画面フリップ型モバイルノートPC「VAIO T」実機レビュー=キーボード・タッチパッドもVAIOクオリティー
2026年10月04日 00時01分更新
変形PCにはさまざまなスタイルがある。ディスプレーを360度回転させるタイプ、ディスプレーを脱着するタイプ、そしてちょっと昔には、ディスプレーが横方向に回転する製品もあった。現在は、ディスプレー360度回転型とディスプレー脱着型が主流となっているが、筆者にはひとつ不満がある。
ディスプレー360度回転型は、タブレット状態にするとキーボード面が背面に回るため、持った際にボタンやキーを押してしまうのが気になるのだ。もちろん、このスタイルを採用したノートPCは、キーボードを背面に回した際にキー入力を無効化しているので、実用上問題ない。しかし、無効化されているとはいえ、キーを押してしまうこと自体がやはり気になるし、耐久性という面でも少し不安が残る。
そんな筆者が、変形ノートPCの中で理想と考えていたのが、マルチフリップ機構を採用した「VAIO Z」だ。マルチフリップスタイルであれば、タブレット状態にしてもキーボードが背面に回ることはない。当然、持った際に誤ってキーを押してしまうこともないのだ。
このマルチフリップ機構を採用したノートPCは長らくディスコンとなっていたが、今回、同様の変形機構を継承した13.3型ノートPC「VAIO T」が新たに発売された。今回は本製品をVAIOから借りたので、実機レビューをお届けしよう。
憧れのフリップ型2in1が復活
ファインレッドか勝色特別仕様か悩もう
「VAIO T」はOSにWindows 11 Pro/同Home、プロセッサーにCore Ultra 7 356H/Core Ultra 5 325を採用。メモリーは16GB/32GB/64GB、ストレージはスタンダードSSDの512GBと、第5世代ハイスピードSSDの512GB/1TB/2TBが用意されている。
ディスプレーは1種類で、13.3型WQXGA液晶(2560×1600ドット、アスペクト比16:10、グレア、タッチ対応)を採用。ディスプレー上部には9.2MPカメラを内蔵し、Windows Hello顔認証とAIユーザーセンシングに対応。マイクはトリプルマイク仕様で、Dolby Atmos対応のステレオスピーカーも装備している。
インターフェースは、USB Type-C(Thunderbolt 4、USB4、USB Power Delivery、DisplayPort 2.1対応)×2、USB 3.0 Type-A×2(うち1基は給電機能付き)、HDMI×1、有線LAN(1000BASE-T)×1、3.5mmコンボジャック×1を用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 7とBluetooth 5.4をサポートしている。
本体サイズは約312×224.6×14.6~19.6mm。重量は構成によって異なるが、約1.253~1.368kgとなる。バッテリーは標準バッテリーと大容量バッテリーが用意されており、大容量バッテリー使用時は動画再生時で約16.5~18時間、アイドル時で約28~29時間。標準バッテリー使用時は動画再生時で約11.5~12.5時間、アイドル時で約19.5~21時間動作すると謳われている。
購入時にはカスタマイズが可能で、OS、プロセッサー、メモリー、ストレージだけでなく、本体カラーはファインブラックまたはファインレッド、キーボードは日本語配列(かな文字あり)、日本語配列(かな文字なし)、英語配列から選択可能。
バッテリーも大容量バッテリーと標準バッテリーから選択できる。さらに恒例の「勝色特別仕様」も用意されており、こちらのモデルでは上位プロセッサーのCore Ultra X7 358Hも選択可能だ。
今回、てファインレッドを試用したが、このファインレッドが非常に鮮やかで美しい。勝色を購入するか、ファインレッドを購入するか、はたまたファインブラックを選択するか。非常に悩ましい選択となる。
内蔵カメラを活用して血管情報と心拍情報を測定する
「VAIOウェルネスケア」対応
本製品とほぼ同時にリリースされたユニークな機能が、独自アプリケーションの「VAIOウェルネスケア」。内蔵カメラを活用した非接触AIセンシング技術により、血管情報、心拍情報を測定可能で、日々の変化を手軽に確認できる。
ただし、この血管情報、心拍情報は、カメラから取得したデータに基づき、統計学的処理により構築したAIモデルが推定した値であり、医学的に確立されたものではない。体調に異変を感じたのであれば病院に行くべきだし、より正確な情報を計測したいのであれば、医療機器を利用するべきであることは言うまでもない。
マルチフリップ機構で3つのスタイルに変形
残念ながらペン入力はできない
本製品最大の売りは、マルチフリップ機構によりスムーズにスタイルを変更できること。ディスプレー部はマグネットで固定されており、上面の角を親指で押しつつ、中指でヒンジ付近を押し込めば、スムーズに変形できる。
マグネットの磁力は強めなので、クラムシェルスタイルで利用している限り、勝手に固定が外れてディスプレーがパタパタと動いてしまうようなこともない。
また、ディスプレー360度回転型ノートPCとは異なり、デスクに置いたままクラムシェルスタイル、ビューモード、タブレットモードへ変形可能だ。そして前述の通り、変形してもキーボードが底面側に回り込むこともない。やはり変形PCとして非常に理にかなったデザインだと筆者は考える。
本製品で非常に残念なのが、ペン入力に対応していないこと。マルチフリップスタイルの「VAIO Z」ではデジタイザースタイラスペンを利用できたが、「VAIO T」はタッチ操作のみで、デジタイザースタイラスペンには対応していない。
簡単なイラストを描いたり、書類に署名したりするぐらいであればタッチパネルを指で操作してもいいが、精細な絵を描くのはさすがに難しい。また、ペン入力を前提としたパームリジェクションを利用できないのも、本格的に絵を描く用途ではマイナス点だ。次期製品ではデジタイザー層を追加し、ペンでも操作可能なマルチフリップスタイルのノートPCの完成形としてリリースされることを強く期待したい。
