渋滞よ、さらば! UberとJobyの「空飛ぶタクシー」が2026年内に開業へ ドバイでフライトデモを見た
2026年02月28日 15時00分更新
かつてはSF映画やアニメの世界で描かれていた「空飛ぶタクシー」が、ついに商用の交通インフラとして始まろうとしています。筆者は今回、UAE(アラブ首長国連邦)を構成する首長国のひとつであるドバイで、Uberが開催したプレスツアーに参加しました。
そして、同社が米国のベンチャー企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)と共同で進めるeVTOL(電動垂直離着陸機)による送客サービス「Uber Air powered by Joby」の最前線を取材してきました。
Uberがドバイで開催したプレスツアーにて、Joby Aviationが開発するeVTOL(電動垂直離着陸機)の飛行デモと、2026年内にUberがドバイで提供する「Uber Air powered by Joby」のサービスを取材しました
渋滞の上を飛ぶJobyの電動エアタクシー
今回のプレスツアーでは、ドバイ郊外にあるJoby Aviationの飛行試験施設を訪問し、同社が開発する電動エアタクシー「Joby S1」の飛行デモンストレーションを見学しました。
残念ながら試乗はかないませんでしたが、地上からS1の飛行を目の当たりにするだけでも、その先進性を十分に実感できました。最高速度は時速320km(約200マイル)に達しながら、騒音は従来型ヘリコプターの約100分の1に抑えられています。電動化によって実現した“静かな飛行”は、都市型エアモビリティの可能性を強く感じさせてくれるものでした。
垂直離陸するJoby S1。飛行中も騒音がとても少なく静かです
Joby S1のダイナミックな垂直着陸。
UberとJobyによる“空飛ぶタクシー”の最初の運航は、ドバイで今年中に開始される予定です。すでに秒読み段階に入ったと言える空飛ぶタクシーのサービスは、ユーザーにどのような利便性をもたらすのでしょうか? Uberのチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)であるサチン・カンサル氏が記者会見で説明しています。
カンサル氏がまず強調したのは、現代の都市が抱える深刻な「交通渋滞」を回避できることです。
カンサル氏は、平均的な通勤者が年間93時間、日数にしておよそ12日間を渋滞の中で失っているというUberの調査データを示しながら、次のように語りました。
「つまり私たちの多くは、家族との夕食や息子のテニスの試合、あるいは空港へ急ぐ際の大切な時間を、“交通渋滞”のために費やしているのです」
そのうえで同氏は、空飛ぶタクシーが移動手段を“垂直方向という新たな次元”へと拡張することで、交通問題の解決につながる可能性を強調しました。特にドバイのように都市の成長スピードに道路インフラの整備が追いつかず、慢性的な渋滞が発生しやすい地域においては有効な選択肢になり得ると説いています。
静音性能はヘリコプターの約100分の1
Uberのビジョンを実現するためのパートナーが、eVTOL開発のリーディングカンパニーであるJoby Aviationです。Uberは2015年頃に空飛ぶタクシーを実現することを目標に掲げて、「Uber Elevate」という社内プロジェクト部門を立ち上げています。航空モビリティを研究してきた同部門を、2021年にJobyが買収・統合したことでで、両社の協力関係がより強固なものになりました。
以前はUberのメンバーとしてUber Elevateのプロジェクトを率い、現在はJoby Aviationの最高製品責任者を務めるエリック・アリソン氏がデモンストレーション飛行をするJoby S1の機体について解説しました。
今回披露された機体は、6つの可動式チルトプロペラを備えた電動航空機です。
座席構成はパイロット1名のほか、乗客4名が移動できる計5名乗り。後部には手荷物スペースも確保されています。最高速度は時速320kmで走行できるパフォーマンスを備えています。また、航続距離は1回の充電で160km(=100マイル)を目安としています。運用時の排出ガスはゼロ。アリソン氏は「カーボンフットプリントはヘリコプターよりも90%低い」ことを強調しています。
さらに特筆すべきはその「静音性」でした。エリック氏は「空飛ぶタクシーが公共交通として、都市に生活する人々に受け入れられるためには“良き隣人”である必要があります」と語り、“静かに飛行できるモビリティ”を開発することに腐心したことを振り返りました。
JobyとNASAが共同で実施したテストの結果、都市環境における騒音フットプリントが従来のヘリコプターの約100分の1であることが証明されたといいます。
