情報漏えい事件が多発する中、ドキュメントレベルでセキュリティを確保する
黒塗りPDFからの情報漏洩、請求書の改ざん、悪意のあるPDF 高いセキュリティでPDFを活用する方法
2026年10月16日 12時00分更新
個人情報を黒く塗りつぶして公開したPDFから、隠したはずの文字が読めてしまった。取引先を装ったメールで届いた請求書を信用したら、振込先口座が書き換えられており、億単位の被害が発生した。どちらも実際に起きたトラブルだ。PDFはビジネス文書のやりとりに欠かせない存在だが、その安全性をどこまで意識しているだろうか。
アドビは2026年10月6日、オンライン記者説明会「AI時代のセキュアなPDF活用」を実施。アドビ株式会社デジタルメディア事業統括本部営業戦略部ビジネスデベロップメントマネージャーの岩松健史氏が、実際のトラブルやAcrobatのデモを交え、PDFの受信・送信時に必要な対策とAI機能の安全性を解説した。
黒塗りPDFから情報漏洩、請求書の改ざんにも注意
アドビの販売パートナーによると、今年に入って中小企業からセキュリティ対策の問い合わせが増えたという。経済産業省も、企業の対策状況を★3や★4などの段階で可視化する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」について、2026年度末頃の申請受付開始を目指す。取引先とデータをやりとりする現場では、メールに添付するPDFの安全性にも注意が必要だ。
「企業間の受発注というと、EDIやクラウド型の専用システムを使うイメージがあるかもしれません。しかし、実際にはメールにファイルを添付してやりとりするケースも多いそうです。メールサービスでウイルスチェックを行っていても、危険な添付ファイルがすり抜ける可能性は残ります。メールで送受信するファイルそのものの安全性にも注意が必要です」(岩松氏)
危険は、ファイルに仕込まれたマルウェアだけではない。2026年3月には、行政機関が情報開示請求に応じて交付したPDFから、隠したはずの情報が読めてしまうトラブルが起きた。黒く塗りつぶした部分にも文字データが残っており、コピーすれば隠した内容が読めてしまったのだ。
別の事例では、企業の役員が大学での講義中に不適切な発言をして炎上し、会社が謝罪文をPDFで公開した。ところが、PDFの作成者欄に問題を起こした役員本人とみられる名前が残っていたため、会社名義の謝罪文を本人が書いたのではないかと疑われ、さらに批判が広がった。
金銭被害に直結するのが、請求書PDFの振込先を書き換える手口だ。攻撃者が実際の取引で使われていた請求書を入手し、口座情報を変更して送りつける。受信側は書式や取引内容が本物と同じなので信用し、実際に億単位の金額を振り込んでしまった。
悪意あるPDFを受け取ったとき、Acrobatはどう守る?
PDFには、WordやExcelなどのファイルを添付したり、JavaScriptで処理を実行したりする機能が備わっている。攻撃者はこれらを悪用し、マルウェアを仕込んだ添付ファイルを開かせたり、PDF内のリンクから偽サイトへ誘導したりする。
AcrobatやAcrobat Readerには、危険な処理の影響を抑える「保護モード」が搭載されている。PDFを隔離された環境で開き、OSやほかのファイルへのアクセスを制限する仕組みだ。
「保護モードは通常、初期設定で有効になっているため、意識する機会は少ないと思います。WindowsではAppContainer、macOSではサンドボックスというOSの機能を使い、PDFからOSのファイルや設定に影響を与えないようにしています。ただ、すべての操作を制限すると保存や印刷もできません。そこで、ブローカーというプロセスが間に入り、安全性を確認したうえで必要な処理だけを許可する仕組みです」(岩松氏)
不審なPDFを開く場合は、Windows版の「保護されたビュー」で操作をさらに厳しく制限することもできる。保存や印刷、OCR、フォーム入力などが禁止され、文書の閲覧に必要な操作だけが許可される。初期設定では無効になっているため、利用するには設定の変更が必要だ。
PDF内のリンクについては、接続を許可するサイトや禁止するサイトを登録できる。許可リストにないリンクをクリックすると確認画面が表示され、利用者が接続先を確認したうえで開くかどうか判断する。
質疑応答では、PDF内のJavaScriptを無効にする設定についても質問が出た。JavaScriptはボタン操作に応じて処理を実行するなどの用途に使われるが、攻撃に悪用される恐れもある。無効にすれば安全性を高められる一方、JavaScriptを使った機能は動かなくなる。ただし、一般的な業務用PDFでは利用される機会が少なく、無効にしてもほとんど支障はないという。
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