週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

通信業界だけではもう限界? ドコモが6Gでインフラ企業と「業界を超えたタッグ」を組みたい理由

2026年03月12日 09時00分更新

 MWC Barcelona 2026において、NTTドコモは「6G」に向けた取り組みを展示。同社の6Gチームは、6G、宇宙通信、AIの3つのプロジェクトを軸に、2030年前後の社会実装を見据えた研究開発を進めている。

 今回の出展では、それを体現するプロトタイプの展示、および次世代通信が直面する課題について語られていた。

ドコモ

MWC26会場のホール3に出展していたNTTグループのブース

人間中心から「AI・ロボット中心」へ転換する6G

 取材対応してくれた、NTTドコモ 6Gテック部 無線標準化担当・NTN技術担当 担当部長の永田 聡氏は、ドコモが掲げる6Gネットワークの根幹となる仮説は、「5Gまでは人間のために作られたネットワークだったが、6G以降はAIやロボットのためのネットワークになる」と説明。同社はこれを「AIセントリックネットワーク」と呼び、ネットワークの考え方を人間中心からAI中心へと転換する必要があると主張する。

ドコモ

メディアのグループインタビューに答える、NTTドコモ 6Gテック部 無線標準化担当・NTN技術担当 担当部長 永田 聡氏

 このAIセントリックネットワークには、大きく2つの定義がある。1つは「AI for Network」であり、ネットワークの保守運用などをAIに置き換え、システム内部でAIを使い倒すことで徹底的な効率化を図る考え方だ。もう1つは「Network for AI」であり、AIやロボットがその性能を最大限に発揮するためのネットワーク基盤を指す。

 たとえばロボット業界からは、人間の視力を超える16Kや32Kといった高精細な映像データを、AIに直接処理させたいという要望が挙がっている。また、通信の遅延についても、単に絶対的な遅延時間が短いだけでなく、複数のロボットを同期させて動かすために「遅延のゆらぎ」を極小化することが求められている。

 さらには、研究開発の段階から省電力化とCO2削減を徹底するサステナビリティの要件も、6Gを構成する重要な要素である。こうした要件を満たすためには、5Gの延長ではない、まったく新しいネットワークのデザインが必要となる。

6G時代を見据えた3つの斬新なプロトタイプ

 AIセントリックネットワークのコンセプトを具現化する初期のプロトタイプとして、複数のデバイスやロボットが展示された。

 1つ目は、メディアアーティストで研究者の落合陽一氏との議論から生まれた「ペン型デバイス」である。AIやロボットに最適化された世界において、スマートフォンや親指でのフリック入力、キーボードといった現在のインターフェースが最適解であり続けるのかという疑問から開発された。音声入出力とペンによる直感的な手書き入力を組み合わせることで、AIと対話しながらアイデアの壁打ちやブレインストーミングを行なうデモが披露された。

ドコモ

音声とペンで操作するデバイスを6G向けて開発

ドコモ

落合陽一氏のアイディアを取り込んで作られている

 2つ目は、アスラテックと共同で検討した「センサーレスロボット」。一般的なロボットは本体にカメラやセンサー、計算リソースを多数搭載するが、このプロトタイプは本体にモーターのみを搭載し、極力シンプルな構造としている。代わりにカメラやセンサーなどの役割をネットワークの外部側に持たせ、ネットワーク越しにロボットへ知能を与える仕組みだ。

ドコモ

AI時代に向けたセンサーレスロボットを展示

 展示では、ドコモダケをモチーフにしたロボットが外部カメラの情報を頼りに、特定の人物の方向を向くという動作を見せた。このアプローチは、ロボットの柔軟な機能追加やコスト削減を可能にするだけでなく、既存の古い機械に外部から知能を与えて最新の価値を生み出すなど、他分野への応用も期待されている。

ドコモ

ドコモダケには本体を動かすモーター類しか搭載しておらず、センサーは別のカメラを使っている

 3つ目の展示は、ユカイ工学等と連携して開発した、ヒューマノイド型とは異なる自然界に存在するカタツムリを模したデザインが特徴の自律共生型ロボット「DENDEN」。公園などで迷子や高齢者の徘徊をモニタリングするといった用途を想定しており、人間が活動しないようなエリアでの運用も視野に入れている。

ドコモ

カタツムリ型のロボットDENDEN

宇宙通信(NTN)の活用と予測不能な「AIトラフィック」

 こうした人間圏外での運用には、通信カバレッジの拡張が不可欠となる。そこでドコモは、低軌道衛星(LEO)や静止衛星、HAPS(成層圏プラットフォーム)などを組み合わせた宇宙通信(NTN)を、地上ネットワークと統合した3次元的・4階層のネットワークとして構築することを目指している。

 6Gの標準化に向けては、2029年内を目標に国際標準仕様を策定するスケジュールで進行している。しかし、大きな課題として浮かび上がっているのが「AIトラフィック」の予測困難さ。AIが自律的に通信をするようになれば、トラフィックは人間の利用とは比較にならない規模に膨れ上がる可能性がある。

 永田氏はこれを「お弁当」に例えて説明した。ソフトウェア化や仮想化が進んだとしても、物理的なハードウェアの容量(お弁当箱)を見誤れば、中身(ソフトウェア)をいくら入れ替えても対応できない。AIトラフィックによってデータ量が数倍から数百倍に跳ね上がる可能性もあれば、逆に想定したほど需要が伸びないリスクもある。

通信業界の枠を超えた社会インフラ全体の再構築へ

 ドコモは、この予測不可能なトラフィック増大や、日本が直面する急激な人口減少といった課題に対し、もはや通信業界単独で解決できるフェーズではないと指摘する。インフラの維持と発展のためには、放送、電力、ガス、水道、モビリティなど、あらゆるインフラ企業が業界を超えて連携し、ネットワークのあり方を再設計していく必要があると強調した。

 6Gという次世代インフラは、単なる通信速度の向上に留まらず、AI・ロボットの普及と人口動態の変化を見据えた、社会基盤全体の再構築という壮大なテーマを含んでいる。今回の展示は、その未来の社会実装に向けた議論と共創の出発点だった。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります