週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

同時通訳とAI検索が「声」と「文字」で体の一部になる=AIグラス「INMO GO 3」実機レビュー



 今年は「AIグラス元年」と呼びたくなるほど、数多くのAIグラスがリリースされている。ぱっと見はよく似たデザインの製品が多く、カメラの搭載、非搭載といった違いはわかりやすいが、細かく見ていくと、ハードウェアのスペックだけでなく、搭載機能やAIの処理方法まで製品ごとに大きく異なっている。

 そこで今回は、発売されたばかりの「INMO GO 3 AIスマートグラス」の実機をINMOから借りたので、実際の使い勝手を確かめながら、ほかの主要なAIグラスとなにが違うのかをチェックしていこう。

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3 AIスマートグラス」9万9800円

640×480ドットの両眼ディスプレー
カメラ、スピーカーを装備

 

 INMO GO 3はディスプレー、カメラ、スピーカーを装備した、いわゆる全部盛りのAIグラスだ。

 両眼対応のグリーンMicro LEDディスプレーと回折光導波路を採用し、解像度は640×480ドット、視野角は30度、最大輝度は1500ニトある。

 さらに800万画素、120度の超広角カメラ、4基のマイク、2基のスピーカーも内蔵している。本製品にはカメラを物理的に遮蔽できる「プライバシーカバー」も同梱。本体重量は約58gだ。

 ここで現在国内で購入できる主要なAIグラスのハードウェアスペックを比較しておこう。AI関連の仕様を含めると読みにくくなるので、ここではディスプレー、カメラ、オーディオ、重量のスペックに絞っている。

スペック INMO GO 3 Rokid スマートAIグラス Even G2 Ray-Ban Meta(Gen 2)
価格(税込) 9万9800円 10万9890円 9万9800円~ 7万3700円~
ディスプレー 両眼Micro LED 両眼Micro LED 両眼Micro LED なし
解像度 640×480ドット 480×400ドット 640×350ドット
視野角 30度 30度 27.5度
最大輝度 1500ニト 1500ニト 1200ニト
カメラ 800万画素 1200万画素 なし 1200万画素
オーディオ マイク×4、スピーカー×2 マイク×4、スピーカー×2 マイク×4、スピーカーなし マイク×5、スピーカー×2
重量 約58g 約49g 約36g

 一口にAIグラスと言っても、それぞれのコンセプトは大きく異なる。Even G2はカメラとスピーカーを搭載せず、約36gという軽さを実現。Ray-Ban Metaはディスプレーを搭載せず、カメラ、オーディオ、Meta AIを中心に構成されている。それに対してINMO GO 3とRokid スマートAIグラスは、ディスプレー、カメラ、マイク、スピーカーをすべて備えた「全部盛り」に近い構成だ。

 INMO GO 3の売りのひとつが、交換式バッテリーだ。容量は270mAhで、本体装着ぶんとはべつに予備バッテリーがひとつ付属する。

 バッテリー1個で約8時間、高負荷な会話翻訳などでは約2.5~3時間の利用が可能とされている。バッテリーは素早く交換できるので、使い終わったバッテリーを充電ケースで充電しながら、INMO GO 3を使い続けられるわけだ。

 ちなみに充電ケースでは、バッテリーを約3~4回フル充電できる。一般的な使い方であれば、日中の活動時間はカバーできそうだ。

「INMO GO 3」実機レビュー

本体前面と本体背面。背面から見た左側のツル終端がバッテリーだ

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

本体上面と本体下面

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

左側面と右側面

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

右側のツルに操作部が集中している。側面の突起の間がタッチパッドで、写真左側が電源ボタン、右側がGOボタン。それぞれシングルクリック、ダブルクリック、スワイプ、長押しなどに機能が割り当てられている。

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

800万画素、120度の超広角カメラは正面から見て左側に配置

「INMO GO 3」実機レビュー

カメラを物理的に遮蔽できる「プライバシーカバー」は9枚同梱

「INMO GO 3」実機レビュー

バッテリーは真っ直ぐ引っ張るだけで抜ける

「INMO GO 3」実機レビュー

充電ケースではバッテリーを3~4回フル充電できる

 本体の実測重量は58.83g。一般的なメガネより重く、テンプルも太い。しかし実際に装着してみると、意外に普通のメガネと装着感は大きく変わらない。

 ただ、筆者は頭囲が64cmとかなり大きいため、装着していると若干の締め付けられ感はあった。次期モデルでは、テンプルがもう少し外側に広がる余裕も設けてほしいと思う。とはいえ一般的な頭囲の方であれば、半日ぐらいつけっぱなしでも、それほど不快には感じないだろう。

「INMO GO 3」実機レビュー

本体の実測重量は58.83g

「INMO GO 3」実機レビュー

バッテリーの実測重量は8.4g

640×480ドットの表示は
文字情報との相性がいい

 

 INMO GO 3のディスプレーはフルカラーではなく、グリーン単色表示だ。ほかのAIグラスと同様に、写真や動画を鑑賞するためのものではなく、翻訳、字幕、AIからの回答、ナビゲーション、通知、テレプロンプターなど、文字や簡単なグラフィックスを表示するためのディスプレーだ。

 操作には電源ボタン、GOボタン、テンプルのタッチ操作に加えて、専用アプリも利用できる。

 GOボタンの長押しには、会話翻訳、同時通訳、テレプロンプター、写真撮影などの頻繁に使用する機能を割り当てられる。オプションとして発売された「INMO RING 4」からも操作可能だ。

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO RING 4」1万7600円

 INMO GO 3のディスプレーは、室内では非常に見やすかった。筆者自身は他社のVR、ARデバイスでは瞳孔間距離を比較的広めに設定しているのだが、本製品は調整なしでも問題なく見ることができた。

 ただ、上下の位置はややシビアだったので、高さを調節するためのノーズパッドがほしいところだ。また、これは本製品にかぎる話ではないが、直射日光下では最大輝度でもディスプレーが見づらくなってしまう。購入したらオールシーズンで使うはずなので、オプションの「INMO GO 3 クリップオンサングラス」(5500円)は必須アイテムだと思う。

「INMO GO 3」実機レビュー

画面サイズは、50cmほど先に表示されていると考えると約10インチ相当。スマートフォンの画面より断然見やすい

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

角度を変えると、レンズ内のグラフィックが表示されるエリアを判別できる

「INMO GO 3」実機レビュー

直射日光下で使用するなら、「INMO GO 3 クリップオンサングラス」(5500円)は必須

AIアシスタントに翻訳、
写真翻訳、字幕機能もあり

 

 INMO GO 3が特に力を入れているのが翻訳機能だ。オンライン翻訳では78言語を認識し、98言語への翻訳出力に対応。日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、タイ語の9言語についてはオフライン翻訳も利用できる。モバイルデータ通信を利用できない環境でも、INMO GO 3とスマホがあれば、9言語については翻訳機能を利用できるわけだ。

 外国語話者が身近にいないため、海外映画を見ながら同時通訳を試してみた。会話内容によって異なるが、短い言葉であれば2~3秒で日本語訳が表示された。

 また翻訳精度も、ニュアンスまでは拾えないものの、意味自体は正確に訳されていた。このぐらいスムーズであれば、映画鑑賞にも使えるレベルだ。というわけで、多少の遅れが許容される対面での会話であれば、十分実用的に活用できるはずだ。

「INMO GO 3」実機レビュー

米国でパブリックドメインとなっている映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)の英語音声をリアルタイム翻訳し、その翻訳結果が数行表示されている画面を、翻訳性能の実例として掲載。名フレーズ「They're coming to get you, Barbara!」(お前を捕まえに来るぞ、バーバラ!)をちゃんと翻訳できている

 また、800万画素カメラを利用した写真翻訳にも対応。看板やメニューなどを撮影して内容を翻訳できるほか、AIアシスタントに目の前のものについて質問することも可能だ。

 今回、近所の施設に展示されていた農具を撮影して質問したところ、「千歯扱き」や「唐箕」と推測し、それぞれの用途まで詳しく説明する回答が表示された。

 実はこれは「脱穀機」が正解なのだが、「あるいはその関連の脱穀用具のようです」という記述もあるので、トータルではほぼ正解と判断してもよいだろう。

「INMO GO 3」実機レビュー

こちらが農機具の写真

「INMO GO 3」実機レビュー

「あるいはその関連の脱穀用具のようです」と記載されているので、ほぼ正解と言える

 さて、「AIグラス」とひとくくりにされているが、AIをどこで処理しているかは製品によって異なる。この違いは、ディスプレーやカメラといったハードウェアスペックとは切り分けて考えたほうが、製品選びの際には理解しやすい。

INMO GO 3 Rokid スマートAIグラス Even G2 Ray-Ban Meta(Gen 2)
主要AI ChatGPT、Geminiなど ChatGPT、Gemini、Qwenなど Even LLM Meta AI
AI処理 クラウド+一部ローカル(スマホ連携) クラウド+ローカル スマホ+クラウド オンデバイス+クラウド
オフライン翻訳 ○(9言語) ○(8言語) × ○(6言語)

 Rokid スマートAIグラスは「Snapdragon AR1 Gen 1」を搭載しており、オフライン翻訳ではダウンロードした言語モデルをグラス内のプロセッサーで処理する。一方、INMO GO 3はデュアルコアCPU、256MB RAM、64GBストレージ、RTOSベースの「IMOS-3.0lite」という比較的シンプルなハードウェア構成で、AI処理はクラウドを中心としつつ、一部はローカルで行う。基本機能の利用にはスマートフォンとの接続が必要だ。

 256MBというメモリー容量だけを見ると少なく感じるだろう。しかしINMO GO 3は、AI処理のすべてをグラス内だけで完結させる製品ではない。クラウドやスマートフォンとの連携を前提としており、製品コンセプトが異なるため、単純にメモリー容量だけで優劣をつけられるものではないと筆者は考える。

「INMO GO 3」実機レビュー

専用アプリの「INMO Global」。丁寧に日本語化されており、各機能の内容をきちんと理解したうえで利用できる

「INMO GO 3」実機レビュー

ワイヤレススピーカー(9900円)は、装着者が喋った言葉を指定した言語に翻訳して発声してくれる。磁石で服の胸元に装着可能。

ナビゲーション、撮影、テレプロンプターなど
機能は盛りだくさん

 

 個人的に一番便利だと感じたのはナビゲーション機能だ。実は他社製AIグラスでナビゲーション機能を利用しようとしたときには、筆者がよく行く施設を目的地に直接設定できなかった。

 INMO GO 3では問題なく指定できたし、どこで進路変更するか、現在地の大まかな地図、残りの距離、時間、到着時間など、表示される情報量もちょうどいい。自転車で遠くの目的地へ向かう際にも、YouTubeをラジオ代わりに聞きながら、迷わず向かえそうだ。

「INMO GO 3」実機レビュー

情報量がちょうどいい。表示領域をあえて半分にしているのも自転車に乗っているときなどに安心だ

 正直、ちょっと期待はずれだったのがカメラ機能。カメラは800万画素で、動画は720p/30fps、1回最大60秒というスペックなのだが、全体的に解像感は乏しく、120度の超広角らしい周辺部の歪みが目立つ。

 また、歩きながら撮影した動画は「ブレ」もかなり目立った。Ray-Ban Meta(Gen 2)のように撮影性能を強く打ち出した製品と比べると、カメラ性能は数歩及ばないというのが正直なところだ。

 とは言え、明るい屋外でちょっとした記録を残す用途なら十分。本気で写真や動画を撮るというよりも、AIに投げるための画像を撮影するカメラと割り切ったほうがよさそうだ。

「INMO GO 3」実機レビュー

静止画のテスト撮影。解像度は3264×2448ドット

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

「INMO GO 3」実機レビュー

可能な機能は全部盛りで
価格とのバランスに優れたAIグラス

 

 INMO GO 3は、価格を含めたバランスを重視したAIグラスだと思う。両眼ディスプレー、カメラ、マイク、スピーカーを搭載した、いわゆる全部盛りのAIグラスであり、なおかつ交換式バッテリーを採用し、予備バッテリーも同梱。同じく全部盛りのRokid スマートAIグラスよりも低価格を実現している。

 もちろん、本体のハードウェアだけを比較すれば、Rokid スマートAIグラスとの間には明確な差がある。しかし現在のAIグラスは、グラス本体とスマートフォンをセットで利用することで多くの機能を実現している。また、ソフトウェアの作り込みや今後のアップデートによって大きく進化していく可能性もある。そのため、ハードウェアスペックだけで優劣を判断するべきではない。

 全部盛りのAIグラスの中では比較的低価格で、Rokid スマートAIグラスよりディスプレーの解像度も高い本製品は、有力な選択肢となり得るだろう。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります