携帯事業参入時は「クレイジー」と言われた楽天・三木谷氏が証明した"経済圏"の強さ 世界のモバイル関係者にアピール
2026年03月04日 17時00分更新
楽天グループCEOの三木谷浩史氏は、MWC Barcelona 2026(以下MWC26)の基調講演に登壇し、楽天モバイルのビジネスモデルと次世代ネットワークインフラの展望について語った。
「クレイジー」と言われた通信参入と逆転のアプローチ
冒頭、三木谷氏は1997年の楽天市場創業当時を振り返り、当初は月の取扱高がわずか3000ドルだった状態から、現在では決済を含めたグローバルでの流通総額が約5000億ドル規模にまで成長したことを紹介。
Eコマース、オンライン旅行代理店、ネット銀行、クレジットカードなど、各分野で国内トップクラスの地位を確立した楽天が通信事業への参入を決意した際には、周囲からクレイジーだと言われたという。しかし三木谷氏は、当時のモバイル業界が垂直統合型の古い構造に陥っており、ネットワークの再定義が必要だと考えた。
強固なエコシステムがもたらすシナジーとデータ活用
通信事業における成長の鍵は、加入者の増加、ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上)の向上、そしてコストの削減にあるという。三木谷氏は、通信会社が持つ金脈は「加入者」と「データ」であると指摘。
多くの通信会社が通信サービスの上に独自のエコシステムを構築しようとする中、楽天はすでに70以上のサービスで構成される強固なエコシステムに、モバイル通信を後から追加するという逆のアプローチを採用した。
この戦略は実際大きな成果を上げている。既存の楽天会員が楽天モバイルに加入すると、ほかの楽天サービスの利用量が2.43倍に増加。具体的には楽天市場での購入額が50%増、楽天トラベルの利用が20%増、楽天カードの利用が30%増となっている。
さらに、モバイル事業を通じて得られた膨大なデータは、独自のAI開発やユーザー体験のパーソナライズに活用されており、データに基づく広告収入だけでも約2億5000万ユーロ(約457億円)に達しているとのこと。
世界が注目する完全仮想化技術と次世代ネットワーク構想
ネットワークの運用コスト削減については、エンドツーエンドの完全仮想化とOpen RAN(O-RAN)を全面的に採用したことを挙げた。また、AST SpaceMobileへの投資を通じて衛星通信を活用し、日本国内における地理的カバレッジ100%の実現を目指す方針も示していた。
今後、楽天はRakuten Symphonyを通じ、完全仮想化ネットワークのソフトウェアを他国の通信キャリアに提供するだけでなく、リワードプログラムやコンテンツ配信基盤など、楽天のエコシステム構築のノウハウも併せて提供していくと説明。三木谷氏は「通信業界は単なる接続の提供から、豊かな消費者サービスへの転換期にある」と述べ、通信事業とエコシステムの融合の重要性を強調して講演を締めくくった。
通信インフラだけでなく、「楽天ポイント」のシステムや、キャッシュバック、動画配信(Rakuten TV)、通話アプリ(Viber)などの「エコシステムそのもの」も世界の通信事業者にライセンス提供するというビジネス展開を説明
基調講演後の囲み取材で、三木谷氏は世界の通信キャリアからの反響についての質問に、「既存の大手キャリアが現状のビジネスモデルに限界を感じている中、楽天のエコシステム構築ノウハウに対する関心は非常に高い」と回答。これまで外部の通信業界には提供してこなかった楽天のポイントプログラムや、Rakuten TVなどのコンテンツプラットフォームの提供に意欲を示した。
完全仮想化ネットワークおよびO-RAN技術については、稼働規模の拡大に伴い世界的な評価が高まっていると言う。自動化によるコスト削減やベンダーロックインの回避といったメリットが実証されており、Rakuten Symphonyの導入企業は現在75社に達している。特に東南アジア、中央アジア、アフリカなど、これから5Gネットワークを構築する国々からの引き合いが強いとした。
また、楽天のネットワークを支える日本のベンダーの技術力を高く評価し、現在5G設備においてはほぼ100%が日本企業によるものであることを明かした。
AST SpaceMobileによる衛星通信サービスについては、年内のサービス開始を目指していると話していた。サービス内容について、当初は通信速度に制限があるものの、通信の密度が上がれば動画視聴や音声通話も可能になるという。
契約数1000万突破の道のりと次なる一手
あわせて楽天モバイルは、同社の代表取締役会長CEOの鈴木和洋氏のグループインタビューも開催。契約数1000万件突破までの道のりと今後の戦略が語られた。鈴木氏は、就任時の約500万契約から数字を積み上げる中で、最も苦労したのは「基地局展開と電波品質の改善」であったと振り返った。
そのなかで、「最強プラン」は若年層やデータヘビーユーザーに支持された一方で、シニア層への浸透が課題であったという。そのため、家族割の導入や、セキュリティ機能を強化したシニア向け施策に注力していると話していた。
割り当てを受けたプラチナバンド(700MHz帯)の運用については、年内の運用開始に向けて入念な技術検証を進めており、今後のさらなる契約獲得に向けた起爆剤にしたいと意気込みを見せた。
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