ネットの情報だけでは、絶対に辿り着けない店があるんですよね。
スペイン・バスク地方にある海辺の美しい街、サンセバスティアン。ここは世界中の美食家たちが一生に一度は訪れたいと願う「世界一の美食の街」として知られています。私自身、この街の魅力に取り憑かれ、今回でなんと4回目の訪問となります。
●観光マップでは辿り着けない店へ
これまではインターネットの情報を頼りに自力でバル巡り(バルホッピング)を楽しんでいましたが、今回は少し視点を変えて、Airbnbの提供で体験ツアー「サンセバスティアンでピンチョスを楽しもう」(約2万5000円前後)に参加してみました。結果から言うと、これが大正解。自力だけでは絶対にたどり着けない、圧倒的な食体験でした。
●料理人としてこの街に根を下ろした男のツアーに行く
ツアーの待ち合わせ場所はサン・マルティン市場(San Martin Merkatua)。そこで合流したガイドのエリックさんは、ただの観光ガイドではありません。ベネズエラから20年前にサンセバスティアンへ渡り、最初の10年間は若きシェフとしてレストランで腕を振るっていました。さらに、ここ10年間は現地の美食大学「バスク・キュリナリー・センター」でコンサルタント業に携わっているという、正真正銘の「食のスペシャリスト」なのです。
まずは市場の新鮮な野菜や果物、そして地下の巨大な魚市場を見学しながら、エリックさんの「バスク食文化の歴史」の解説がスタート。今回のツアーの魅力は、単に美味しいものを食べるだけでなく、その背景にある歴史を深く学べること。(地図:San Martin Merkatua)
●フランスの模倣をやめた14人の決断
エリックさんによれば、100年前のサンセバスティアンの高級店は、すべてフランス料理を提供していたとのこと。しかし50年前(1975年頃)、14人のシェフたちが集まり「フランス料理の真似事はやめて、地元の農場の野菜や港からあがる魚に地元住民のアイデアを取り入れた、ゼロからの新しいルールを作ろう」とマニフェストを策定。この「フランス料理からの脱却」こそが新バスク料理の幕開けであり、現在のミシュラン星付きシェフたちに受け継がれているのだそうです。
また、この街には「美食倶楽部(Gastronomic Society)」と呼ばれるプライベートクラブが多数存在します。友人たちでお金を出し合って場所を買い、誕生日などのたびに集まって自分たちで料理をして盛り上がるという独自の文化があり、子供たちはその背中を見て育つため、街全体に高い食のレベルが根付いているわけです。
●1100年代から続く味を、まず一杯!
歴史を学びながら回った5軒のバルも最高でした。記念すべき1軒目の「Aitana Donostia」では、バスク名物のアップルサイダー(シードラ)で乾杯。エリックさんによれば、サンセバスティアンの街ができたのは1100年代後半ですが、リンゴの木はそれよりも何世紀も前からこの地にあり歴史深い飲み物とのこと。現地にはシードラハウス(リンゴ酒の醸造所)があり、樽から直接シードラを注いで飲み放題で楽しむ独自の文化があることも教えてくれました。(地図:Aitana Donostia)
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