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エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第43回

【東京国立博物館・表慶館】100年ぶりの凱旋! 若冲の至宝中の至宝を“ガラスなし”で浴びる衝撃。2026年秋「皇居三の丸尚蔵館」グランドオープンへの序章

前期展示:若冲の「生命宇宙」15幅を徹底解剖

※前期展示:2026年4月17日(金)~5月1日(金)

 今回の展示は若冲が約10年をかけて描いた「制作年代順」(これまでの調査により、ほぼ確定されてきている)に並べられている。

展示の様子。表慶館の1回の左右のウィングに動植綵絵の高精細画がゆったりと展示される


芍薬群蝶図(しゃくやくぐんちょうず) シリーズ初期作と推測される。蝶の羽の質感と芍薬の花弁の立体感が露出展示で際立つ。

雪中鴛鴦図(せっちゅうえんおうず) 雪の重みを感じさせる柳と、色鮮やかなオシドリの色彩のコントラスト。

向日葵雄鶏図(ひまわりゆうけいず) 雄鶏の尾羽の「黒」の深さと、向日葵の種の幾何学的な並び。卓越したデザインセンス。

梅花皓月図(ばいかこうげつず) 月夜に浮かぶ白い梅の花。原本では見えにくい微細な枝振りが手に取るようにわかる。

老松孔雀図(ろうしょうくじゃくず) 職人が手作業で施した金泥の輝きに注目。羽の一枚一枚がまるで宝飾品のようだ。

老松白鶏図(ろうしょうはっけいず) 画面中央に大きく配された老いた松の幹を背景に、純白の雄鶏が佇む様子を描いた作品。若冲ならではの緻密な観察眼により、雄鶏の羽毛の質感や、松の樹皮のゴツゴツとした力強さが精緻に表現されている。

 伊藤若冲が描いた原本の《動植綵絵》において、鶏の「目」には漆(うるし)が使われていた。この漆によって、生き生きとした眼光や、本物の鳥の目のような瑞々しい光沢が表現されている。

 本展で展示されている高精細複製品では、原本の漆の光沢を再現するために、印刷後の仕上げとして樹脂による加工が施されている。これはキヤノンのデジタル技術と、京都の職人による伝統工芸の技(「綴プロジェクト」)を融合させたプロセスの一環。この樹脂加工により、印刷だけでは表現しきれない原本に近い光沢や質感が再現されている。

芦雁図(ろがず) 鋭い直線で描かれた「芦の葉」と、なめらかな曲線で描かれた「ガチョウ(鵞)」の対比が特徴的な作品。色彩を抑えたモノトーンに近い世界観の中で、生き物の強い生命力が表現されている。

梅花群鶴図(ばいかぐんかくず) 白梅の木を背景に、優雅に集う鶴の群れを描いた作品。若冲の卓越した観察眼と緻密な描写により、鶴の羽の質感や梅の花の細部まで精緻に表現されている。

棕櫚雄鶏図(しゅろゆうけいず) 画面中央に配された大きな棕櫚の木と、その傍らに佇む雄鶏を描いた作品。若冲の卓越したデザインセンスと、雄鶏の羽毛や棕櫚の葉に見られる緻密な描写が特徴。

桃花小禽図(とうかしょうきんず) 満開の桃の花の枝に、色鮮やかで愛らしい小鳥たちが集う様子を描いた作品。若冲ならではの緻密な描写により、桃の花弁の繊細さや小鳥たちの生き生きとした表情が表現されている。

群鶏図(ぐんけいず) 若冲の代名詞。13羽の鶏がひしめき合う超密な空間。鶏の「目」に施された樹脂の光沢は必見。

薔薇小禽図(ばらしょうきんず) 緻密に描かれたバラの棘と、可憐な小鳥。若冲の「鋭さ」と「愛らしさ」の同居。

池辺群虫図(ちへんぐんちゅうず) 数十種もの生き物が潜む。濁りの中に描かれたヘビやカエルの息遣いまで追える。

諸魚図(しょぎょず) 画面中央に配された大きな蛸を中心に、多種多様な魚介類がひしめき合うように描かれた作品。若冲の卓越した観察眼により、それぞれの魚の質感や鱗の様子、吸盤のディテールなどが驚異的な緻密さで表現されている。

菊花流水図(きっかりゅうすいず)渦巻く流水の中に咲き誇る菊。流動的な線の細さは、ガラスなしでこそその凄みが伝わる。

伊藤若冲と動植綵絵

 伊藤若冲:1716年~1800年。京都・錦市場の裕福な青物問屋の跡取りとして生まれた。一時は家督を継いで家業にいそしんだが、四十歳にして隠居し、絵師としての活動を本格化。円山応挙や曽我蕭白など、個性豊かな絵師たちがひしめく当時の京都にあって、若冲は独自の画風を確立し、高い評判を得るにいたった。

 一方、若冲は敬虔な仏教徒でもあった。「若冲」とは、相国寺(臨済宗)の大典禅師から授かった居士(出家しないで仏道修行する者)の名。

 そんな若冲が、およそ十年を費やして描き、みずから相国寺へ寄進したのが全三十幅の《動植綵絵》である。くりかえし登場する鶏をはじめとして、鳥類や昆虫、魚介類など多種多様な動物たちと、色とりどりの草花。大胆な構図と緻密な描写を兼ね備えており、遠くからでも、近づいても、見る者を驚かせる。

 若冲は《寄進状》(当館収蔵)に「名を上げるために寄進したのではない。荘厳(仏を飾り、供養すること)の助けとして、永久に伝わってほしい」との想いをつづり、《釈迦三尊像》三幅とともに《動植綵絵》を寄進した。実際、《動植綵絵》はきらびやかな花鳥画でありながら、相国寺において儀礼の場を飾るなど仏画のような役割を果たした。

 1889年(明治22年)に皇室に献上され、その前年に完成した明治宮殿において外国賓客の接遇などに用いられた。ちょうど100年間「御物」として過ごしてきましたが、1989年(平成元年)に上皇陛下と香淳皇后から国へと寄贈され、三の丸尚蔵館の管理するところとなった。2021年(令和3年)には国宝に指定され、国内外の多くの人々を魅了し続けている(皇居三の丸尚蔵館『伊藤若冲「動植綵絵」の世界』から)。

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