富士通は昨年7月にネットワーク事業を分社化して設立した新会社「1Finity(ワンフィニティ)」と共同で、MWC26に出展した。
次世代プロセッサ「MONAKA」を展示 実際のウェハーも
2027年に商用化を予定
展示は大きく「ネットワークエリア」「テクノロジーエリア」「なりきり体験エリア」などに分かれており、特に注目を集めていたのがテクノロジーエリアに展示されていた、2027年の提供開始を目指して開発が進められているArmベースの次世代プロセッサ「MONAKA」。昨年はモックアップだったが、今年は実際に、2nmプロセスで製造されたウェハーを初めて展示していた。
MONAKAは、物理世界とデジタル世界が融合する「フィジカルAI」時代に向けたプロセッサとして位置付けられている。ロボットや工場のIoT機器など、エッジ側での即時判断が求められる状況では、クラウドとの通信遅延が致命的に。そのため、エッジ側での推論処理能力がますます重要となるが、それに伴う消費電力の増大とセキュリティの確保が課題となっている。MONAKAはこれらの課題を解決するために開発された。
主な特徴は以下の3点。 1つ目は、GPUに依存しないAI推論能力の提供で、CPUのみでエッジ環境に求められるAI推論性能を発揮する。2つ目は圧倒的な省電力性で、富士通がスーパーコンピュータ開発で培ってきた技術を適用し、同じ性能であれば従来の半分の消費電力で稼働するとのこと。電力制限の厳しいエッジ環境への設置を容易になる。
3つ目は、強固なセキュリティ機能「コンフィデンシャルコンピューティング」の搭載。プロセッサレベルで暗号鍵を発行し、仮想環境のデータを保護する。メモリ上で処理中のデータも保護対象となるため、外部からの攻撃を防ぎ、機密データを安全に扱うことが可能だ。
展示されたウェハーは、2nmのコアダイと5nmのSRAMおよびIOダイを組み合わせた3Dチップレット構造を採用。これはブロードコムとの協業によるものであり、性能とコストのバランスを最適化しているとのこと。
富士通は、MONAKAを搭載したサーバーから、ラックレベル、さらには分散型データセンターまでスケールするソリューションの提供を想定。ロードマップによれば、2026年夏にサンプルを出荷し、2027年に商用化予定となっている。さらに2029年には、1.4nmプロセスを採用した次世代機「MONAKA X」の投入も計画されている。
骨格認識AIを活用したゴジラなりきり体験を披露
ブース内には撮影スタジオのようなエリアがあり、東宝の協力と監修を得て構築された体験型コンテンツ「Godzilla in Motion(ゴジラなりきり体験)」を披露していた。
この展示の基盤には、富士通が開発した「Human Motion Analytics(ヒューマンモーションアナリティクス)」と呼ばれる高精度な骨格認識AIが活用。これは、国際体操連盟の大会における採点システムでも採用されている技術とのこと。
最大の特徴は、体験者がセンサーなどのマーカーを一切身に着ける必要がない「マーカーレス」である点。ブースに設置された4台のカメラが体験者の細かな動きをリアルタイムで捉え、高精度にデータ化する。
体験者は指定されたスペースで約30秒間、ゴジラになりきって街を破壊するようなアクションや、熱線を吐くような動きをする。システムはその動きをデータ化し、約1分間という短時間で、体験者の動きと完全に同期したゴジラのCG映像を生成する。映画のワンシーンのような仕上がりとなっており、生成された映像はQRコードを通じて自身のスマートフォンでウェブブラウザーから視聴可能だ(動画視聴は1ヵ月限定なのでお早めに! https://mwc2026-2dbarcode.com/1170210199)。
また、ゴジラは別の展示でも活用されていた。ネットワークエリアの「AI-RAN」のユースケース展示において、災害発生のメタファーとしてゴジラが登場。ここでは、普段は通信処理に使用している基地局のGPUリソースを災害(ゴジラ出現)という状況変化に応じてAI推論や緊急車両の制御、ドローンによる情報収集などに動的に振り向けるという、ネットワークとAIリソースの自律的な最適化デモが実施されていた。
基地局用のソフトウェアとAIアプリケーションを
同じ汎用ハードウェア上で動作させるアーキテクチャ
テクノロジーエリアとネットワークエリアでは、そのほかにも多くの先進技術が展示された。
1Finityが主導するAI-RANの展示では、基地局のRANソフトウェアとAIアプリケーションを同じ汎用ハードウェア(GPU搭載サーバー)上で稼働させるアーキテクチャを紹介した。通信インフラの余剰リソースを利用してAIサービス(万引き検知など)を提供し、通信事業者が新たな収益源を得られるモデルを提案している。
さらにAI関連では、マルチエージェント連携によるサプライチェーン最適化や、サービスエンジニアの業務を支援するナレッジグラフ拡張型RAG技術が紹介された。さらに、AIの専門知識や学習データがなくても、テキストで指示するだけで画像認識AIを自動構築できる「Amalgamation AI(アマルガメーションAI)」のデモもあり、現場の生産性を飛躍的に向上させるソリューションとしてアピールした。
量子コンピューティングについては、理化学研究所と共同開発している超伝導方式の量子コンピュータの1/2サイズ模型を展示。2023年に64量子ビットを実現しており、2026年12月には1024量子ビット、2030年には1万物理量子ビットを目指すロードマップが示された。用途としては、触媒探索などの複雑な組み合わせ問題における計算の高速化が期待されている。
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