回路設計と検証へのAI活用で、ベテラン級エンジニア相当のアシストを実現
では具体的にAIはどんなところで利用できるのか? という一覧が下の画像だ。回路設計から検証まで過程のさまざまな場面で利用できる、とされる。Chang博士はメモリーIPの専門家ということで当然実例もメモリーIPをシステムに実装する過程が例として出てくるが、設計と検証を生成AIと自律型AIで回すというサイクルが非常に効率がいい、としている。
まず設計に関して言えば、これまでアルゴリズムベースで最適化プランを策定して、その検証をする形でぶん回していたものをAIベースでの推定に切り替えた。そんなAIベースでの推定でもPPAターゲットを満たす設計に早く収束できる、という話である。
具体的な処理の実例と示されたのが下の画像だ。
基本的な設計指針を示すと、あとはAIの中で仮想的に試行を繰り返し、その結果として最適なパラメーターが導出される。
DTCO(Design Technology Co-Optimization)はここ10年の設計で一番重要なキーワードとされている。名前の通り、設計と製造の協調設計を目的としたものである。もっともこれ、AIを使うとDTCOのためにループを回さなくても一発で答えが出てくるような記述になっているが、実際はAIでもそれなりにループが回る。ただ従来より少なくて済むという話だ
これを従来の方式と比較した場合、最大で1.8倍ほどの生産性の向上(≒設計時間や設計労力の短縮)が実現でき、効果的な結果が得られるとしている。
あくまでもChang博士の例はメモリーなので、メモリーのアクセス時間(Cycle Time)が縦軸、消費電力が横軸である。つまりDTCOにAIを使うことで、性能を向上させながら消費電力を減らせた、というわけだ
またAIを使うにあたり、強化学習も効果的としている。要するにAIにトランジスタレベルでのパラメーターの学習をさせることで、PPAやDRC、LVS(Layout Versus Schematic:物理設計が終わったレイアウトが元の回路と一致していることを確認する工程)などで効果がある、とする。
実際にSRAMの最適化をさせたケースでは、学習を重ねることでより迅速に最適化された設計を生成できることが数字で示された。
3nmプロセスで最適化を人手とAIで行なった場合の比較が下の画像だ。結果から言えば、AIによるアシスト能力は3~5年の経験に等しい、とされている。
昨今ではファウンドリーの先端プロセスの取り合いが激しいが、裏を返せばそうした先端ファウンドリーのプロセスに習熟したデザインエンジニアもまた取り合いになっており、実際エンジニアの引き抜きの話もよく聞く。
やや古い話だが、2021年にインテルがVIA Technologies傘下のCentaur Technologyを1億2500万ドルで買収したが、そもそもCentaur Technologyは非常に小さな会社で、社員数は一番多い時でも50人少々である。要するにインテルは50人足らずのエンジニアを手元に引き入れるために1億2500万ドルを費やしたわけで、単純計算で言ってもエンジニア一人当たり250万ドル以上を支払って獲得したわけだ。
単純に比較するのには無理はあるが、3~5年のキャリアを積んだエンジニア相当で、しかも人間と違って24時間稼働できるAIアシストの方が明らかに割安、という考え方は当然できることになる。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります







