第891回
謎多き次世代Xeon「Diamond Rapids」を解剖、3D Meshの進化と新命令セットAPXがもたらす変革
2026年08月31日 12時00分更新
データ伝送の工夫とx86拡張「APX」をサポートする新コア
それともう1つ注目すべきは、Fan-outの接続法である。下にある"Diamond Rapids Cross-Section"にあるように、Base TileとFabric Hubの間はUCIe-Sを利用していることがわかる。つまり通常のパッケージ基板の中にUCIe-S(Standard Package)を使って配線を通しているわけだ。
UCIe-Sということは一対あたり16bit幅で信号速度は最大でも32GT/秒なので、1対あたり64GB/秒(片方向)である。実際には複数本を束ねて(内部バスの幅から考えると4対64bitないし8対128bitで)CCBとFabric Hubは接続されているものと想像される。
この接続のレイテンシーについては「C2Cのレイテンシーに関しては、プロトコルとデータの戻り経路を最適化するというアプローチを取っている。例えば、Coherent制御プレーンとデータの通信プレーンがその一例である。あるCCBから別のCCBにデータを転送する際、Fabric Hub内のCoherent制御プレーンを完全にバイパスすることで、レイテンシーの最適化を図っている」という説明があった。
レイテンシーのついでにCoherent関連の説明も紹介しておく。Coherent制御のためにMESIF(Modified/Exclusive/Shared/Invalid/Forward)プロトコルを利用しているが、これに関しては「ご存じの通り、現代のCPUはすべて基本的なMESIFプロトコルを基盤としているが、特定のユースケースにおいてパフォーマンスを最適化するための拡張やカスタマイズが施されている。Xeonにおけるインテルの実装も同様の戦略を採用している。Diamond Rapidsにおいても、同じアプローチを採用している。Fan Out Architectureでは、スケーラブルな演算構成要素間でのデータ移動や共有を最適化できる具体的な機会があり、Diamond Rapidsでは、これらの利点を活かしている」という説明があった。
「スケーラブルな演算構成要素」ってなんだ? という話だが、AVXあるいはAMXを利用するようなケースを想定してなんらかの拡張を施しているのかもしれない。これに関連してSnoopingについては「どのようなOn Die Snoop Filterであっても、最終的には容量が不足してデータの追い出しが発生しえる。なのでSnoop Filterの容量を管理するための賢い管理メカニズムは必須であり、パフォーマンスの急激な低下をを回避するために、Snoop Filterの容量を十分大きく設定する必要がある。Diamond RapidsではEvict Cleanの採用により、適切な粒度でSnoop Filterを設計、最も負荷の高いワークロード時でも対応できるよう適切なサイズ設定を行なうことで、この課題に対処している。詳細は製品リリース時期に公開予定である」との説明があった。
話をスライドに戻すと、Core Chipletに利用されているIntel 18A-Pの特徴をまとめたのが下の画像だ。消費電力削減/動作周波数向上に加え、熱抵抗削減やVIAの抵抗削減などが行われたとしている。
そしてCore Chipletに搭載されている16個のコアであるが、新しくIntel APXを搭載している。これは2023年7月にVersion 1.0が公開されたx86の拡張で、最新の仕様はVersion 9.0まで進んでいる。
概要はインテルのWebサイトにあるが、以下の改良が追加されている。
- 汎用レジスタを追加し、R16-R31まで利用できるようになった
- 3オペランド命令を定義
- 条件付き命令を改良
- レジスターのSave/Restoreオペレーションを最適化
- 64bitの絶対ジャンプ命令を追加
もちろん既存のx86命令との後方互換性はきちんと保たれている。またインテルとAMDに加え、業界10社+アドバイザー2人から構成されるEAG(The x86 Ecosystem Advisory Group)も今年4月に"APX - Revitalizing the x86 General-Purpose Instruction Set"というブログ記事を公開しており、遠からずAMDのプロセッサーにもこのAPXの対応が追加されるものと見られる。
ただ肝心の「それでどんなコア?」という説明は皆無なのだが、これも質疑応答で「Diamond Rapidsには、Granite RapidsのRedwood Cove+およびPanther LakeのCougar Coveで確立された基盤をもとに、サーバー向けに最適化された新しいPコアアーキテクチャーを採用する。この新しいコアには、データセンター・ワークロードにおけるパフォーマンス/効率性/スケーラビリティを向上させることを目的とした、複数のアーキテクチャー上の改良が盛り込まれている。現時点ではコアレベルの詳細は公開していない。これに関しては発売時期が近づいたら公開予定である」という返答があった。
ということで、まだまだ謎は多いDiamond Rapidsではあるのだが、わりとこれまで問題だったさまざまな事柄を解決したものになる公算は高い。競合であるAMDのVeniceや、ダークホースであるArmのAGI、およびNVIDIAのVeraと比べてどの程度の性能になるのか楽しみである。
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