週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

納期の確認や調整に頭を悩ませていた現場が作った「超見える化」の軌跡

購買部門の担当以外は読まないで 味の素ファインテクノのkintoneとkrew活用すごい

2026年03月27日 09時00分更新

価格改定の履歴をダッシュボード化し、価格交渉の武器に

 納期確認とともにもう1つ南崎氏を感動させたのは、krewDashboardで原材料の価格改定をダッシュボード化したアプリだ。

 もともとこれはExcelで管理していたサプライヤーの価格改定を元に、kintoneで申請書を作成するのがアプリの目的だった。「サプライヤーからの価格改定を承認するためのアプリとなっています。この申請書作成をkintoneのプロセス管理の機能で実現しています」と大野氏は語る。

 しかし、基幹システムから実績を日次で取り込み、原材料ごとの価格改定の履歴をとれるようになると、過去の値上げ実績や変化のトレンドをつかめることがわかった。これをグラフ化するのに使っているのが、krewSheetと同時期に導入したkrewDashboardだ。「krewDashboardのグラフを見れば、特定の原材料がどのように値上がりしてきたかわかり、詳細をドリルダウンしてその理由もわかれば、サプライヤーとの価格交渉で武器として利用できるんです」と大野氏は語る。

サプライヤーの単価改定の履歴も追えるダッシュボード

 昨今は原材料の高騰が相次いでいるが、もともと製造業は価格の改定や交渉が日常的に発生する業界だ。しかし、基幹システムには改定された結果の価格しか残らないので、価格改定の履歴はExcelやメールを調べないと出てこない。南崎氏は、「この履歴が属人化してしまうと、担当者の部署異動によって過去のやり取りが失われてしまうことも多いんです。履歴をkintone化することで適切な価格で調達することができ、適切な利益確保にもつながります」と指摘する。

 しかし、krewDashboardを用いれば、価格改定のトレンドを見た目で判断し、理由や背景を調べることができる。「上司からあの原材料、どれくらい購入しているんだっけ?と聞かれても、即答できます」と大野氏。逆に将来的な発注量を予想するためのフォーキャストダッシュボードも作っており、過去の需要、購入実績、現在の在庫などから、将来の成長する分野や調達量も予測しているという。

購買実績を確認できる購買ダッシュボード

 今や大野氏はkrewDashboardを用いた“ダッシュボード職人”として、現場から頼られる存在だが、最初は全然うまく行かなかった。マニュアルで調べたり、他人に聞くのではなく、とにかく自ら使いまくり、スライサーの概念を得たことで、一気にスキルが上がったという。

 この試行錯誤のおかげでできたのが、1700種類以上の仕様書をさまざまな項目で絞り込める材料の検索ダッシュボード。未知のキーワードではなく、「原料」>「電子材料」>「サプライヤー」といった絞り込みで、必要な項目にたどり付けられる。製造した製品から必要な原材料やサプライヤーを調べたり、サプライヤーの原材料からどの製品で使っていくのかを逆引きすることも可能。南崎氏も「素晴らしいですね。サプライヤーからの供給が停止したときに、自社の製品のどこに影響が出るのかをすぐに調べられます。こうすることで納入先に迅速な対応を行うことができ、営業部への貢献にもつながります」とコメントする。

項目によって絞り込みが可能な材料データ管理のダッシュボード

 データはkintone内にあるので、それらをユーザーに合わせて見える化するのがkrewDashboardの役割だという。「最近、原材料がすごく高騰しているので、うちの会社でどれくらい購入しているのかすぐに知りたいという担当者がいたので、どのサプライヤーからどれくらい買っているのかわかるダッシュボードを先日作りました」(大野氏)とのことだ。kintoneに単にデータを溜めているだけではなく、業務の価値にまで昇華させているわけだ。

代替の効かないクリティカルな購買部門の課題をkintoneとkrewで解消

 味の素ファインテクノではすでに社員の1/4がkintoneアプリを作成できるという。各部署に一人の割合でkintone活用推進者が設置されているため、業務を熟知した担当者によるkintoneの業務改善を推進している。一方で、情報システム部はアプリやアカウントの管理、ガバナンス、プラグイン導入を担当。全社的なkintone導入事例としては、かなり理想的な展開と言えるだろう。

 購買部門は企業の縁の下の力持ちだが、システム化の恩恵を受けられず、現場の努力とExcelでなんとかがんばってきた実態があった。しかし、kintoneとkrewシリーズを組み合わせれば、現場のニーズにあった納品や発注管理が実現されそう。現に味の素ファインテクノは現場の創意工夫でアプリ化を進めてきた。実際、納期管理アプリだけでも、従業員一人分にあたる年間1600時間の工数削減を実現しているという。

 まとめとして大野氏は、「弊社の製品は半導体の製造において重要な材料です。そのため、原材料の安定供給には神経を尖らせていますし、そのためにkintoneとkrewシリーズをフル活用しています」と語ってくれた。

 いかがだっただろうか? 購買部門の課題とkintone活用について共有した今回の記事が、現場の共感につながり、解決の糸口になれば、登壇者・ライターとともにこれに勝る喜びはない。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります