング。パソコンやタブレットのブラウザで、ユーザーが一番最初に開くWebサイトをLINEに塗り替えないわけがない。そしてNHN Japanにはそれができる背景がある。

 なぜなら、彼らにはポータルの運営・集客ノウハウがすでにあるのだ。ポータルサイトであり、一般層へも普及しはじめた2ちゃんねるまとめブログ群を要する『ライブドア』、検索エンジンに端を発し、UGCサービス『NAVERまとめ』で億単位のアクセスを稼ぐNAVER。このふたつをLINEと切り離しておく手はない。特にライブドアの大規模トラフィックをさばく技術力は折り紙つきだ。(『4Gbpsを超えるWebサービス構築術』の一読をおすすめする)
 そのとき苦境に立たされるのは、すでにmixiではない。日本に限っていえば、それは国内最大のポータルサイト、Yahoo! JAPANだ。

 そして、2年後か3年後、LINEカンファレンスが再び開催されるなら、彼らはYahoo! JAPANには一切は触れず、Googleをロックオンするかもしれない。(ただし、Googleのポジションが今と変わらなければ、という前提の他愛のない妄想だが)

 Web業界の末端に座する身として、LINE Channelは魅力だ。エコシステムを掲げ、サードパーティのAPI利用について「法人か個人かというのは問わない」というコメントも出た。いずれAPIは解放され、LINE Channel上では個人開発者でもアプリを販売できるだろう。
 彼らの絵図どおりに進めば、来年には1億人へのリーチがあるマーケットがそこにある。Webを生業にする人々にとっては新たなビジネスチャンスが到来する。
 とはいえ、開発者登録費用など、NAVERまとめの公式アカウントのような価格設定(※3ヶ月1000万円~としている:参考サイト)は避けてもらいたいところだ。そうした価格帯で「さあどうぞ」と手まねきされても、中小企業や個人には到底手は出ない。

 「Don't be Evil」というGoogleのスローガンを思い出す。身近な人間関係のインフラ(プラットフォームの次に彼らは社会インフラを目指すだろう)として、彼らが市場をコントロールする側にまわったとき、それを利用するサードパーティに何を求めるか。「無料」の対価にユーザーから何を得ようとするか。

 Googleやfacebookがそうであるように、グローバルな巨人たちが規模の拡大につれて正負の両面をそれぞれ色濃くしていくのはネットの常だ。とりあえず、今は、いつか訪れるであろう巨人化がもたらす不安が、馬鹿げた杞憂であると思うことにしよう。
 全世界で毎月500万ユーザーが増え続けるというスピード感は前人未到の領域だ。これから何が起きるのか、どう変わっていくのか、予測がつかないのは、彼らもユーザーである私たちも同じなのだ。

 LINEがEvilにならないよう願っている。清濁ともに、LINEの可能性はいまだ未知数だ。

(つづきはこちらから:LINEの抱える課題とは何か 自ら積み上げた高いハードル

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