畑の温度センサーや水道メーター、荷物の位置を知らせる小さな端末など、コンセントもWi-Fiもない場所からデータを送りたいことがあります。そこで使われるのが「LPWA」です。なぜ少ない電力で遠くまで通信できるのか、代表的な方式とIoTでの使い方を解説します。
LPWAは「Low Power Wide Area」の略で、消費電力を抑えながら広い範囲で通信する無線技術の総称です。LTE-MやNB-IoT、LoRaWAN、Sigfoxなど、特徴の異なる複数の方式が含まれます。これらを使って構築するネットワークを「LPWAN(Low Power Wide Area Network)」と呼ぶこともあります。
LPWAの大きな特徴の一つは、なんといってもその省電力性です。必要なときだけ少量のデータを送り、それ以外の時間は通信機能を休ませることで、消費電力を抑えます。たとえば温度センサーなら、測定した数値を送ったあと、次の測定まで通信を休止できます。LTE-MやNB-IoTにはPSMやeDRXと呼ばれる省電力機能もあり、通信していない時間の消費電力をさらに抑えられます。
そのため、電源を確保しにくい場所でも、電池だけで長期間動かす機器を作れます。実際の電池寿命は通信間隔や送信するデータ量、端末の構成などによって大きく変わりますが、用途や設計によっては電池交換なしで年単位の動作も可能です。農地やメーター、設備監視など、頻繁に人が訪れにくい場所へ設置するIoT機器では、この省電力性が大きなメリットになります。
もう一つの大きな特徴が、通信距離の長さです。LPWAは通信速度を抑える代わりに、Wi-FiやBLEよりも広い範囲をカバーできます。遠くまで届かせる仕組みは方式によって異なり、狭い帯域を使ったり、信号を拡散したり、データを繰り返し送ったりすることで、弱い電波でもデータを受信しやすくしています。たとえばLoRaWANでは、周囲の環境によって数km離れた場所との通信も可能です。もちろん、実際の通信距離は、建物や地形、アンテナの位置などによって変わります。
代表的な方式を理解するうえでポイントになるのが、利用する周波数帯とネットワークの作り方です。LTE-MやNB-IoTは、携帯電話事業者の周波数帯と基地局を利用する「セルラーLPWA」です。対応する通信モジュールとSIMを端末に組み込み、携帯電話網を通じてデータを送ります。
LoRaWANやSigfoxは、携帯電話網とは異なる「ノンセルラーLPWA」に分類され、日本では主に920MHz帯を使います。LoRaWANは利用者がゲートウェイを設置し、工場や農場などに独自のネットワークを構築できます。Sigfoxは仕組みが異なり、日本では京セラコミュニケーションシステムが通信事業者としてネットワークを運用しています。
セルラーLPWAは、通信事業者によって利用できる方式にも違いがあります。NTTドコモはNB-IoTを2020年3月31日に終了しましたが、LTE-Mは現在も利用できます。KDDIもLTE-Mを提供しており、ソフトバンクはLTE-MやNB-IoTに対応しています。セルラーLPWAを利用するときは、端末が対応する方式と、その方式を提供する通信事業者を確認する必要があります。
LPWAはIoTでどう使われる?
LPWAは、広い範囲に点在するセンサーから少量のデータを集める用途に向いています。農地なら土壌の水分や気温、水位などを数十分から数時間おきに送り、離れた場所から状態を確認できます。水道やガスのメーターでも、使用量などの小さなデータを定期的に送る通信に利用されています。
どの方式が適しているかは設置環境によって変わります。携帯電話のサービスエリア内に端末が点在する場合は、基地局を自分で用意する必要がないLTE-Mなどを利用できます。工場や施設の敷地内に多数のセンサーを設置する場合は、LoRaWANのゲートウェイを置き、各センサーからのデータをまとめて受け取る構成も考えられます。
トラックや建設機械、レンタル品など、移動するモノの管理にはLTE-Mが適しています。LTE-Mは基地局をまたいで通信を引き継ぐハンドオーバーに対応しているため、GPSで取得した位置を一定間隔で送りながら広い範囲を移動する用途にも使えます。位置情報に温度や振動などを組み合わせれば、輸送中の荷物や機器の状態も確認できます。
実際の構成例として、ソラコムの「SORACOM Air for セルラー plan-KM1」と「GPSマルチユニット SORACOM Edition」があります。plan-KM1はKDDIのLTE-Mネットワークを利用する通信プランです。GPSマルチユニットは位置情報に加えて温度、湿度、加速度を取得でき、充電式バッテリーも内蔵しています。両者を組み合わせれば、荷物や車両の位置、輸送中や保管中の温湿度などをクラウドへ送る構成を作れます。
LPWAを選ぶときは、端末をどこに置くのか、移動するのか、何をどのくらいの頻度で送るのか、電池でどのくらい動かしたいのかを考えることが重要です。こうした条件を決めていくと、携帯電話網を使うLTE-MやNB-IoTがよいのか、自前のネットワークを作れるLoRaWANがよいのかなど、用途に合った方式を選びやすくなります。
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