インターネット環境はまだまだ遅れていた2000年前後の中国
口伝で攻略法が広まっていった
2000年前後の中国のインターネット普及は日本と比べて遅れていて、利用するにしてもネットカフェや学校のパソコン室がせいぜいだったのだ。そこで当時のプレーヤーは手書きの「コンボマニュアル」や「この組み合わせがいい」という同人誌が作り、また各都市にネットではなく“口伝”として伝えられていた。
中国のサブカルは昔からグループ内で先人が後輩に教える文化があり、ゲームセンターでも同様にプレイが広まったわけだ。また中国各地で楽しく遊ぶためのハメ技禁止などのローカルルールが誕生した。このあたりは検索するとでてくるし、かなりテクニカルな話なので本記事では言及しない。ちなみに広い中国で口伝で広まったゲーム攻略法としては、ファミコンの魂斗羅の攻略法や裏技もあり、KOFに限らない。
中国はその後に経済発展をしていき、所得が向上し、生活様式が改善していく。するとコインを投入して遊ぶスタイルはやがて古く貧乏くさく感じられるようになり、ゲーマーのヒエラルキーの中でもアーケードゲームはゲーム機よりもオンラインゲームよりも下の扱いになっていく。
とはいえ遊び続けたい人はいるもので、00年代になるとゲームセンターに変わってインターネットカフェが普及し、パソコン所有者が増えてくると、パソコン(エミュレーター)で海賊版KOF97を遊ぶ人が増えていった。電脳街のパソコンショップに行けば、ヒマを持て余した店員が展示機のキーボードで操作してKOF97を遊んでいるのを当時はよく見かけた。
動画配信サイトで「青春の思い出」としてリバイバル
今も他IPとのコラボが活発
減少が続くゲームセンターでもKOF97が遊ばれ続け、対戦格闘ゲームファンが別のゲームで遊ぼうとしなかった。さすがに2010年代になるといい加減飽きられそうなものだが、「闘魚」などのゲーム向けライブ動画配信サービスが立ち上がり、ビリビリでも配信されることにより、懐かしさとともに上級プレーヤーが対戦し、再び人気が息を吹き返す。
さまざまな大会が開催され、昔遊んだプレーヤーが対戦し、画面では字幕とともに応援投稿が飛び交い、往年のように盛り上がった。さらにスマートフォンがでてくると、SNK公認の中国製ベルトスクロールアクションゲーム「KOF97 OL」が登場。それもまた思い出をくすぐる内容で中国でファンがプレイした。
2020年代になると中国企業はIPビジネスを重視するようになり、異業種のIPコラボを日常的に見るようになった。その中でKOF97が再び掘り起こされ、コラボ商品が誕生し、多くの人に刺さっている。生成AIが普及すればそこでもKOF97を再現した。
海賊版から始まったKOF97の文化は、それこそが最高の体験とばかりに他のゲームタイトルに行かなかったために、中国ITの様々なトレンドや新技術で息を吹き替えした。現在は「中年中国人の青春の記憶」となり、エモくてビジネスになるIPと変化しているわけだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)、「移民時代の異国飯」(星海社新書)などを執筆。最新著作は「異国飯100倍お楽しみマニュアル ご近所で世界に出会う本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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