AIワークスペース「Notion」を提供するNotion Labs Japanは2026年10月1日、メディアラウンドテーブルを開催。CEOのアイバン・ザオ氏、CTOのマックス・ショーニング氏、そして8月に日本法人のゼネラルマネージャーに就任した青木友氏が登壇し、AI領域におけるコンテキストレイヤーへの注力やエンタープライズ市場の課題と取り組みについて説明した。
個人利用にとどまるAIの利活用 壁はコンテキストと組織の課題
メディアラウンドテーブルはAIと人間の共創をテーマにした「Think Together」キャンペーンの動画でスタート。毎年日本に来ているというNotion CEOのアイバン・ザオ氏が登壇し、AIによるナレッジワークの現状と課題について解説した。
メモやタスク管理、WiKi、データベースなどとして利用可能な万能アプリとして知られるNotion。現在はサービスにAIを組み込み、「AIと共同で業務を遂行できるツール」としてスタートアップからエンタープライズまでさまざまな用途で用いられている。2020年頃には100万人程度だったユーザー数は4年間で100倍増え、2024年7月に1億人を超えたことが発表されている。
では、ユーザー企業側のAX(AIトランスフォーメーション)の進捗はどのように進んでいるのか。ザオ氏はAIの利用フェーズを、AIを思考のパートナーとして利用するレベル1、AIエージェントをアシスタントして利用するレベル2、自律的に動作するAIをチームメイトとして共創しているレベル3、そして会社のOSレベルで利用するレベル4の4段階に分解。その上で「多くの企業はAIがまだ個人利用にとどまっている」と指摘した。
調査データを見てみると、レベル1の組織が57%、レベル2が31%なのに対して、レベル3は10%、レベル4は2%にとどまっており、特にレベル2からレベル3に進むためには大きな壁が存在している。この背景には「コンテキストの分断」と「組織文化の課題」が存在するという。
Notionがコンテキストレイヤーで強みを発揮する3つの理由
前者のコンテキストの分断は、AIに適切なコンテキストを提供できないツールやデータの分散が原因であり、統合したコンテキスト基盤が必要になる。その点、NoitonはMCPを介して、さまざまなツールと連携しつつ、ガバナンスを提供するAIコンテキストレイヤーを提供する。
現在、AIツールの市場はLLMやエージェント領域がホットになっているというのが、Noitonの認識。これに対して、Noitonはコラボレーション、コンテキスト、ガバナンスを実現するコンテキストレイヤーに注力する。「自動化をアンロックし、レベル3への道が開けるコンテキストレイヤーで最高になるのが、Notionの戦略だ」とザオ氏は語る。
ザオ氏によると、Notionとしての強み、そしてコンテキストレイヤーに取り組み意義は大きく3つある。Notionというアプリケーションの特性上、非構造化データの入れ物となるデータストアに磨きをかけてきたこと、LLMのモデルから切り離されているためベンダーロックインを排除できること、そしてNotion自身のイノベーションのスピードが速く、アーキテクチャの刷新に果敢にチャレンジしていることだという。
後者の組織文化の課題は、AIを前提としたユーザー自身のマインドセットの変更が必要になる。実際、Notionの組織内においても、全体最適のための規律を重視した「マーチングバンドモード」から、個人のアドリブやチャレンジを重視した「ジャズモード」に大きくシフト。「変化に対応していけるジャズモードへのシフトは時にはつらい。われわれも3年かかった」とザオ氏は語る。
拡がるエンタープライズ領域での利用 NECや慶應義塾大学の事例も披露
現在、Notionの成長で大きいのは、エンタープライズの領域だ。2026年8月時点で、エンタープライズ領域の年間経常利益(ARR)は169%。その成長エンジンとなっているのが、ARRのうち2/3をAIの関与だ。
特に利用が拡大しているエンタープライズにおいては、エージェントを実験的な利用から全社展開に移行する段階において、複数の課題を抱えることになるという。エージェントやスキル、ワークフローを異なるモデルやシステム間で利用するためのポータビリティの課題、権限やデータアクセス、トークンを適切に制御するためのガバナンスの課題、そしてエージェントの活動を可視化し、使用したトークンが価値を生み出しているかを把握するための投資対効果の課題の3つだ。
Notion CTOのマックス・ショーニング氏は「こうした課題をクリアするためには、どのようにワークフローを標準できるかが課題になってくる」と語り、スキルやタスクのライブラリー化を推進する。その上で、人、コンテキスト、意思決定とのつながりを保ちつつ、AIエージェントによる業務を組織全体へ拡大するための基盤を提供するという。
急成長を遂げる日本市場においては、エンタープライズの事例がグローバルと比べて先行しているという。事例として挙げられたのは500近いコーポレートIT部門のプロジェクトを1つのワークスペースに集約しているNEC。プロジェクト計画やタスク、議事録、意思決定がAIによってダッシュボードに集められ、経営層と現場がつねに最新状況を確認できるようになっているという。
また、168年分のナレッジを集約し、世界屈指のAIキャンパスを目指す慶應義塾大学は、全キャンパスの教職員がNotionを利用。導入から90日間で80%の教職員がNotionを利用し、25万に及ぶAIアクションが実行されたという。これを実現するため、慶應義塾大学とNotionは合同の導入チームを組み、ワークスペースの設計や研修構築、方針・手順・研究・日々の業務をAIに最適化すべく、信頼できるコンテキスト層を構築しているという。
さらに同日付けでNotionのISMAP(Information system Security Management and Assessment Program)登録完了も発表された。ISMAPで定められるセキュリティやガバナンスの要件をクリアしたことで、公共機関やエンタープライズ領域での利用を加速すると見られている。日本法人であるNotion Labs Japanゼネラルマネージャーの青木友氏は、「現在、多くのプレイヤーがエージェントに注力しているが、Notionはコンテキスト整備に注力し、エンタープライズ事業を急速に高めていく」と抱負を語った。
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