キーボード・タッチパッドは
さすがVAIOのクオリティー
キーボードとタッチパッドの操作感は非常に良好だ。キーボードはキーピッチが約19mm、キーストロークが約1.5mm確保されており、打鍵感もいい。タッチパッドは物理ボタンが別体式となっており、こちらにも上質なクリック感が与えられている。
また、ディスプレーを開くとキーボード面に適度な傾斜がつくチルトアップヒンジ構造が採用されており、タイピングしやすい。個人的には、キートップに手の脂が目立ちにくい表面加工が施されている点も非常にありがたい。
打鍵感に優れたメーカーはいくつかあるが、VAIOのキーボードは、その中でも個人的に5本の指に入るほど打鍵感がいいと感じている。これは強くアピールしておこう。
ベンチマークスコアも良好
最新インテルNPUでエッジAIも可能
最後にパフォーマンスをチェックしよう。まずCPUベンチマーク「CINEBENCH 2024」のCPU(Multi Core)は908pts、CPU(Single Core)は111pts、「CINEBENCH 2026」のCPU(Multiple Threads)は3793pts、CPU(Single Threads)は470ptsとなった。
これだけのCPU性能であれば、ウェブブラウジングやOfficeアプリ、ビデオ会議などの一般用途はもちろん、複数アプリの同時利用でも十分すぎるほど余裕がある。写真のRAW現像やフルHD解像度の動画編集など、ある程度負荷の高いクリエイティブ用途にも十分対応できるパフォーマンスだ。
「CINEBENCH 2024」のCPU(Multi Core)は908pts、CPU(Single Core)は111pts、「CINEBENCH 2026」のCPU(Multiple Threads)は3793pts、CPU(Single Threads)は470pts
3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark」のPort Royalは1531、Time Spyは3328、Fire Strikeは6454、Wild Lifeは21254だった。
また、3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは13325(とても快適)、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)のスコアは3462(普通)を記録した。
3Dグラフィックス性能については、軽量級のゲームや、少し前のタイトルであれば、画質を調整すればストレスなくプレイできる。もっとリッチなゲームをプレイしたいのであれば、「勝色特別仕様」のCore Ultra X7 358H搭載機を選びたいところだ。
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは13325(とても快適)、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)のスコアは3462(普通)
試用機は評価機のため、カスタマイズ項目に存在しないPCIe Gen4 x4接続256GB SSD「SAMSUNG MZVL8256HFJD-00B07」が搭載されており、「CrystalDiskMark 9」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は6354MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は3431MB/sを記録した。第5世代ハイスピードSSDは価格がグッと上がるので、ストレージ性能を最優先しないのであれば、スタンダードSSDを選択するのもアリだろう。
試用機は「SAMSUNG MZVL8256HFJD-00B07」を搭載。「CrystalDiskMark 9」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は6354MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は3431MB/s
AIベンチマーク「UL Procyon AI Computer Vision Benchmark」のNPU - float16は1235、NPU - Integerは2242を記録した。Core Ultra 7 356Hは最大50TOPSのNPUを搭載しているだけに、AI処理能力は高い。NPUがCPUやGPUのAI処理を肩代わりできる状況では、処理速度の向上や低消費電力化などの恩恵を受けられる。
最後にバッテリー駆動時間については、ディスプレー輝度、ボリュームともに40%でYouTube動画を連続再生したところ、バッテリー残量100%から80%になるまで4時間15分要した。
単純計算でバッテリー残量0%までであれば約21時間17分動作することになる。今回の試用機には70Whのバッテリーが搭載されているが、Core Ultra 7 356H搭載機の省電力性能と相まって、モバイルノートPCとして群を抜いたスタミナ性能を備えている。
タブレット型になるマルチフリップ機構の復活は大歓迎
あとはペン入力だけ!
マルチフリップ機構を復活させた今回の「VAIO T」は、変形ノートPCとして非常に魅力的なモデルだ。マルチフリップ機構を搭載しているぶん重量は少し重めだが、本製品1台でノートPC、ビューモード、タブレットモードの用途をカバーできる点は非常に大きい。ど派手なファインレッドのボディも、個人的には非常に気に入った。
本当に唯一と言っていいぐらい残念なのが、デジタイザーペンに対応していないこと。ただ、筆者の場合は簡単な操作であれば導電性のタッチペンでカバーできる。しかし、本製品をお絵かきノートPCとして使いたい方も多いことだろう。
次期モデルではぜひスタイラスペンを復活させ、さらに完成度を高めてほしい。そう強く期待して、本レビューの結びとしたい。
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