同社がなぜ今、完成度の高いeVTOLを開発できたのでしょうか。アリソン氏は記者会見の後、日本人記者による囲み取材の中で、その理由が「リチウムイオン電池のエネルギー密度向上や高性能な永久磁石モーター、そして複雑な制御を可能にする演算能力の向上を合わせて達成できたこと」だと述べています。
さらにJobyの強みは、ソフトウェアからアクチュエーターに至るまで、自社で設計・製造する「垂直統合モデル」を組み合えているところにあります。この製造工程においては、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車との連携がとても重要な役割を果たしています。
「トヨタはJoby Aviationの筆頭株主であり、戦略的パートナーです」とエリック氏は語ります、アメリカのカリフォルニアにあるJobyの生産現場では、トヨタの従業員がJobyの工場でともに働きながら、高品質かつ大規模な生産体制の構築を支援しています。
トヨタはJobyに資金を援助するだけでなく、自動車産業で培ってきた独自の量産ノウハウを航空機の製造現場に直接注入してきました。両社の協力体制が確立されたことで、Jobyは高度な安全性を維持しながら、将来の大量需要に応えるためのスケーラブルな生産能力を獲得しようとしています。
Uberアプリに統合される空の旅
ドバイで年内のローンチを目指す、Uber Air powered by Jobyの空飛ぶタクシーによるサービスはどのように運営されるのでしょうか。ユーザー体験の詳細について、Uberのカンサル氏が現状で見えている方向性を説明しました。
Uberは現在ドバイでも、アメリカと同様にUberアプリによるライドシェアベースの配車サービスを提供しています。空飛ぶタクシーのサービスが提供される頃には、Uberアプリに「Uber Air powered by Joby」という新しい選択肢が加わります。
カンサル氏はドバイの高級リゾート観光地であるドバイ・マリーナから、ドバイ国際空港(DXB)へ向かう具体例を挙げ、車では1時間以上かかることもあるこのルートが、空路ならわずか「11分」に短縮される利便性を強調しました。
サービスの利用形態としては、最初にユーザーは出発地から最寄りのバーティポートまでUberの自動車で移動します。バーティポートとは、eVTOL(電動垂直離着陸機)専用の発着拠点で、サービスの提供開始当初は離着陸場運営会社のスカイポートとの提携によりドバイ・マリーナ、観光地のパーム・ジュメイラとダウンタウン、およびドバイ国際空港の4ヵ所に拠点が設けられる予定です
バーティポート同士をつなぐ空中セグメントはJobyの機体で飛び、ユーザーの目的地との陸路移動はUberの配車サービスを利用します。カンサル氏は「1つの旅程としてUberアプリ内で完結する、継ぎ目のないシームレスな移動体験を目指しています。料金形態については後日詳細を発表する予定ですが、プレミアムクラスの配車サービスである“Uber Black”の利用に近い感覚になることを想定している」と語っています。
Jobyはドバイ道路交通局(RTA)と6年間の独占提供契約を締結しています。当面は年内に、ドバイでの旅客飛行を無事に始めることが目標となりますが、同社のアリソン氏は将来的な長距離飛行への道筋として、液体水素燃料電池を用いた試験で約900km(560マイル)の飛行試験にも成功したことにも触れました。
今回の取材を通じて、筆者は空飛ぶタクシーがすでに“未来の乗り物”ではいことを実感しました。それは特にJoby S1がフライトデモにより、滑空中はとても静かに、スムーズに飛べるモビリティであることを目の当たりにしたからだと思います。クルマによる交通渋滞を回避して、目的地まで早く安全に移動できる手段として、空飛ぶタクシーが都市の空間に根付くことができれば、私たちの生活は大きな変化を迎えることになると思います。
Jobyは現在、アメリカでの商業運航についてはもFAA(米国連邦航空局)の認証プロセスを進めています。試験飛行は、すでに数万マイルにおよぶ実績があるとされています。
さらに、Jobyは2025年8月にアメリカで都市型ヘリコプター旅客サービスを展開するBladeの旅客事業を買収しました。この買収は、将来的にUberのアプリ内でヘリコプターサービスを提供することを視野に入れたものです。
Uberは今後もJobyと連携して、この取り組みを発展させる方針を示しています。対象市場はドバイに加え、アメリカのニューヨークおよびロサンゼルス、さらに英国や日本なども想定されているようです。電動エアタクシーサービスを各国に展開するための布石として、段階的に拡大していく計画を伝えています。

筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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