スペイン・バルセロナで開催されたMWC26。NTTドコモは、ネットワーク運用にAIを組み込む最新の取り組みを展示した。
通信の裏側でAIがどのように働き、私たちの生活をどう変えるのかをNTTドコモ ネットワーク本部サービスマネジメント部オペレーションシステム担当部長の鈴木啓介氏に話を聞いた。
ドコモのネットワークへのAIの取り組みは大きく分けて、「AIを使ってネットワークを良くする(AI for Network)」と、「AIを動かすためにネットワークを進化させる(Network for AI)」の2つの軸で構成されているとのこと。
AI for Networkの1つ目は、5Gの心臓部であるコアネットワーク(5GC)の自動構築。自律的に思考して行動する「エージェンティックAI」がネットワークを設計し、AWSのクラウド上に自動で構築する。通常は自社の専用機器(オンプレミス)で運用するが、災害時や通信量が急激に増えた際にクラウドを活用することで、柔軟かつ迅速に通信環境を維持できる。このシステムは2月下旬からすでに実際のネットワークで稼働を開始している。
2つ目も、運用保守へのエージェンティックAIの導入だ。全国にある100万台以上の基地局や通信機器の膨大なデータを、AIが常に監視する。何か異常が起きた際には、AIがおかしな挙動を検知するだけでなく、原因を推測し、過去の解決事例などから最適な対処法を提案。人間が手作業で行なっていた複雑なトラブル対応をAIがサポートし、通信の安定性を守る仕組みだ。
3つ目は、「CNX(Customer Network Experience)指数」と呼ばれる新しい指標の導入。これまで、通信事業者は自社の機器から得られるデータで品質を測っていたが、それだけではユーザーが実際に感じる「つながりにくさ」を完全に把握することは難しかった。
そこで、1日に約230億件にも上る巨大なデータをAIに分析させ、全国の基地局ごとにユーザーの「体感品質」を数値化することに成功した。このAIは昨年10月から現場で活用されており、数値が悪い場所から優先的に電波状況の改善を進めるのに役立っているとのこと。
最後は「Network for AI」の取り組みだ。現在、基地局の機能を専用の機械ではなく一般的なサーバーで動かす「vRAN(仮想化基地局)」の導入が進んでいる。ドコモは、このvRANのサーバーの余力を使って、通信の処理をしながら同時に画像認識などのAIのアプリケーションを動かす技術を紹介。
高価で発熱しやすい画像処理チップ(GPU)を使わず、標準的な計算チップ(CPU)だけで両立させているのが特徴となっている。これにより、全国にある基地局がそのままAI処理の拠点として活躍する未来が見えてくる。
NTTドコモの展示から見えてきたのは、AIが単なる実験段階を過ぎ、すでに実際のネットワークを裏から支えるツールとして動き始めているという事実。毎日当たり前のように使っているスマートフォンの「つながる」という体験は、AIの力によってさらに途切れず、快適なものへと進化していくとうわけだ。
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